円相場は数カ月内に1ドル=100円に近づく可能性も-内海元財務官

元財務官の内海孚・日本格付研究 所社長はブルームバーグ・ニュースのインタビューで、円の対ドル相 場が円高傾向で推移していることについて、「円が特段強くなる要因は あまりない」とした上で、数カ月内に反転して1ドル=100円に近づ く可能性もある、との見方を示した。インタビューは先月28日行った。

藤井裕久財務相は24日、米ピッツバーグで記者団に対し、安易な 為替介入に反対する姿勢をあらためて示した。こうした発言を受けて 28日の東京市場で一時、同88円台前半まで円高が進行。29日の会見 では「異常に動いたら国益のためにしかるべき措置を取ることもあり 得る」と述べ、一転して為替介入も辞さない構えを示した。

内海氏は「基本的には安定が大事だということが発言のベースに なっている。発言の内容も状況を見ながら柔軟な構えになっている。 はっきりしているのは、一定の水準を守るために膨大な介入を行うよ うなスタンスは取らないということだろう」と語った。ただ、「国際的 なルールとしても乱高下には対応する。安定的な為替相場を維持して いくという点については基本認識としてあると思う」と述べた。

為替相場が円高傾向で推移している背景については「大きな資本 の流れからすると、昨年の終わりから今年初めまでドル高が続いた。 ドルが安全資産として資金の逃避先になったわけではなく、米国で激 しい金詰りが起こり、猛烈な勢いで投資が回収されたためだが、今年 初めくらいからその勢いがなくなってきた」と指摘した。

税制改正というワイルドカード

内海氏がかねて注目していたもう1つの動きが、今年4月から日 本企業が海外留保利益を日本に還流する際の課税を優遇する税制改正 が行われたこと。「この影響がどの程度出るか懸念したが、比較的大し たことがなかった。しかし9月中間期末をにらんで、そうした資金が 相当猛烈に動いた。これがワイルドカードになる形で円の独歩高にか なり影響したと思う」と指摘した。

そういった大きな資本の流れとは別に、もう少し細かい動きとし て、内海氏は「ドルの短期金利が円の短期金利を下回るという事態が 発生し、ドルをベースにしたキャリートレードという今まで想定もし なかったことが起こっている。このため、ドルは円に対してだけでな く、ユーロその他に対しても安くなっている」という。

今後の動向については、①日本経済が米国、欧州に比べて良いわ けではない②金利差があると言っても、ドルから円にシフトするほど 大きいわけではない③日本の経常収支、貿易収支は大きく減っている ④投機筋の円買いがかなり積み上がっている-と指摘。「そういう状況 からみて、円が特段強くなる材料はあまりない」ことから、「円高傾向 がどんどん進むとは思わない」との見方を示した。

キャリートレードの巻き戻しに警戒

ドル自体についても「今はドルを売って、新興国の通貨を含めて キャリートレードが行われていると言われるが、新興国通貨のリスク は取引市場や経済も含めて、指摘されているよりかなり大きいと思う。 何かのきっかけで巻き戻しが起こったときの急激なドル高、つまりキ ャリートレードの巻き戻しには当然警戒が必要だ」という。

内海氏はその上で、円ドル相場の先行きについて「今のところ1 ドル=90円から95円、さらに場合によって同100円に近づくシナリ オが数カ月という期間ではあるのではないか」としている。東京外国 為替市場は30日午後6時40分現在、同89円43銭近辺で推移してい る。

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