8月鉱工業生産指数は前月比で6カ月連続上昇、約12年ぶり

8月の日本の鉱工業生産指数は、 鉄鋼、輸送機械などが寄与し、約12年ぶりに前月比で6カ月連続の上 昇を記録した。アジア向けを中心とした輸出の回復や経済刺激策の効 果により、企業の生産活動は持ち直しが続いている。

経済産業省が30日発表した8月の鉱工業指数速報(季節調整済み、 2005年=100)によると、生産指数は前月比1.8%上昇の84.1となっ た。6カ月連続上昇は1996年4月から97年3月までの12カ月間に次 ぐ長さ。前年同月比では18.7%低下と、11カ月連続のマイナス。指数 は08年12月(85.3)以来の水準だった。経産省は生産の基調につい て「持ち直しの動きで推移している」とし、 前月の判断を据え置いた。

世界経済は、各国による大規模な景気刺激策や超金融緩和策など により最悪期を脱した。国際通貨基金(IMF)は、世界経済が今年 中に成長を再開し、2010年は約3%成長すると予測している。これは 日本の輸出や生産にとって追い風となる一方、足元では円高懸念がく すぶる中、政策効果が一巡した後の持続的な回復には不透明感が残る。

農林中金総合研究所の南武志主任研究員は「生産の持ち直し傾向 が続いていることが確認できた」とする一方、「内容的には内外の政 策効果によって何とか持ち直している面が強く、自律的な民間需要の 動きは依然として弱い」との認識を示した。

ブルームバーグ・ニュースのエコノミスト調査では、生産指数の 予想中央値は前月比1.8%上昇、前年同月比は18.8%低下だった。出 荷指数は前月比1.0%上昇し、在庫指数は同横ばいだった。

予測指数も上昇

同省が同時に公表した製造工業生産予測指数によると、9月は前 月比1.1%上昇、10月は同2.2%上昇となった。同省調査統計部の志 村勝也経済解析室長は記者説明で、9月の予測指数がそのまま実現す れば7-9月期の生産は前期比7.2%上昇になるとの試算を示した。

志村氏は「予測指数を見る限り、メーカーは生産上昇をみている」 とし、企業からのコメントも、特にネガティブなものは出ていないと 語った。生産指数は今年2月を底に3月以降上昇に転じている。4- 6月期では前期比8.3%上昇と、1953年4-6月期に記録した過去最 高の8.9%上昇に次ぐ2番目の上昇率となった。

ただ、生産の水準自体は依然として低い。三井住友アセットマネ ジメントの宅森昭吉チーフエコノミストは生産指数について、製造工 業予測指数で延長すると09年10月分は86.9という水準まで戻るが、 これは01年11月分の87.0とほぼ同じレベルに過ぎないと指摘。その 上で、「方向性は着実な改善傾向だが、足元ではまだ生産水準は依然低 レベルにあり、水面下の回復が続く見通しだ」としている。

統計発表後の東京外国為替市場の円の対ドル相場は午前11時5 分現在、1ドル=89円77銭。発表直前は同90円12銭近辺で推移し ていた。東京株式市場の日経平均株価の午前終値は前日比6円58銭高 の1万0106円78銭。債券相場では東京先物市場の中心限月12月物が 同3銭安の139円34銭。

16業種中13業種で上昇

8月の生産で上昇した業種は16業種中13業種。上昇に最も寄与 した業種は鉄鋼で、国内外向け自動車用の鉄鋼製品の生産が増加した。 海外向けでは、中国などアジア向けが中心だった。また輸送機械では、 国内の小型乗用車・軽自動車の生産が伸びたほか、普通トラックは中 近東やアジア向けなどで増加した。

日本政策投資銀行調査部の鈴木英介調査役は、生産の先行きにつ いて「輸出の行方と国内需要がポイントとなる」と指摘。輸出は「米 国経済が7-9月期以降プラス成長に転じるとみられており、底入れ しつつあることが明るい材料だ」とする一方、国内需要は「民主党の 家計重視の施策が個人消費の持ち直しに寄与する可能性も見込まれる が、09年度内に限れば、公共工事の一部執行停止等、マイナスの影響 の方が大きい可能性がある」としている。

8月の貿易統計確報を基に、内閣府が独自に試算した輸出数量(季 節調整済み)は前月比6.1%上昇した。内訳は対米が同4.6%上昇、対 欧州が同0.3%低下、対アジアが同10.2%上昇となった。輸出数量の 動向は、生産と関連が深いとみられている。

ただ、国内企業がここにきて海外生産を増やしていることが、輸 出鈍化につながるとの見方もある。トヨタ自動車の8月の海外生産は、 13カ月ぶりに前年を上回った。輸出がほぼ全地域で減少するなど国内 生産が前年を割り込む一方、北米や中国での生産が増えた。

--取材協力:小松哲也 Editor:Masaru Aoki,Hitoshi Ozawa

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