クルーグマン教授:「世界の終わり先送り」、地図なき回復

ノーベル経済学賞受賞者のポー ル・クルーグマン米プリンストン大学教授は21日、世界経済は恐ら く底を打ったものの、回復は「緩慢で痛みを伴うだろう」との見解を 示した。

同教授はヘルシンキでのセミナーで発言し、「世界の終わりはど うやら先送りされたようだ」と語った。世界経済はもはや、「深い淵 の底へと落ちつつあるようには見えないが、まだ難しい局面にある」 との認識を示した。見通しは「非常に不透明だ」とした上で、W 字型の回復がU字型になるかもしれないと述べた。

ドイツとフランス、日本は2009年4-6月(第2四半期)にリ セッション(景気後退)を脱した。クルーグマン教授は米国の景気後 退も恐らく7月後半か8月に終わったとの見方を示した。

同教授は、「真に異常な事態は、世界貿易の崩壊だ」とし、輸出 主導の景気回復の可能性に疑問を呈した。「問題は、これが世界的な 金融危機だということだ」として、「輸出先となる他の惑星を見つけ ない限り、輸出主導の回復はない」と指摘した。

同教授はまた、中国経済は世界の成長エンジンとなるだけの規模 はないとの見方も示した。「迅速な回復が難しい理由の1つはアジア が抱える巨額の国際収支黒字だ」とし、「内需を本格的に拡大するこ とができれば、有用だろう」と話した。

赤字と出口

各国の赤字を拡大させた財政出動は短期的には「世界を救った」 ものの、「多くの人々にとって事態は今後、悪化するだろう」として、 「政府は危機対応で役割を演じることができるが、財政赤字の水準は 懸念材料となる程度に高い」と指摘した。

一方で、景気対策を引き揚げるには回復は依然としてあまりに脆 弱(ぜいじゃく)だとの見方を示し、景気刺激からの「出口戦略は、 生産ギャップが狭まりつつあることがはっきり示されるまで待つべ きだ。刺激を引き揚げ始めるべき時では断じてない」と述べた。各国 政府が緊縮政策を性急に導入すれば景気は必要以上の打撃を受ける だろうと警告した。

「財政赤字が膨らんでいることは明らかだが、急激な支出減で対 応すれば人的、かつ経済的な負担は直ちに高まるだろう。IMFの政 策を自らに押し付けることは望ましくない。できれば避けたい」とし て、「赤字の規模を注視することは必要だが、パニックに陥ってはな らない」と戒めた。

米消費者は疲弊

同教授はまた、「世界経済の重要な推進力だった米国の消費者は 疲弊している」と指摘。米国の失業率は2011年初めまで上昇し続け ると予想した。

消費に代わって回復を主導するのは企業の設備投資だとした上で、 「しかし、では設備投資の原動力になるのは何か」と問い掛け、この リセッションから世界を引き上げるような発見があればよいと語っ た。気候変動対策や二酸化炭素(CO2)排出削減に向けた措置で効 果的なものが導入されれば「投資する理由になる」と指摘した。

クルーグマン教授は、中国が外貨準備をドルから分散した場合は、 欧州と日本が最も打撃を受けるとの見方も示した。また。今回の危機 は国際準備通貨としてのドルとの競争においてユーロにマイナスの 影響を与えたとの見解を示した。

クルーグマン教授は、危機を脱するための世界的取り組みが「非 常に長期にわたって延々と続く」ことを懸念しているとし、その場合 「借入金の調達に障害が生じ、社会・政治問題が発生する」と懸念を 示した。「これが延々と続き、政治的・社会的安定に対して深刻な影 響を及ぼすことが懸念される」と語った。

巨額支出プログラム

歴史は回復の道筋を示さないとして、「地図はない。唯一の前例 は大恐慌だ。大恐慌は第二次世界大戦という巨額の政府支出プログラ ムによって終わったが、われわれはそれを繰り返したくはない」と語 った。

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