【コラム】「バンカー」であるとは、決して謝罪しないこと-カールソン

心のこもらない謝罪でも、ないよ りかはましだ。アドレナリン過剰の下品な今の世の中で、心のこもっ た謝罪などは望むべくもないからだ。

先週は謝罪が注目を集めた週だった。プロテニスのセリーナ・ウ ィリアムズ選手はフットフォールトを宣告した審判に暴言を吐いた。 同選手は謝罪したものの、ゲームへの情熱のあまりだったと言い訳し た。

ジョー・ウィルソン米下院議員(共和党、サウスカロライナ州) はオバマ大統領の演説中に議場で大統領をうそつき呼ばわりし、謝罪 したが、週の残りはラジオのトークショーなどで謝罪は本音でないと 説明を繰り返した。週末にワシントンで「アフリカにはライオンがい るが、アメリカにはライアー(うそつき)のアフリカ人がいる」と言 ってデモをした過激派の肩を持った。

とにかく、口先で謝罪するだけなら簡単なので、バンカーもその くらいはするのではないかと思いたくなる。しかし彼らは米国の金融 システムを荒廃させたことについて、心にもない謝罪の言葉を考える 必要すらないと思っているようだ。

オバマ大統領は今週、リーマン・ブラザーズ・ホールディングス 破たんから1年がたった節目の日にマンハッタンを訪れ、金融業界の 有力者たちに「実体経済の回復とシステムの安定、さらに繁栄を幅広 く分け合うことに向けて、責任を果たしてほしい」と呼び掛けたが、 これは呼び掛けというより「懇願」だった。

法律

聴衆の反応は冷たかった。居眠りする者もいたほか、拍手も一向 にわかなかった。経済を大不況に陥れた張本人である業界に14兆ド ル(約1280兆円)ほどを提供した大統領への拍手は、1回きりだっ た。「目先の利益ではなく長期的な実績が報いられるような報酬シス テムへの改革を、法律が決めるのを待つ必要はない」と大統領が語っ ても、誰も赤面しなかった。

もちろん、彼らが自発的に改革しないのは法律を待っているわけ ではない。法律なんか制定されないと知っているだけだ。申し訳なさ そうな雰囲気が、これほどない集団も珍しい。

バンカーらは、もたらした害に比べて自分たちは何も失っていな いに等しい。リーマンは倒れたが、他の金融機関では職を失っている のは最高幹部ではない。トップで職を失ったのは3万5000ドルのト イレを執務室に作ったメリルリンチのジョン・セイン氏くらいだ。

一時的には、ローワーマンハッタンのレストランに閑古鳥が鳴き、 黒塗りのリムジンが減り、物見遊山や宴会の幾つかは中止された。バ ンカーたちは議員らのお説教を聞くために、これ見よがしに航空会社 を使ってワシントンを訪れた。

あうんの呼吸

しかし、リムジンや豪華な食事は復活した。失敗した者が報われ ることに世論が抗議しても、ボーナスは一度も途絶えなかった。

社用機は再び飛び交い始め、公的資金250億ドルを受け取った米 銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者 (CEO)はジェット機「ガルフストリーム」2機を注文し、そのた めに格納庫も改装した。

有名人や議員と違って、バンカーは報復を恐れない。経済ののど 元に刃物を突き付けている業界を規制するのがどんなに難しいかは証 明済みだ。規制する側との癒着がこれほど著しい業界もない。議員や 当局者はあまりにも多くの時間を規制するべき相手といっしょに過ご すため、彼らの見方に染まってしまう。業界は献金もしてくれるし将 来の職も用意してくれる。言葉も要らないほどのあうんの呼吸だ。

どんなに弱々しくても、この業界への規制を再導入しようとする 大統領の取り組みが、議会であまり盛り上がらないのも無理はない。 救済された銀行に雇われたロビイストたちがしっかり邪魔をしている。

ジャッド・グレッグ米上院議員(共和党、ニューハンプシャー 州)は「昨日の失敗」を正すために「根本的にリスクテークを阻害す る規制を導入する」ことのリスクを警告した。

1年後の真実

心配は無用だ。バンカーらは既に、暴発したものに代わる新たな エキゾチックな金融商品を発明しつつある。報酬は依然としてリスク の大きさに基づいて決まり、ボーナスはそのリスクの結果がどう転ぶ かが判明しないうちに支払われる。つまり、コインの表が出ればゴー ルドマン・サックス・グループの勝ち。裏が出てもゴールドマンは傷 つかず、納税者が損をする。クレジット・デフォルト・スワップ(C DS)の設計者が手にしたボーナスを、1銭たりとも取り戻した者は いない。

リーマンショックから1年、恐ろしい真実が分かった。何も変わ っていないし、今後も変わらない。銀行は大き過ぎてつぶせないばか りでなく、大き過ぎて規制できない。今ではかつてよりさらに大きく なり過ぎて、心のこもらない謝罪すらできない。 (マーガレット・カールソン)

(マーガレット・カールソン氏は、ブルームバーグ・ニュース のコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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