世界的株高は飾り物、金融システムはゾンビ-仏識者のアタリ氏講演

フランスの思想家で、経済学者 のジャック・アタリ氏は16日夕、早稲田大学や在日フランス大使館 などが主催した新刊記念講演会で、最近の世界的な株高傾向を「単な る飾り物」と指摘、危機はいまだ終わっていないとの認識を示した。

アタリ氏は、現在の米国株相場について「来年以降、年率4%の 経済成長が可能ということを織り込んだ水準」と分析した上で、企業 収益がこの水準には追いつかない現状を見る限り、「現実はより悲観 的で、いずれ市場は不安定化する」と警告している。

同氏は、ミッテラン仏大統領の特別補佐官を務めた後、1991年 にはヨーロッパ復興開発銀行の初代総裁に就任。現在は、貧困削減を 目的にマイクロファイナンスの発展に尽力する国際協力団体のプラネ ット・ファイナンス理事長の職にある。2006年発刊の自著「21世紀 の歴史」の中で、米国発の世界金融危機を予見。今年8月に日本で発 行された「金融危機後の世界」(作品社)では、順調に見えた世界経 済がほんの数週間で深刻な危機に陥った背景を緻密に分析した。

金融システムの実態についてアタリ氏は、自己資本が事実上は2 兆ドル(約180兆円)しかなかったにもかかわらず、同システムの 中に95兆ドル(8500兆円)もの資金を投じていたことになると解 説、「実は何もないゾンビのようなもの」と話した。

アタリ氏は質疑応答の中で、金融セクターに務める従業員は今回 の危機を経ても自分達の利益に固執し、利他や弱者への母性を発揮す る思想は持ちえない、と強調。「銀行職はつまらない職業だと皆が思 うような社会をつくっていかねばならない」と語った。

また、金融機関への規制強化論議の過程で世界統一政府、世界 統一通貨の議論が盛り上がるとの展望を披露。「ドルとユーロとアジ アの一部の通貨をバスケットにした共通の準備通貨をつくっていくの が、極めて長期的な目標になろう」と述べている。ユーロについては、 「15年後にはなくなっているかもしれない」と発言。過去に国家を 持たない通貨が長続きしなかった点や、各国が独自に財政政策を決め ている以上、財政状況や労働市場の流動性、利率などがそろわず、無 理があるという。

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