日銀:景気は持ち直しに転じつつある-情勢判断を上方修正

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【記者:日高正裕】

9月17日(ブルームバーグ):日本銀行は17日午後、同日開いた 金融政策決定会合で、政策金利を0.1%前後に据え置くことを全員一 致で決定したと発表した。情勢判断については「景気は持ち直しに転 じつつある」として、前月の「下げ止まっている」から上方修正した。

日銀は輸出、生産が「増加している」として判断を引き上げたほ か、金融環境も「厳しさを残しつつも、改善の動きが広がっている」 に上方修正した。設備投資も「減少を続けている」として、前月の「大 幅に」は削除して判断を若干前進させた。個人消費については「全体 としては弱めの動きとなっている」との判断を据え置いた。

4-6月の実質GDP(国内総生産)は前期比年率2.3%増と5 期ぶりにプラスに転じた。一方、設備投資の先行指標である機械受注 は7月に前月比で2カ月ぶりに減少し、受注額は過去最低を更新した。 白川方明総裁は先月31日、大阪市内で講演し、「現在、わが国の景気 は回復の兆しを見せている」とする一方で、「先行きの見通しをめぐる 不確実性が大きいことも十分に認識している」と述べた。

須田美矢子審議委員は9日、長崎市で講演し、コマーシャルペー パー(CP)と社債の買い入れ、企業金融支援特別オペなど、12月末 を期限とする企業金融支援策について「異例の措置の役割は後退しつ つある」と述べ、情勢の改善が続けば、これらの措置の終了または見 直しを行う考えを示した。

新政権の円高対策

大和証券SMBCの岩下真理チーフマーケットエコノミストは 「日銀は当面、10月30日公表の経済・物価情勢の展望(展望リポー ト)の作成に注力し、企業金融支援の年末までの時限措置については 11月会合までに判断を下すことになるだろう」と予想。「須田委員は 講演で解除に前向きな姿勢を示したが、今後の執行部の発言が慎重で あれば、期間延長の可能性はまだ高い」とみる。

16日に鳩山由紀夫氏が首相に就任し、民主党政権が誕生した。み ずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「民主党は日銀 の政策運営への政治介入を避けるだろう。政治的な損得勘定で言えば、 百害あって一利なしだ」と指摘する。大和証券SMBCの岩下氏も「民 主党政権への金融政策に与える影響は今のところは中立」とみる。

金融市場で注目された財務相には、同党の藤井裕久最高顧問が就 任した。新財務相の当面の課題の1つは進行する円高への対応だ。同 氏は3日のブルームバーグ・ニュースのインタビューで「為替介入は あまり乱用すべきではない」と述べ、介入に消極的な姿勢を示した。

長引くデフレへの対応も注目点

アールビーエス証券の西岡純子チーフエコノミストは「仮に介入 に対する期待を打ち消しながら、一段とドル安が続いた場合、物価下 落圧力の高まりを背景に、日銀に対して一段の緩和政策を強いる可能 性が高まる」と指摘する。モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕チー フエコノミストも「為替動向は追加的なアクション発動のカタリスト (触媒)となり得る」とみる。

もう1つの注目点が、長引くデフレに対して、新政権がどのよう な姿勢を示すか。7月の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI) は前年同月比2.2%低下と過去最大の下落率を更新した。昨年夏場ま での原油価格急騰の反動は薄まるため、下落率は徐々に縮小に向かう 見込みだが、日銀が10月末の展望リポートで示す2011年度のコアC PI見通しは3年連続でマイナスとなる公算が大きい。

JPモルガン証券の菅野雅明調査部長は「民主党の政策には物価 を下げて家計の購買力を高める政策が組み込まれており、デフレ傾向 が弱まる可能性は少ない。最近の円高もデフレ悪化を加速させている」 と指摘。「デフレと名目成長率ゼロが続く一方で、社会保障費が増加傾 向を続けると、国家財政はいずれ破たんしかねない」という。

10月中にも日銀人事

大和証券SMBCの岩下氏は「年内の予算審議の過程、秋深まる ころに景気の先行きに不安が強まった場合は、追加対策の可能性もあ る。日銀への協力要請が強まるリスクは否定できないだろう」という。 HSBC証券の白石誠司チーフエコノミストは「相応規模の赤字国債 発行によるマニフェスト実行となった場合は、日銀に長期国債買い切 りオペ増額を求める可能性はあるだろう」としている。

日銀審議委員の欠員1名の補充と水野温氏審議委員(任期12月2 日)の後任選出も注目点の1つ。BNPパリバ証券の河野龍太郎チー フエコノミストは「ねじれ国会の下、審議委員の1名空席が続いてい たが、10月中にも決定されるとみられる。メンバー構成から考えると、 今回は経済学者から選ばれる」とみている。

日銀は上限金利の補完貸付金利は0.3%に、下限金利の補完当座 預金金利は0.1%に維持した。長期国債の買入額も月1.8兆円に据え 置いた。いずれも全員一致の決定。議事要旨は10月19日に公表され る。白川方明総裁は午後3時半に記者会見を行う。今後の金融政策決 定会合等の予定は以下の通り。

会合開催       総裁会見  金融経済月報  議事要旨
10月13、14日   10月14日     10月15日     11月5日
10月30日       10月30日        -        11月26日
11月19、20日   11月20日     11月24日     12月24日
12月17、18日   12月18日     12月21日     1月29日
1月25、26日   1月26日     1月27日     2月23日
2月17、18日   2月18日     2月19日     3月23日
3月16、17日   3月17日     3月18日     4月12日
4月6、7日   4月7日     4月8日     5月6日
4月27日       4月27日        -        5月26日
5月20、21日   5月21日     5月24日     6月18日
6月14、15日   6月15日     6月16日       未定

総裁会見は午後3時半。金融経済月報は午後2時、議事要旨は午 前8時50分。経済・物価情勢の展望(展望リポート)は10月30日と 4月27日の午後3時に公表される。

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