汚名返上したCDS-リーマン破たんから1年、投資家の信頼感は回復

米投資銀行リーマン・ブラザーズ・ ホールディングスの経営破たんから1年。クレジット・デフォルト・ スワップ(CDS)は災難をもたらす取引との汚名を返上し、むしろ 市場の信用回復に一役買っている。

クレジット・デリバティブズ・リサーチが集計するCDS指数に よると、米ゴールドマン・サックス・グループやバンク・オブ・アメリ カ(BOA)を含む14の大手デリバティブ(金融派生商品)ディーラ ーの債務を保証するコストは過去半年で66%低下。米国が1945年以 来最も緩慢な景気回復となるなか、企業のデフォルト(債務不履行) に備えて信用を取引するCDS市場では、投資家信頼感が2008年6月 以来の高さとなっている。

CDS取引は、大手ディーラーだったリーマンが破たんし、保険 会社アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)も政府救 済を受けたことで信用が逼迫(ひっぱく)し、1930年代以来最悪の金 融危機を悪化させる要因となった。ウォール街は現在、ガイトナー米 財務長官がニューヨーク連銀総裁だった2005年に着手し始めた市場 の透明性を向上させる改革に自ら取り組んでいる。

米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスのシニア アナリスト、アレクサンダー・ヤボルスキー氏は「正常に機能するC DS市場はより効率的な信用拡大に寄与する」と話し、業界は崩壊し ないとの自信を投資家や金融機関に与えるからだと説明。リーマン破 たんの影響は「けた外れに大きかったが、CDS市場は良好に機能し ていた」と述べた。

破たん懸念は後退

市場では大手金融機関が再び破たんするとの懸念が後退している。 14の大手金融機関のCDSスプレッドを示すクレジット・デリバティ ブズ・リサーチのカウンターパーティーリスク指数は、3月9日に過 去最高の305.6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)を付けた が、直近は104bpに低下。1000万ドルの債務を保証する年間コスト が平均10万4000ドルに下がったわけだ。

金融システムが崩壊寸前となったことを受け、マキシン・ウォー ターズ下院議員(民主、カリフォルニア州)は7月、CDS取引の禁 止を試みる法案を提出。こうした動きに対し、金融機関は自力で市場 を立て直す姿勢を打ち出した。重複していた取引の解消で、CDSの 想定元本は先週時点で32兆ドルとほぼ半減したと、米決済機関デポジ トリー・トラスト・アンド・クリアリング(DTCC)のデータは示 した。また、相対取引が主流だったCDS市場では今年、初めて清算 機関を通じて取引が行われるようになり、支払い不能リスクが軽減さ れた。3月以降に清算機関を通した取引は約2兆5000億ドルに及んで いる。

ドイツ銀行でカウンターパーティー・ポートフォリオ管理の世界 責任者を務めるアサナシオス・ディプラス氏はこうした動きについて、 「まるで血圧を下げる薬のようだ。血圧を下げたので、体が機能する ようになった」と指摘している。

また、米金融当局者も、リーマンの破たんは結局、デリバティブ 市場にごくわずかな影響しか及ぼさなかったとの認識を示している。 リーマン関連のCDSを含めたデリバティブ取引の解消は「技術的に 複雑ではあったが、システミックな問題ではなかった」とニューヨー ク連銀で同市場の監督責任者を務めるテオ・リュブケ氏は話している。

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