米はドルキャリー歓迎、鳩山内閣が危機対策も-クレディS

米国は低金利のドルを売って高成長 の新興国などに投資する「ドル・キャリー」取引を歓迎している-。ク レディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは、その理由を米投 資家の対外投資による高い収益力が対外債務の増加とドル安のペースを 和らげ、ドルの信認を支えているためと指摘する。仮にドル急落となっ た場合でも、鳩山由紀夫内閣の下で日本銀行が米国債を買い入れるなど の政策協調が有力な選択肢になりドルを支えるという。

白川氏は16日のインタビューで、広範な通貨に対する「ドル安は世 界経済と金融資本市場の回復の裏返し。むしろ歓迎すべきだ」と語った 。米国が世界最大の対外債務を抱えながらもドル基軸体制が続いている 「カギは米所得収支にある」と分析。経常収支のうち貿易収支の赤字が 定着する中、配当金や利子の流れを映す所得収支の黒字が対外純債務 (債権-債務)の加速度的な増加を防いでいると話した。

主要6通貨に対するドルの実効相場(インターコンチネンタル取引 所、ICE)は16日に一時76.406に下落。米証券リーマン・ブラザー ズ・ホールディングス破たん後の昨年9月25日以来となる安値をつけた 。対円では11、14日に約9カ月ぶりに90円21銭まで下落。ユーロに対 しても15日に1ユーロ=1.4686ドルと2008年12月以来のユーロ高・ ドル安水準まで売られる場面があった。

白川氏は、対外純債務が累積すると、対外資産から得る収益を対外 債務への支払いが上回り、所得収支の赤字が定着してしまうのが一般的 だと指摘。貿易収支などと合わせた経常収支も赤字に陥り、通貨安や市 場金利の上昇を通じて債務の累積が加速する恐れもあるという。

驚異的な収益力

しかし、米国は1986年に対外純債務国となって以降、純債務残高が 長期的な増加傾向にあるにもかかわらず、所得収支の黒字を維持してい る。白川氏は、米投資家は「対外債務への支払いを上回る収益を、相対 的に少ない対外資産で稼ぎ出している」と指摘。純債務の加速度的な増 加を防ぐ「収益力は驚異的だ」と語った。

同社の15日付リポートでは、米国が対外資産から得る収益率は08 年に3.8%、対外債務への支払いは2.7%と推計。雇用者報酬を除いた 米所得収支の黒字は約1260億ドル、対GDP(米国内総生産)比は80 年代前半以来となる0.8%に高まったと指摘した。08年の米財・サービ ス収支の赤字は約6959億ドルだった。

白川氏は、財政・経常赤字を抱える米国がドルの信認を維持するた めには米投資家の対外投資を促し、対外債務への支払いを抑える政策が 極めて重要だと指摘。オバマ政権でも、事情は変らないと見る。

規制に反対、金融緩和

具体的な財政・金融政策としては、①米投資家のリスク志向を抑え る規制・監督強化策には消極的な姿勢で臨む、②対外債務への支払い増 につながる市場金利の上昇を避けるため、財政再建を優先し、米連邦準 備制度理事会(FRB)による金融緩和を長期化すると予想。海外リス ク資産への投資促進を重視するため、緩やかなドル安を伴う「ドル・キ ャリー取引は歓迎するだろう」とも述べた。

ただ、無秩序なドル安と米国債利回りの急上昇(価格は急落)の 「同時進行は避ける必要がある」とも強調。対外債務への支払いを一気 に増やしかねないためとした。白川氏の試算によると、米国が08年に 対外債務に支払った配当・利子率(2.7%)が対外資産から得た収益率 と同じ3.8%に高まると、所得収支は約1330億ドルの赤字に転落する。

こうした危機が発生した場合、米国は日欧に加え、外貨準備の多い アジア・中東諸国などを巻き込む形で「ドル安阻止の政策協調を求め る」と、白川氏は予想する。鳩山内閣は防衛問題で米国に譲歩を迫る分、 政策協調では主導的な役割を果たす可能性があると指摘。為替介入時に 使う「外国為替特別会計を縮小すべきとの議論もある中、日銀が米国債 の直接買い入れに踏み切る公算がある」と語った。

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