「日銀サーベイ」円高が新たな脅威-株安との連鎖なら追加緩和検討も

【記者:日高正裕】

9月15日(ブルームバーグ):日本銀行が16、17の両日開く金融 政策決定会合は、ブルームバーグ・ニュースの調査で有力日銀ウオッ チャー16人全員が現状維持を予想した。巨額の需給ギャップを背景に 物価下落の長期化が見込まれる中、足元では円高が進行しており、日 本経済にとって新たな脅威になりつつある。円高が株安につながれば、 日銀の追加緩和に対する思惑が高まることも予想される。

4-6月期の実質GDP(国内総生産、2次速報値)は前期比年 率2.3%増と1次速報値(3.7%増)から下方修正された。需要と供給 の乖離(かいり)を示す需給ギャップは1次速報段階で40兆円程度に 達しており、日本経済は巨額の需要不足にあえいでいる。

7月の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)は前年同月 比2.2%低下と過去最大の下落率を更新した。昨年の原油価格急騰の 反動は徐々に薄まる見込みだが、大和証券SMBCの岩下真理チーフ マーケットエコノミストは「足元で値下げ競争が加速し始めている」 と指摘。10月末公表される経済・物価情勢の展望(展望リポート)で は「2009年度から3年連続マイナス予想が大勢となろう」とみる。

日銀の白川方明総裁は先月31日、大阪市で講演し、物価の「下落 幅は縮小していく」としながらも、「物価の下落圧力は長い期間にわた って残るとみている」と述べ、物価下落が長期化するとの見通しを示 した。その一方で、景気の悪化と物価の下落が連鎖する「デフレスパ イラルに陥るリスクが高まっていると判断していない」として、金融 政策運営については当面、様子見を続ける姿勢を示した。

株安続けば追加緩和を真剣に検討も

こうした中、日本経済にとって新たな脅威となりつつあるのが為 替相場の円高だ。週明け14日の東京市場で円の対ドル相場が1ドル= 90円台前半まで上昇。これを嫌気して、日経平均株価は前週末比242 円27銭(2.3%)の1万0202円06銭と大幅安となった。

野村証券の松沢中チーフストラテジストは「景気の水準が低く、 物価のマイナスが長期化する見通しであることに加え、景気指標の一 部でモメンタムが落ちてきていることや、円高が進んでいることから、 日銀の追加緩和観測が台頭しやすい」と指摘。「株価堅調が日銀の防護 壁になっているが、これも崩れてきた場合、追加緩和策が真剣に議論 されるだろう」とみる。

東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「日米欧の中央銀行 を比較した場合、バランスシート正常化は米国の困難度が群を抜いて 高く、通貨の信認という観点で中長期的にドル安は続きやすい」と指 摘する。民主党政権下の財務相候補である藤井裕久最高顧問は3日、 ブルームバーグ・ニュースのインタビューで「為替介入はあまり乱用 すべきではない」と述べ、介入に消極的な姿勢を示した。

日銀による米国債購入も選択肢に

クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは「最大の 焦点はドル安対応だ」と指摘。「FRBの利上げ期待が明確に視野に入 るまでドル安基調が続く」とした上で、民主党政権下で「特別会計改 革に絡んでドル買い介入が困難であれば、別の手段でのドル安対応、 例えば日銀による米国債直接購入の可能性も否定できない」という。

一方、須田美矢子審議委員は9日、長崎市で講演し、コマーシャ ルペーパー(CP)、社債の買い入れ、企業金融支援特別オペなど12 月末を期限とする企業金融支援策について「異例の措置の役割は後退 しつつある」と述べ、情勢の改善が続けば、これらの措置の終了また は見直しを行う考えを示した。

クレディ・スイス証券の白川氏は「緊急措置としての信用緩和に 関しては、FRBの動向を確認しながら早期に停止へ向かうだろう」 とみる。大和総研の田谷禎三特別理事も「日銀を含めて主要国の中央 銀行は、金融市場の落ち着きとともに、市場安定化のためにとってき た異例の措置をやめていくだろうし、事実そうした動きは既に始まっ ていると言っていいだろう」と語る。

民主党政権の影響

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「企業金 融支援策の解除問題では意見が割れてきているようだが、超低金利政 策からの出口が見えないという点は日銀内でコンセンサスだろう」と 指摘する。16日には特別国会が召集され、民主党政権が発足する。

三菱UFJ証券景気循環研究所の嶋中雄二所長は「民主党政権の 金融政策哲学は『家計の財産所得改善のために日銀が利上げして超低 金利を是正するべき』という急進的利上げ派(仙谷由人衆院議員ら) と、『財政赤字ファイナンスのために日銀の国債引き受けも辞さない』 というアコード派(大塚耕平参院議員)の2派に分かれているため、 全体としてどちらが優勢になってくるかを読むしかない」としている。

============================================================ ◎利下げ予想時期は次の通り(敬称略)

【2009年10-12月】モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕チーフエ コノミスト ============================================================ ◎利上げ予想時期は次の通り(敬称略)

【2010年10-12月】三菱UFJ証券景気循環研究所の嶋中雄二所長、 信州大学真壁昭夫教授

【2011年1-3月】第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト、 モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕チーフエコノミスト、大和総研 田谷禎三特別理事

【2011年4-6月】大和証券SMBCの岩下真理チーフマーケットエ コノミスト、JPモルガン証券の菅野雅明調査部長、クレディスイス 証券の白川浩道チーフエコノミスト、ゴールドマン・サックス証券の 山川哲史チーフエコノミスト

【2011年7-9月以降】みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコ ノミスト、東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト、BNPパリバ 証券の河野龍太郎チーフエコノミスト、HSBC証券の白石誠司チー フエコノミスト、野村証券の松沢中チーフストラテジスト、日興シテ ィグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト、バークレイズ・キャ ピタル証券の森田長太郎チーフストラテジスト ============================================================ ◎無担保コール翌日物金利の予想は以下の通り(敬称略50音順)

                     09   09   10   10   10   10   11   11
                    9末 12末 3末 6末 9末 12末 3末 6末
------------------------------------------------------------
調査機関             16   16   16   16   16   16   16   16
 中央値             0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25
 最高               0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.35 0.35 0.35
 最低               0.10 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.10 0.10
------------------------------------------------------------
大和SMBC証 岩下     0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.30
みずほ証 上野       0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
東短リサーチ 加藤   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
JPモルガン証 菅野      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25
第一生命経研 熊野   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25 0.25
BNPパリバ証 河野  0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
モルガンS証 佐藤      0.10 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.25 0.25
三菱UFJ景気研 嶋中  0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.35 0.35 0.35
HSBC証 白石     0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
クレディS証 白川   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25
大和総研 田谷       0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25 0.25
信州大 真壁         0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.30 0.30 0.30
野村証 松沢         0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
日興シティG証 村嶋     0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
バークレイズC証 森田   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
ゴールドマンS証 山川   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10

============================================================

アンケート回答期限は14日午前8時。「日銀サーベイ」金利予想、 経済・物価情勢、金融政策の展望コメントを15日朝に送信しています。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE