【経済コラム】バフェット氏魅せられるか、来日まで1年-Wペセック

日本が米著名投資家ウォーレン・ バフェット氏のテストを受けるのは約1年後だ。

バフェット氏率いる米保険・投資会社バークシャー・ハサウェイ 傘下のイスラエル工具メーカー、イスカルのアイタン・ウェルトハイ マー社長はそのころに「オマハの賢人」の日本訪問を目指している。 同社長はバフェット氏が米国外でチャンスを見いだすための「旅行代 理店」を自称している。日本企業に注目するバフェット氏のニュース こそ、アジア最大の経済大国が必要としているものだろう。

1個人を強調すべきではないだろうが、ここで話題になっている のは世界で最も有名な投資家で、しかもこれまで日本には食指が動か なかった人物ときている。バフェット氏のお墨付きは、外資を必要と する国には最高の宣伝になる。

しかし、そのお墨付きを得るにはものすごい努力が必要だ。首相 に就任する民主党の鳩山由紀夫代表はひどく不利な立場に立たされて いる。約半世紀続いた自民党政権が過去に安住していたためだ。意味 のある変化がない時期が続くほど、投資家が感銘を受ける可能性は減 っていく。

日本の最優先課題にはコーポレートガバナンス(企業統治)や税 制、ヘッジファンド関連法、英語能力の改善が含まれる。これらはい ずれも達成困難で、多大な政治的駆け引きを必要とする。それでも、 日本の新政権が少なくとも金融改革の青写真とスケジュール表を示す のは非常に重要なことだ。

低いリターン

バフェット氏は、株式リターン(投資収益率)の低さと株主を顧 みない企業文化を理由に、日本への投資を長期にわたって制限してき た。これは、日本がリセッション(景気後退)を脱却しても、投資家 が沸かない理由を象徴している。経済成長率が年2.3%だったとして も、企業経営が過去の伝統にしがみついているとの懸念があるのだ。

中国やインドといった低コスト国が台頭するなかで、日本は自国 の高い生産コストに十分対処していない。これによって、経済が伸び ているアジア地域のなかで、日本はますます非生産的な立場に置かれ ている。

割安株に投資するいわゆるバリュー株重視の投資家には、日本企 業の典型的な経営手法が主な問題だ。主要な懸念は買収への抵抗や合 併を阻止するポイズンピル(毒薬条項)の横行で、これではヨーゼフ・ シュンペーターが説いた創造的破壊に企業経営者がさらされない。

ささいなことが、日本株式会社の誤りを最も物語ってくれる。例 えば、数千もの企業が同じ日に株主総会を開催する事実。これでは株 主からするどい質問が飛んでこない。株主の権利が依然として周知さ れていない表れだ。

持ち合いで悪影響

株式持ち合いも外国人投資家をいらいらさせる。外部から自らを 守るために、お互いに助け合うとの考え方だが、世界的な危機でうま くいかなくなってしまった。企業の株価は下がり、バランスシート(貸 借対照表)は脆弱(ぜいじゃく)になった。

投資家から歓迎される項目には税環境の改善も挙げられるが、こ れは税率というよりも構造が問題。新興企業よりも大企業が恩恵を受 ける構造であるため、雇用を創出し、外国人投資家を興奮させる新企 業設立が阻害される。

また、ヘッジファンドの日本での事業展開を容易にすれば、東京 を世界の金融センターの一つにするとの目標達成が近づくだろう。教 育面の努力も倍増が必要だ。政治的に正しいかどうかは別として、世 界のビジネスで使われる言葉はやはり英語だ。

魅力的な日本企業

バフェット氏は、日本で魅力的な企業を探し当てている。バーク シャー傘下のイスカルは2008年9月、工具メーカーのタンガロイを買 収しており、ウェルトハイマー社長は今月10日、ブルームバーグテレ ビジョンのインタビューで、「1年以内に」バフェット氏のタンガロイ 訪問を実現させたいと話した。

来日は日本企業への投資チャンスを探ることになる。ウェルトハ イマー社長は自身の主な役割はバフェット氏に付き添って、同氏の海 外投資拡大や取引の手伝いをすることだとしている。

バフェット氏から「品質保証の」お墨付きを獲得するのはかなり 大変だろう。今週発足する民主党政権にその準備ができているかも不 透明だ。日本の投資環境の十分な改善につながるほどの行動が迅速に 起きないリスクはある。

次の首相となる鳩山氏には、米国型の資本主義から離れるという 圧力もかかっている。日本人は自由市場の利点を理解しつつも、規制 緩和が投資家の方を向き過ぎて、普通の家計のニーズからかけ離れた と懸念している。ここでは微妙なバランスを取ることが求められる。

日本の真の変化は民間セクターから生まれる必要があるとよく言 われるが、これまでの自民党政権下では、どこまでが公的セクターで どこからが民間なのか、分かりづらかった。このため、変化を促す圧 力は政府内から出てくる必要がある。

日本の政権交代はかつてないほど注目を集めている。鍵となるの はこの関心を維持させ、バフェット氏のような世界の名だたる投資家 に行動を起こさせることだ。日本にはやらねばならないことが山積し ており、無駄にする時間はない。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースの コラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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