「リーマンの月曜」の教訓生きず-大き過ぎてつぶせない組が今も横行

ガイトナー米財務長官は就任後 24時間たたないうちに、地域銀行の業界団体、インディペンデン ト・コミュニティー・バンカーズ・オブ・アメリカのカムデン・R・ ファイン会長を密談に招いた。

この誘いには「驚いて椅子から転げ落ちそうになった」とファイ ン氏(58)は振り返る。窓からホワイトハウスの見える米財務省の一室 で、同氏はガイトナー長官と差し向かいで金融危機について説明。シ ティグループやバンク・オブ・アメリカ(BOA)のような巨大銀行 はシステムへのリスクだと警告した。

「巨大銀行は分割して売却されるべきだ」と同氏が論じるのを、 ガイトナー長官はせっせとメモを取りながら聞いていたという。

米財務長官はしかし、同氏の提言を採用しなかった。ポール・ A・ボルカー元米連邦準備制度理事会(FRB)議長の助言も、ベア ー連邦預金保険公社(FDIC)総裁の主張も、何十人ものエコノミ ストや政治家の議論も、聞き入れられなかった。米銀の規模や活動を 制限するべきだとの彼らの声は、ホワイトハウスに届かなかった。

大手投資銀行リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの破たん から1年。ファイン氏の団体が「メガバンク」と呼ぶ巨人たちは依然、 危機前と同じように入り組んだ取引関係を持ち、外部者からは何も分 からない。オバマ政権が計画する規制改革は、巨大銀行に規模縮小や 組織の単純化を求めていない。

「大き過ぎてつぶせない」の刻印

「ザ・アセント・オブ・マネー」(2008年)の著者でハーバー ド大学の歴史学教授、ニーアル・ファーガソン氏は「リーマンの月曜 日は再び起こり得る」と話す。同氏はインタビューで、「システムは 本質的に変わっていない。リーマン後の生き残り組の胸に、『大きく てつぶせない』の文字がしっかりと刻印されただけだ」と語った。

1930年代以来最悪のリセッション(景気後退)も、世界最大規 模の経済の3.9%縮小も、全世界で1兆6000億ドルを越える銀行と 保険会社の損失も、オバマ大統領に構造改革を促さない。大統領はむ しろ、「封じ込め」の戦術を選んだ。

銀行への監視と規制強化に向けたオバマ大統領の案は巨大銀行の 規模縮小を含まない。税金で救済された銀行の規模はむしろ拡大して いる。BOAの総資産は6月時点で2兆2500億ドルと、前年同期に 比べ31%増え、全米の預金のほぼ12%に相当する規模となった。

「システムにとって重要な銀行」

オバマ大統領案は、BOAやシティなどを「システムにとって重 要な銀行」と位置付け、より大きな資本と流動性の準備を義務付ける。 監督するのはリーマン破たんの影響を理解できない同じ機関だ。同案 によれば、苦境に陥った銀行は場合によって解体はされるものの、銀 行と債権者と株主は税金で救済されてしまう。

事情に詳しい複数の関係者によれば、同案作成の立役者、ガイト ナー長官とサマーズ国家経済会議(NEC)委員長は、銀行の規模を 法律で制限したり、預金金融機関によるトレーディング活動を禁止し たりするのは現実的ではないという意見だ。銀行と投資商品の間の線 引きはあまりにもあいまいだし、銀行に部門や資産の分離を強制すれ ば大混乱になりかねないとの考えだという。

「2008年9月15日月曜日の教訓」は生かされないのだろうか。 ファイン氏らによれば、その教訓とは、「どこかに上限を設けること が必要」というものだった。

(リーマンの特集英文記事は、ここをクリックしてください)

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