【書評】この「帝王」ならベアー・スターンズを救えたかもしれない

もう1人の「ドクター・ドゥーム (悲観論の帝王)」、ヘンリー・カウフマン氏の意見に耳を傾けてい れば、ベアー・スターンズはまだ存在したかもしれないし、ベン・バ ーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長もドルをばらまくヘリ コプターを格納庫に収めておくことができたかもしれない。

「ドクター・ドゥーム」のニックネームは、ニューヨーク大学の ヌリエル・ルービニ教授の同義語になるずっと前はカウフマン氏を指 すものだった。元ソロモン・ブラザーズのマネジングディレクター兼 エコノミストだったカウフマン氏は、債務の膨張や規制緩和、過剰な リスクテーク、シティグループのような金融コングロマリットの台頭 に伴う危険について長年にわたり警鐘を鳴らしてきたためだ。

そんなカウフマン氏が新著「ザ・ロード・トゥー・ファイナンシ ャル・リフォーメーション:ウォーニングズ・コンセクエンシズ・リ フォームズ(The Road to Financial Reformation: Warnings, Consequences,Reforms)」で過去の予測を要約し、自由市場に及ぶ重 大な影響を議論するとともに、米国のひび割れた規制の修復に向けた 青写真を示した。米政府に支援された金融機関のバンカーが再び数千 万ドルの報酬を手にしている現状では、耳の痛い部分もある。

カウフマン氏は「最近のお粗末な出来事で、金融界の人間が国民 の厳しい監視の目から逃れることはできない事実が明らかになった」 と指摘する。確かに凶事の預言者の声に耳を貸したがる人などいない し、特に昔の発言が「預言的だった」という人間から「だから言った じゃないか」とは誰も言われたくはないだろう。

ソロモンとリーマン

いら立ちを覚える読者もいるはずだ。そもそも、カウフマン氏が 今回の危機の2つの要因だと指摘する証券化と過度のリスクテークを ソロモンが採用していたころ、同氏はその社員だったのだ。ソロモン のルイス・ラニエリ氏がパイオニアとして住宅ローン債権の証券化を 進め、後にロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM) を創業したジョン・メリウェザー氏がソロモンでアービトラージ・グ ループを率いていた。また、金融市場を一気に大惨事に陥れたリーマ ン・ブラザーズ・ホールディングスでカウフマン氏が取締役だったこ とを思い出す読者もいるだろう。

とはいえ、カウフマン氏のインサイダーとしての経歴こそ、規制 緩和の愚かさをウォール街のインサイダー自身が容赦なく批判した本 書を読むべき理由だ。

カウフマン氏の批判の中心は、われわれの不勉強と過去から学べ なかった点だ。1966年以降に米国が少なくとも15回の信用危機に見 舞われたことに一体何人が気付いているだろうか。カウフマン氏はわ れわれが目を固く閉じ、信用市場の大破壊とバブルによるバブル、政 府救済による救済の道を進んできたと説く。

14世紀から続くテーマ

カウフマン氏は「レバレッジの過剰な利用」を14世紀以降の「金 融史を通じて続くテーマ」だとみる。数世紀にわたって信用バブルは 「金融危機とパニックによってはじけ、それが破産や再編を通じて多 額の債務の整理を誘導してきた」と分析する。近年の危機では、預金 保険や政府の救済、FRBの超低金利政策でその衝撃は和らぎ、投資 家ジョージ・ソロス氏の言う「スーパーバブル」にあえて針を突き刺 す当局者はいなかった。「今回の危機とこれまでの危機で異なる一つ の特徴は、債務が縮小せずに急速かつ急激に拡大した点だ」という。

その結果、われわれは金融機関を規制から自由にする一方で、経 営破たんから保護し、多くの金融活動に「公的なセーフティーネット」 を広げてしまうという筋の通らない危険な状況に陥ったと解説する。

カウフマン氏はアダム・スミスやミルトン・フリードマンといっ た「著名エコノミストで、規制緩和と大き過ぎてつぶせないという理 論を同時に主張する人はいない。2つの概念は論理的に両立しないか らだ」と論じている。 (ジェームズ・プレスリー)

(ジェームズ・プレスリー氏はブルームバーグ・ニュースの書評 家です。この評論の内容は同氏自身の見解です)

著書情報:

“The Road to Financial Reformation: Warnings, Consequences, Reforms” is published by Wiley (260 pages, $29.95, 19 euros, 25 pounds).

-- Editors: Mark Beech, Farah Nayeri.

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