【経済コラム】「美女軍団」が日本の男社会を揺さぶる-W・ペセック

「美女軍団」-。男女同権論者な ら、日本を刷新しようとしている女性たちをこう呼ぶことはよもやな いだろう。

8月30日の衆議院選挙の女性当選者は、過去最多の54人に達し た。女性の地位が低いことで悪評高い経済大国にとっては画期的な出 来事だ。新しい視点や考え方は、日本が何十年も経験したことのない 未知の要素だ。恩恵をもたらす可能性もあるだろう。

日本になお男女差別がまん延していることを疑うなら、選挙戦で 森喜朗元首相(72)が対抗馬の田中美絵子候補(33)を「スタイルが 良く、女性だから担がれた候補」と皮肉った発言をどう解釈すればよ いだろう。森氏はかつて石川県で旅行代理店に勤務していた田中氏が 対抗馬であることに憤りを感じたようだ。その憤りは、田中氏の「女 性としての魅力」に惑わされないよう有権者に訴えるほどだった。

よりまともな国なら、日本の足かせとなっている自民党長老議員 の1人である森氏には引導が渡されていたはずだ。同氏ができの悪い 首相だったことは言うまでもない。森氏の差別的な発言も落選につな がる可能性があったように思える。森氏は田中氏を制したが、得票数 の差は数千票だった。

浮き彫りになったのは「日本だけは特別」という従来の考え方が もはや通用しない現実だ。人口の半分を占める女性を「美女」だの「女 刺客」だのという言葉で片付けてしまうことの是非は、かつては差別 問題の範疇(はんちゅう)だった。それが今では、経済協力開発機構 (OECD)も注目する経済問題になった。OECDは、女性の社会 進出は日本の潜在成長率の向上につながるとみている。

不平等な扱い

国連も日本の女性差別の現状に苦言を呈した。国連女性差別撤廃 委員会は先週、日本政府に対し、差別根絶に向けた是正措置を取るよ う勧告した。

日経平均株価構成企業225社に女性の最高経営責任者(CEO) は1人もいない。日本政府がまとめた「男女共同参画白書」によると、 日本女性の政財界への社会進出度ランキングは、モルドバ、タンザニ アに次ぐ54位。世界全体に占める日本経済の割合を考慮すれば、この 順位はかなりひどいものだ。

ただ先月の衆院選で示されたように、状況は変わりつつあるのか もしれない。

このコラムの愛読者ならその理由をいくつか挙げられるだろう。 今回の衆院選で最も重要な結果の1つは、選挙結果次第で女性の地位 を変えられる可能性のあることが分かったことだ。これまでの選挙で は、マクロ経済や大企業の問題が焦点になったが、今回は国民そして 国民が直面する課題に注目が集まった。

棚上げという選択肢なし

自民党は女性問題にほとんど取り組んでこなかった。同党の経済 政策は、全力を挙げて変革を回避することに重点が置かれた。1990年 代から2000年代初めにかけて、成長の原動力を無駄の多い公共事業に 託してきた。疲弊した企業を救済し、競争力の乏しい産業を保護し、 円相場を安く抑え、銀行を支援して不良債権処理の先送りを可能にさ せた。

この結果、日本経済は過去15年間にわたって低成長にとどまり、 公的債務も国内総生産(GDP)のほぼ2倍の規模に膨らんだ。それ でも自民党は「日本の人口1億2600万人の半分を占める女性をもっと 活用すれば労働の質と経済成長の向上につながる」という海外エコノ ミストの意見に真剣に耳を傾けようとはしなかった。

民主党の鳩山由紀夫次期首相は同じ間違いを犯してはならない。 女性の発言権、それも衆院選で当選した女性の発言権が拡大した今、 男女差別の問題を避けて通るのは難しい。

この問題を棚上げにするという選択肢はない。政権与党にかつて ないほどの女性議員が誕生したのだから。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラ ムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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