須田日銀委員:異例の企業金融支援策の役割後退しつつある

日本銀行の須田美矢子審議委員は9 日午前、長崎市内で講演し、社債の買い入れなど12月末を期限とする 3つの企業金融支援策について「異例の措置の役割は後退しつつある」 と述べ、情勢の改善が続けば、これらの措置の終了または見直しを行 うとの考えを示した。

須田委員は企業金融を取り巻く環境について「通常の資金供給オ ペで代替しても安心感を損なわないレベルにまで改善しつつあるので はないか」と語った。さらに、「異例の措置の持つデメリットを軽視す べきではない」と言明。「異例の措置を必要以上に長引かせるようなこ とがあれば、副作用による悪影響が導入によるプラス効果を結果的に 凌駕(りょうが)してしまうことにもなりかねない」と述べた。

日銀は7月15日開いた金融政策決定会合で、9月末を期限として いたコマーシャルペーパー(CP)と社債の買い入れ、企業債務を担 保に0.1%で無制限に資金供給を行う企業金融支援特別オペについて、 12月末まで延長することを全員一致で決定した。

須田委員はこれらの措置について「仮に情勢が改善していれば、 終了または見直しを行う一方、情勢が十分改善しておらず継続が必要 と判断される場合には、異例の措置を延長することになる」とした上 で、「現在のところそれに向けて予断は全く持っていない」と述べた。

異例の措置にかかわらず超金融緩和は維持

同委員は「異例の措置を解除するか延長するかにかかわらず、日 本経済が物価安定の下での持続的成長経路へ復していくことを促すべ く、当面は十分緩和的な金融環境を維持していくことが必要」と述べ、

0.1%の政策金利は当面維持すべきだとの考えを示した。一方、「今後、 仮にバランスシートが縮小していったとしても、金融調節方針が変 わらない下で金融緩和の度合いが低下するわけではない」と述べた。

UBS証券の道家映二チーフストラテジストは「株高や経済指標 の改善などを受け、世界的に景気底入れ観測が広がりつつある」とし ながらも、「海外勢と比べ、国内投資家は実体経済と金融の先行きに対 し慎重なようだ」と指摘。「日銀による金融緩和政策の長期化や、短期 金利の低位安定を見込む向きは多い」としている。

須田委員は国内の景気については「下げ止まっており、持ち直し に向けて着実に歩を進めている」と指摘。今年度後半以降緩やかに持 ち直していくという日銀の標準シナリオに「おおむね沿った展開」と なっており、日本経済が目先、大きく下振れるリスクは「かなりの程 度低下したとみている」と語った。

財政規律への疑念で長期金利上昇も警戒

須田委員は一方で、やや長い目でみて、景気が持ち直しの動きか ら自律的な景気回復の動きに順調に移行していくかどうかは「依然と して不確実性が大きい」と指摘。「引き続き実体経済の金融の負の相乗 作用に対する警戒を怠るべきではない」し、「財政規律への疑念による 長期金利の上振れリスクにも警戒が必要だ」と述べた。

消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)については「前年 の石油製品価格高騰の反動などから、当面マイナス幅を拡大させてい く可能性が高い」と指摘。「仮に8月以降も7月と同じ値で推移したと しても、昨年は8、9月の方が物価水準が高いことから、前年比マイ ナス幅は2.4%にまで拡大していく」と語った。7月のコアCPIは 前年同月比2.2%低下と下落率は3カ月連続で過去最大を更新した。

須田委員は「物価指数の下落には技術進歩や生産性の向上による 部分もある」と指摘。さらに、需給ギャップが大幅にマイナスなって おり、物価の下落要因になるとの見方についても「これまでさまざま な方法で需給ギャップを推計し、物価動向の分析に利用してきた私ど もの経験からすると、あまりそうした数字にとらわれ過ぎると、かえ って物価の見通しを誤らせることにもなりかねない」と述べた。

須田委員は「当面は、景気や中長期的なインフレ予想の下振れな ど、インフレ率が想定以上に下落するリスクの方を意識しておく必要 がある」と指摘。その一方で、「より長い目でみれば、グローバルな金 融緩和が続く下で、再び商品市場に資金が流入し、一次産品価格の高 騰を通じてインフレ率が想定以上に上振れてしまうリスクについても、 引き続き留意していく必要がある」と語った。

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