榊原元財務官:国債10兆円増発でも長期金利は2%に届かず

早稲田大学インド経済研究所所長の 榊原英資元財務官は9日午後、都内で講演し、景気対策の財源に充てる ための国債発行が市場に与える影響について「10兆円くらいの新規発行 は十分吸収できる状況だ」と述べた。また、鳩山由紀夫次期内閣は国債 増発によって積極的な第2次補正予算を組み、景気悪化の再来を未然に 防ぐ必要があると強調した。

榊原氏は、国内景気は自動車や家電の買い替え支援策による需要の 一巡や政権交代に伴う省庁の予算執行停止などにより、「年末から年初 にかけて二番底に陥る」恐れがあると指摘。「鳩山不況」と言われない ためにも、政権発足後の「相当早い時期」に景気対策を打つべきだと語 った。

景気対策の財源に関し、国債増発を避けるべきという論議は「責任 感の仮面を被った経済学の無理解だ」と非難。補正予算での「減額修正 は極めて危険」であり、総需要を減らすべきでないと述べた。1400兆円 超の家計の金融資産が国・地方の長期債務800兆円余りを上回っている ため「財政危機に陥っているわけではない」と言明。10兆円増発しても 10年物国債利回りは「2%に届かない」と予想した。

ただ、中長期的には「財政規律は大事だ」とも指摘。「無駄な歳出 の削減には時間がかかる」ため、「4年くらい」の時間軸を念頭に取り 組む必要があると語った。

ドル基軸体制、20年は続く

榊原氏は、世界最大の外貨準備高を抱える中国などから揺さぶりが かかっているドル基軸体制について、今後「20年は変わらない。米国は そう簡単に崩壊しない」と言明。鳩山氏が掲げているアジア共通通貨構 想については「長期的な課題」であり「早くても20-30年先の話だ。私 も鳩山さんも死んだ後だと思っている」と述べた。

国連貿易開発会議(UNCTAD)は7日発表した報告書で、国連 加盟国は新たに世界準備通貨銀行を創設すべきだと提唱。同銀が通貨を 発行し、加盟国が保有する通貨の為替水準を監視することに合意する必 要があると呼び掛けた。

ドルは1970年代以降、金に代えて石油価格の表示通貨(ペトロダ ラー)として優位を保ってきただけに、基軸通貨としてのドルの地位に 黄色信号がちらついている。

インターコンチネンタル取引所(ICE)のドル指数は8日に一時

77.05と2008年9月以来の安値をつけた。対ユーロでは昨年12月以来 初めて1ユーロ=1.45ドル台に、対円でも3日につけた約2カ月ぶり の円高・ドル安水準まであと9銭に迫る場面があった。

榊原氏は、鳩山次期内閣での閣僚就任の有無については「話は全く ない」と述べるにとどめた。

榊原氏は1965年に大蔵省(現財務省)に入省。国際通貨基金(I MF)や米ハーバード大客員準教授などを経て、93年に国際金融局次 長。円相場が1ドル=79円75銭と戦後最高値を記録した直後の95年 6月に国際金融局長、アジア経済危機が発生した97年から財務官を務 め、「ミスター円」の異名をとった。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE