見過ごされたリーマン破たん前の不気味な予告-業界は守りで精一杯

その警告は十分に不気味だった。 内容は「大規模で世界的な資産の破壊」。

これこそ、米証券会社リーマン・ブラザーズ・ホールディングス の幹部らが同社の米史上最悪の破たん劇を前に予言した内容だった。 ブルームバーグ・ニュースが入手した政府当局者向けに用意された極 秘メモの一項目は「すべての金融機関に影響する」とあり、「リテー ル(小口)投資家も退職者資産も壊滅的な打撃を受ける」とある。

しかし、このメッセージが浸透することはなかった。リーマン救 済策を検討しようとポールソン米財務長官やニューヨーク連銀のガ イトナー総裁(いずれも当時)が昨年9月13日の週末に集めたおよ そ20人の大手金融機関幹部は、自行を救うのに精一杯で、より大き な脅威に目を向けなかった。

同週末に身売りで合意したメリルリンチのジョン・セイン最高経 営責任者(CEO、当時)はインタビューで、「CEOらが協議した 内容は、『いかにして、次の金融機関の破たんを防ぐか』だった」と 回顧する。「リーマンが破たんした場合、さまざまな市場が直接受け る影響について、もっと話し合うべきだった」と述べた。

ニューヨーク連銀に当時集まった幹部全員は、サブプライム(信 用力の低い個人向け)住宅ローンの問題や債務担保証券(CDO)な どの証券化商品によって金融システムが崩壊の瀬戸際に追いやられ たことは認識していた。しかし、彼らが見過ごした点によって、金融 業界と世界経済はその後、ほとんど破壊されたも同然の姿となったの だ。

経済の血液

リーマンは昨年9月15日の月曜日に破たん。これをきっかけに 給与支払いや光熱費含む企業の運転資金を工面するコマーシャルペ ーパー(CP)をやりとりする3兆6000億ドル規模の短期金融市場 が凍り付いた。パニックで、一部企業は運転資金不足に陥ったほか、 多くの人々の口座にも影響が出るありさまだった。

その週末をゴールドマン・サックス・グループのロイド・ブラン クフェインCEOやJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン CEOら主要金融機関トップは、デリバティブ(金融派生商品)取引 の解消や銀行間融資の継続に注力していたが、経済の血液とも言える CP市場を無視した事実は高く付くミスとなった。1週間以内に、米 政府はマネーマーケット・ファンド(MMF)からの資金流出を食い 止めるために介入し、1兆6000億ドル規模の業界支援につながった。 大恐慌以来最悪の金融危機対策として約束した支援は総額で13兆 2000億ドルに上る。

3月のベアー・スターンズ危機に始まり、ファニーメイ(連邦住 宅抵当金庫)やフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)、そして米 保険会社アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の救 済まで含めた2008年の大激震のなかでも、リーマン破たんによる波 及効果を把握できなかったことが最も重大な結果をもたらした。世界 経済が破滅寸前に陥ったからだ。

リーマンの破たん処理を担当する米法律事務所ウェイル・ゴット シャル・アンド・マンジェスのパートナー、ハービー・ミラー氏は米 政府当局について、「金融システム全体を危険にさらしたが、そうす る必要はなかった」と批判する。「彼らには、わたしも『ハルマゲド ンがやって来る。結果がどうなるのかの認識が甘い』と警告していた」 が、当局からは「対応はできている」との反応が返ってきたという。

ポールソン、ガイトナー両氏ともコメントを控えている。

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