ドルは長期下落も-米赤字に為替市場が再び注目、ロゴフ教授は弱気派

米国の赤字が少なくとも2年ぶりに 外国為替市場で注目を集め始めており、ドルにはマイナスとなる可能 性がある。

信用が逼迫(ひっぱく)し、米財政赤字が1兆ドルに達し、米経 済が1930年代以降最悪のリセッション(景気後退)に陥るなか、ド ル相場の指標、貿易加重ドル指数は過去2年間で2.2%低下した。ト レーダーの間では、より長期的な下げを見込む声も多くなっている。

先物市場では、ドルが今後10年間で1ユーロ=1.49ドルに下落 するとみられている。1999年のユーロ導入以降の平均は1.17ドル。

米国の財政と経常のいわゆる双子の赤字が注目を集めている背景 には、オバマ大統領の経済対策が景気回復につながり、相対的に安全 性の高い米資産の需要が低下したことがある。

リスク許容度の目安となるJPモルガンG7ボラティリティ指数 は1年ぶりの低水準に低下。モルガン・スタンレーは3日付の為替ス トラテジスト・リポートで「日々の為替動向にとって、経済指標の重 要度は過去4年間で最も高くなっている」と指摘した。

4月にドル弱気派に転じた資金運用会社パトナム・インベストメ ントのシニア・バイスプレジデント、パレシュ・ウパダヤ氏は「市場 の正常化が進むなか、参加者は通貨ごとの違いに着目し始めている。 ドルには弱気になるだろう」と指摘した。

赤字見通し

ブルームバーグ・ニュースのエコノミスト調査によると、米経常 赤字の対国内総生産(GDP)比率は2010年に3.2%、11年に3.5% に上昇する見通し。消費者や企業の支出拡大に伴う輸入増加や原油相 場の上昇が背景にある。今年は2.9%の見込み。これに対し別の調査 では、欧州の経常赤字の対GDP比率が1.2%になるとの見通しが示 された。

米財政赤字は、09年度(08年10月-09年9月)の最初の10 カ月で過去最高の1兆2700億ドルを記録。リセッションに伴う税収 減少やオバマ政権の歳出拡大が響いた。米議会予算局(CBO)によ ると、10年度の赤字は1兆6000億ドル、11年度は1兆4000億ド ルが見込まれている。

国際通貨基金(IMF)の元調査局長で、現在はハーバード大学 教授のケネス・ロゴフ氏は先週、インタビューに対し「分岐点に差し 掛かっている」と指摘。「オバマ政権が長期的な財政赤字の抑制に失敗 すれば、ドルは数十年にわたり下落する」との見通しを示した。

ロゴフ教授とカリフォルニア大学バークレー校のモーリス・オブ ストフェルド教授は05年11月、対GDP比率が6%の経常赤字を解 消するためには、ドルが貿易加重ベースで最大30%下落することが必 要と指摘していた。実際はこれまでに約15%下落した。

そして現在、ロゴフ教授は、世界の成長に占める新興市場経済の 割合が高まるなか、ドルは新興市場通貨に対して今後10年間にわた り毎年約2%下落すると予想。ドルの下落を防ぐためには、米経常赤 字の対GDP比率を2-2.5%以下に抑える必要があるとみている。

ドル高見通しも

一方、資金運用会社フランクフルト・トラスト・インベストメン トの資産配分責任者、クリストフ・キント氏は、ドルの見通しに対す る懸念は行き過ぎていると指摘。米国民の貯蓄増加は、外国資本に対 する依存度の低下につながるとの見通しを示した。

5月には米国民の所得に占めた貯蓄の割合が6%と、1998年以 来の高水準を記録。昨年4月はゼロ%だった。7月は4.2%と、過去 20年間の平均と同水準に低下した。

キント氏は米経済について、借金をして外国製品を購入する「従 来の成長モデルに戻ることはない」と指摘。「新たな成長モデルは以前 より輸出主導型になる。その結果、経常赤字は縮小し始める。ドルに とってはプラスだ」との見通しを示した。

債券利回りもドルを支える可能性がある。過去3カ月間、米10 年物国債利回りとフェデラルファンド(FF)金利誘導目標の格差は 平均3.34ポイントだった。RBSセキュリティーズの為替戦略責任 者アラン・ラスキン氏によると、この格差が4ポイントに近づくと必 ず、外国投資家にとって米国債の投資妙味が「大いに」高まるという。

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