働きマン日本に休暇を、シルバーウイークは低迷する余暇市場の清涼剤

5月のゴールデンウイーク以外では 初めて、5連休が今月到来する。旅行会社は「シルバーウイーク」と名 付け需要掘り起こしに躍起、有給休暇を取りづらい日本の労働事情もあ り、有効活用しようと海外旅行の申し込みは対前年水準5割増しの状況 だ。不況や新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の影響で低迷する レジャー業界には、一服の清涼剤になる。

日本の大型連休の定番は5月だが、2000年以降段階的に施行され た改正祝日法の影響で、今年は秋にもゴールデンウイークが登場。週休 2日制で土日休みの一般会社員なら、19日から23日まで5連休となる。 9月の5連休実現には、秋分の日が水曜日に来ることが条件で、次に実 現するのは2015年、その次は26年の見込みだ。

今秋の大型連休では、海外旅行の需要急増が目立つ。国内航空会社 が7-9月に燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)をゼロにした効果 や円高傾向で、商品に値ごろ感が出た。千葉県在住で広告業界勤務の川 島祥之さん(30)は、旅行料金が盆時期と比べ低めだったため、彼女 とインドネシアのバリ島に行くことを急きょ決めた。今年は勤め先の業 績悪化でボーナスも激減、リストラモードの社内で有休も取りづらく、 「例年出かけていた夏の旅行をあきらめていた」そうだ。

格安航空券販売で首位のエイチ・アイ・エスが7月にまとめた 「夏休みの海外旅行動向調査」によると、9月の海外旅行予約数(パッ クと航空券)は前年同月比55%増。「9月は年によって3連休が2回 あり、7、8月と並ぶ人気の出発月だが、今年は5連休を中心に早い段 階から混み合った」と、経営企画室の清国幸恵氏は話す。

想定以上の人気に投資家も注視

清国氏によれば、新たに設定したハワイ行きチャーター便の商品が 発売と同時に完売、「間際予約も活発で、9月の受注は足元でさらに積 み上がり、想定以上の人気」という。近畿日本ツーリスト(KNT)で は9月の予約数が、海外旅行で前年同月比50%増、国内旅行は同11% 増。ブランド戦略室の阿部章子氏は、「9月接近につれ、予約や問い合 わせが日々増えている」としていた。

財団法人・日本生産性本部まとめの「レジャー白書2009」による と、08年の余暇関連市場の規模は前年比2.4%減の約73兆円。景気低 迷の深刻化で娯楽、観光・行楽部門が落ち込んだ。流れは続き、25周 年イベントの効果で過去最高の入場者数と08年は好調だった東京ディ ズニーリゾートも、今年4-6月期のテーマパーク事業の売上高は、入 場者数の低迷で前年同期比9.3%減。KNTの1-6月期業績も同 15%減収、24%の営業減益を強いられたが、年後半のレジャー関連企 業はシルバーウイークの上乗せ効果が見込めそうだ。

株式投資家の間でも、旅行会社などの9月の需要動向に関心が高ま ってきた。しんきんアセットマネジメント投信の藤本洋主任ファンドマ ネジャーは、「今期最大の書き入れ時を迎えるレジャー関連企業が、こ の時期にどれだけ収益を積み増せるかに注目」している。

つかの間のオアシス

もっとも、主なレジャー関連銘柄のパフォーマンスはさえず、年初 から8月末までHISが6.6%高、常磐興産は4%高、KNT37%安、 オリエンタルランド15%安といずれもTOPIXの12%高に届かない。 連休による旅行業などの需要増は一時的に過ぎず、中長期的な収益環境 の厳しさが意識されているためだ。

「9月はつかの間のオアシス」――。こう表現するのは野村証券の 大庭正裕アナリスト。今夏のボーナス落ち込みを受け、6月の現金給与 総額は過去最大の落ち込みを記録し、7月の完全失業率も過去最悪の

5.7%に達した。景気に遅行する所得・雇用環境は悪化が続くと予想さ れ、根本的な個人消費の回復には期待を持ちにくい。

財団法人日本交通公社の塩谷英生主任研究員が過去25年分の家計 消費に占める旅行費比率の推移を分析したところ、旅行費シェアは家計 消費支出が伸びた時に高まり、消費が落ちた時に低下した。

海外に劣る有休取得率

日本の余暇市場は、90兆円を超えた1996年をピークにじり貧。 占有率の高いパチンコ産業低迷の影響は大きいが、経済成熟化の中でレ ジャー産業が中長期的に復活を遂げるには、「有休の取得率向上が必 要」と塩谷氏は言う。

先進国の週休日以外の休日は、日本の15日に対し米国が10日、 英8日、仏11日、独10.5日と日本が最多。対照的に、世界最大のオ ンライン旅行会社の米エクスペディアがまとめた「有給休暇実態調査 2009」によれば、有休の付与日数/取得日数は、仏が38日/36日、 独が27日/25日、英が26日/24日、米が13日/10日、日本の付与 日数は米国を上回る15日だが、取得は8日にとどまる。

同調査では、日本人が有休をすべて取得できない理由の上位に「仕 事が忙しく取る暇がない」「病気や急用などのために残したい」「上司 や同僚があまり取らず、取りづらい雰囲気」などが並ぶ。厚生労働省の 「平成19年就労条件総合調査」によると、有休取得率は46.6%と97 年の60%をピークに低下傾向、企業規模が小さいほどその率は低い。

厚労省では、中小企業への助成金支給など取得促進への環境づくり を進めるが、専門家の間では有休取得を法律で義務付ける欧州のように、 さらに踏み込んだ政府支援の必要性に言及する声も聞かれる。一橋大学 大学院の山内弘隆教授は、「有休取得率の向上が観光業界へ与えるイン パクトは非常に大きく、疲弊する地方経済の構造転換を促そう。有給取 得は日本経済にプラス、実現化には法整備が必要だ」と話している。

経済産業省や国土交通省も、有休未消化分をすべて取得した場合の 経済効果を12兆円、150万人の雇用創出が可能と試算、内需拡大への 有力な手法ととらえる。間もなく政権を担う民主党も、公約に「ワーク ライフバランスと均等待遇の実現」を掲げ、有休取得率の改善に取り組 む意向。経済協力開発機構(OECD)のまとめで、年間労働時間が 1785時間(07年)と、米英独仏4カ国の平均1608時間を上回る日本 が休みを増やした時、内需拡大が現実のものになりそうだ。

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