FRBの「出口」は来年初か、日銀は時間軸の導入も-野村総研

野村総合研究所の井上哲也主席研究 員は、日米欧の中央銀行が昨秋以降の金融危機に対処するため相次ぎ導 入した「信用緩和策」に関し、米連邦準備制度理事会(FRB)が来年 初にも解消に向けて動くと予想した。金融システムの安定後も国内景気 が回復軌道に乗らない場合、日本銀行が政策金利抑制の長期化見通しを 示す「時間軸政策」を採る可能性があるとの見方も示した。

井上氏は8月31日夜、都内で講演し、FRBは金融システム不安 の沈静化や米国経済の底入れを踏まえ、「信用緩和策を事実上、外しに かかっている」と指摘。「年末の資金需要期の安定を確認した上で動き 出すかもしれない。バブル再燃を防ぐためにも、正常化について真剣に 考えている」とも述べた。半面、米利上げについては、米景気が回復し ないと難しいと予想した。

FRBは8月11、12日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC) で、3月に導入した3000億ドルの米国債買い入れを1カ月間延長し、 10月末に終了すると決めた。ゼロから0.25%としている政策金利は 「長期にわたり異例な低水準」にとどまるとの見通しを示した。

短期金利の調節という伝統的な金融政策に加え、リスクを伴う民間 金融資産の購入などによって金融市場の機能を支援する「信用緩和策」 のうち、FRBが導入した様々なファシリティー(資金供給の仕組み) による貸し出し分については、井上氏は「金融機関からの需要減退で自 然に残高が落ちるだろう」と語った。

井上氏は「これからが非伝統的金融政策の正念場だ」と述べた。信 用緩和策などの「出口」に関する「金融市場の期待をコントロールし、 ボラティリティーを抑える必要がある」と強調。市場の混乱が実体経済 に悪影響を及ぼす悪循環の再燃を防ぐことが重要だと話した。

日銀は「時間軸」導入も

日米欧での非伝統的政策の解除後、世界景気回復の足取りがバブル 崩壊後の日本が経験したように重い場合には、外需依存型で物価水準が 低い日本は厳しい状況に置かれると、井上氏は指摘。政策金利抑制の長 期化見通しを示すことによって、市場で決まる中長期金利の低下を促す 「時間軸政策」を日銀が導入する可能性もあると予想した。

時間軸政策には、行き過ぎた低金利予想のまん延による金融バブル や過剰投資といった「毒も強い」とも語った。

日銀の水野温氏審議委員は8月20日の講演で、金融システム不安 が和らぎ景気悪化に歯止めがかかれば、非伝統的政策の終了はあり得る が、主要国の中銀は低金利を維持しており「いわゆる時間軸政策を打ち 出しているところもある」と指摘。景気や物価の下ぶれ懸念が強まった 場合などには「超低金利政策へのコミットメントを打ち出す」ことも選 択肢になると話した。

白川方明総裁は31日の講演で、世界経済の持続的な回復には「民 間経済主体のバランスシート調整」を避けて通れないと指摘。政策当局 は、この調整が円滑に進むよう促すと同時に、調整の加速による経済の 落ち込みを防ぐべくバランスを取る必要があると語った。

日銀出身の井上氏は、野村総研が主催して学者と市場関係者6人で 構成する研究会「金融市場パネル」の取りまとめ役。1985年に東京大 学経済学部を卒業し、日銀に入行。主に国際金融分野を担当した後、94 年から2年間は福井俊彦副総裁(当時)の秘書を務めた。04年からの 2年間は外国為替平衡操作の担当総括。08年11月に日銀を退職し、12 月に野村総研に入社した。

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