【米コラム】AIG株の上昇という不思議に迫ってみる-D・ポーリー

米政府の公的管理下にある保険会 社アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が突如、株 式市場の花形となっている。クレジット・デフォルト・スワップ(C DS)の無謀な販売で世界の金融システムをあわや崩壊の瀬戸際に追 いやった企業だというのに、不思議だ。

かつて保険世界最大手だったAIGの株価は過去2カ月で5倍余 りに上昇。28日の終値は50.23ドル(7月9日は9.48ドル)で、同日 終了の1週間では53%高だった。

8月3日に起用されたロバート・ベンモシュ最高経営責任者(C EO)は、そんなに素晴らしいのか。そんなことはない。同氏は同社 にとって4年間で5人目のCEO。AIGが依然として、CDS取引 で経営につまずき、米政府から1825億ドル規模の救済を受けざるを得 なかった企業であることに変わりはない。

会計スキャンダルで評判を落とした企業であることも変わりな い。公的資金の返済に向け、保険部門の一部やリース資産などを売却 する必要に迫られているが、買い手がほとんどいない。悪評が広がっ たことで、投資商品の販売が伸び悩んでいることは同社も認めている ところだ。

投機家らは、AIGの明るいニュースのどんな断片でも取り込ん できた。同社の株価を押し上げようとする彼らの情熱が、空売りをし ていた投資家に買い戻しを促し、株価上昇の継続につながった。株価 下落を見込んで空売りをしていた投資家は、取引を解消する場合に株 式を買い戻す必要がある。

希望の光

AIGを取り巻く環境が改善していることは間違いない。政府に よる支援が、AIGとともに金融システムを救った。米国内総生産(G DP)は今年4-6月(第2四半期)に前期比年率1%減と、マイナ ス幅が縮小している。

AIGは2009年4-6月(第2四半期)決算で、18億2000万ド ル(1株当たり2.30ドル)の純利益を確保した。前期までは6四半期 連続の純損失を計上し、累計赤字は1000億ドルを超えていた。

ベンモシュCEO(65)はふさわしい履歴書を携え、不人気な役 職に就任した。06年まで米生命保険最大手メットライフでCEOを務 め、同社の相互会社から株式会社への転換を指揮した人物だ。AIG では、年棒700万ドル(約6億5000万円)に加え、350万ドルの長期 報酬となっている。

ベンモシュCEOは現在、休暇中のクロアチアから、少なくとも AIGに関する計画についてインタビューに答えるという形で、社を 率いている。公的資金の返済に関しては、市場価値が回復するのを待 って資産売却するとの同CEOの発言を投資家は歓迎した。AIGは これまでのところ、資産売却を通じてわずかに93億ドルを調達してい るにすぎない。

グリーンバーグ元CEO効果

05年に更迭されるまで38年間にわたりAIGを率いたモーリス ・グリーンバーグ元CEOに助言を仰ぐ期待感をベンモシュCEOが 示したことも、AIG株上昇の一翼を担っている。キツネに再びニワ トリ小屋の番をさせるというのだろうか。グリーンバーグ元CEOは 8月、決算内容を不正操作したとされる問題で、不正行為を認めるこ となく、1500万ドルの罰金支払いで当局と和解している。

AIGを救済した米政府の出資比率は約8割に上っているのだ が、ベンモシュCEOはこれまでのところ、同社が実際には政府によ って運営されているということを認識していないようだ。

ベンモシュCEOは、米政府がAIGに対して実施したことはす べて間違いで、自身が同職に就任したのは資本主義をうたい上げるた めだと語る。AIGの従業員に対し、規制当局におびえることがない よう訓示を垂れるとともに、ハーベイ・ゴラブ新会長を政府高官との 交渉に当たらせる意向を明らかにした。

AIG株の上昇は理屈に合わない公算があるが、米国の納税者は それを好感しているかもしれない。31日の米株式市場では4ドル余り 下げているが、上げ基調で推移してきた。同じく公的管理下にあるフ ァニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵 当公社)の株価も同様だ。フレディマック株は数カ間にわたって1ド ルを割り込んだ後、8月に入って回復し、先週は2.40ドルで引けた。

AIGは6月に20株を1株にする株式併合を行ったことで、実際 よりも株価が良く見えている可能性がある。株式併合がなければ、先 週末は2.51ドルで終了しただろう。

AIG株について投機的な行動が取られる理由を理解するのは容 易ではない。恐らくそれに参加しているのは、米自動車大手ゼネラル ・モーターズ(GM)が会社更生手続きの適用を申請し、GM株は価 値がないと言われた時に、同社株を購入したのと同じ人たちだろう。 (デービッド・ポーリー)

(デービッド・ポーリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラ ムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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