「脱官僚」政権の出方うかがう財務省-予算の組み替え難題

衆院選で圧勝した民主党は、従来 の国の政策決定プロセスを「官僚丸投げ」と痛烈に批判し、政権交代 後に政治家主導に転換する方針を打ち出している。自民党政権で予算 や税制などの政策決定に深くかかわってきた財務省は来年度予算編成 を控え、「脱官僚」を掲げる民主党の出方を慎重にうかがっている。

衆院選の投開票が行われた先月30日夜、菅直人代表代行はテレ ビ朝日の番組で「明日の段階で麻生(太郎)首相は概算要求を止める べきだ」と語気を強めた。来年度予算の概算要求の締め切りは31日。 菅氏は「今さら概算要求を変えることはできない、これをベースにし てくれと言ってくるのは目に見えている」と財務省をけん制した。

これに呼応するように、財務省は31日午前に主計局で予定され ていた概算要求締め切りの作業風景のテレビ撮影取材を急きょ中止。 丹呉泰健財務事務次官は同日夕の記者会見で「概算要求が今後も堅持 されるのではないかという誤解を与える恐れがある」と説明した。

民主党にとっては、子ども手当や高校の無償化などマニフェスト (政権公約)に掲げた看板政策を来年度予算に盛り込むことが政権交 代後の最優先課題。麻生政権が7月に策定した概算要求基準(シーリ ング)を抜本的に組み替える方針を表明しており、来年度予算で必要 となる所要額7.1兆円を、補助金の無駄遣いや特別会計の運用益など で確保するとしている。

さらに、財源捻出(ねんしゅつ)のため、今年度補正予算にもメ スを入れ、一部事業の執行を凍結する構えだ。一般会計総額13兆 9256億円の補正予算のうち、「国営マンガ喫茶」と批判する国立メ ディア芸術総合センター建設費(117億円)や雇用対策の基金 (7000億円)などをやり玉に挙げている。

新政権の指示待ち

しかし、予算の組み替えは簡単ではない。補助金の多くは地方交 付税や社会保障費などの交付金として地方自治体に配分されている。 補正予算は6月の地方議会で既に執行が決まった事業も多い。

民主党が狙う外国為替資金特会や財政融資資金特会の運用益は内 外金利の影響を受け、それぞれ1.8兆円(09年度)と1.3兆円 (同)と前年度比で半減するなど減少傾向。財投特会の金利変動準備 金3.4兆円(同)は、基礎年金の国庫負担引き上げの財源などに転用 され、10年度でほぼ底をつく。

同省は例年であれば9月から一斉に始まる来年度予算の査定作業 を、社会保障費や義務的経費などに限定して実施。今年度補正予算の 執行状況のヒアリングも進めているが、本格的な予算編成作業は新政 権の指示を待って着手する。民主党は景気が低迷する中、「越年予 算」は避ける方針で、編成作業は年末まで4カ月の短期決戦になる。

丹呉次官は会見で、「新政権が示す新たな方針に沿って適切に対 応したい」としながらも、「民主党からアプローチは特段ない」と言 明。その上で「現在の経済、社会情勢を踏まえれば、年内編成を行い、 来年の通常国会に予算を提出し、年度内に成立させることが日本経済 にとっても重要だ」と強調した。

新組織の立ち上げ見守る

民主党は廃止する経済財政諮問会議の代わりに首相直属の「国家 戦略局」を設置し、官民の人材を結集して予算の基本方針を策定する 方針だ。民主党の鳩山由紀夫代表は31日未明の記者会見で、新局の 設置は法改正が必要なため、まずは「国家戦略室」を立ち上げて「政 調会長並み」の担当相を置く考えを明らかにした。

さらに、鳩山代表は行政の無駄遣いを洗い出す「行政刷新会議」 を早急に設置する考えを表明。その上で、「3年間ぐらいの期間の中 で予算の事業仕分けを徹底的に行えば、9兆-10兆円のお金を十分 に生み出すことができる」と自信を示した。

税制改正も

政権交代に伴い、税制の決定過程もがらりと変わる。民主党はこ れまで与党税制調査会と首相の諮問機関の税制調査会の2つの組織で 行っていた税制改正の議論を、新たに財務相の下に設置する政治家が 構成する政府税制調査会に一本化する方針だ。ここでも政治家が責任 を持って税制改正作業と決定を行うとしている。

民主党のマニフェストには、ガソリン税などの暫定税率の廃止や、 所得税の配偶者控除・扶養控除の廃止など大幅な税制改正項目が並ぶ。 景気低迷に伴い、今年度の税収が4兆-5兆円程度下振れる可能性も 指摘されており、財務省は2.5兆円の減収につながる暫定税率の廃止 には特に慎重。同党との調整のタイミングをうかがっている。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE