野田日銀委員:時間軸は選択肢-あらゆる政策に予断持たず

日本銀行の野田忠男審議委員は30 日午後、松本市内で会見し、将来の一定期間にわたり現在の金融緩和 策の継続を約束する「時間軸」の導入について「今は視野に入ってい ない」としながらも、「あらゆる政策手段に予断を持って臨まない」と して、将来の「選択肢の1つ」との考えを示した。

日銀は1999年2月にゼロ金利政策を導入した後、当時の速水優総 裁が同年4月の会見で「デフレ懸念の払しょくが展望できるような情 勢になるまで続ける」と表明。2001年3月に量的緩和政策を導入した 際は「消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比が安定的 にゼロ%以上になるまで続ける」という時間軸を採用した。

野田委員は会見で、実体経済の動きとはかけ離れて長期金利が急 上昇したときの対応について、日銀は「長期金利に直接働き掛ける手 段は持ち合わせていない」と述べた。また、一時的なアナウンスメン ト効果を狙って長期国債を買い増す可能性についても、そのような考 えは「少なくとも、私には全くない」と言明した。

野田委員はこれに先立ち行った講演で、「中央銀行による国債の 買い入れが長期金利へ与える影響に関するこれまでの実証研究や海外 の事例をみると、実施直後の一時的なアナウンスメント効果は相応に 認められるが、価格を一定水準に誘導するといった長期的な効果は認 められないというのがコンセンサスのようだ」と述べた。同委員は会 見で、こうした見方に「私も同意している」と言明した。

長期金利に直接働き掛ける手段ない

一時的なアナウンスメント効果を狙って長期国債を買い増す可能 性はあるのか、という質問に対して、「短期的な効果は日にちが経て ば消えてしまう。中長期的な立場に立って政策を打つのがわれわれの 基本的なスタンス」と指摘。「短期的なアナウンスメント効果がある ので、直ちにこれをもって政策うんぬんという考えは、少なくとも私 には全くない」と述べた。

また、長期金利に対して「私どもが政策として直接的に働き掛け るような手段は持ち合わせていない」と語った。野田委員は講演で、 実体経済とかけ離れた長期金利の上昇が景気の下振れリスクの1つの との見方を示していた。

同日朝発表された6月の鉱工業生産指数は前月比2.4%上昇した。 この結果、4-6月期は前期比8.3%上昇と、過去2番目に高い上昇 率となった。また、製造工業生産予測指数は7月が前月比1.6%上昇、 8月は同3.3%上昇で、7-9月期は2四半期連続でプラスを維持す る見通しとなった。

生産の不確実性は依然高い

野田委員は生産について「今はまだリバウンド(反発)の段階で あり、最終需要に生産が追いつこうとしている状態だ。7、8月の予 測数値を見ると、リバウンドの経路をたどっているに過ぎない。その 先については不確実性が高い」と述べた。同委員は講演で「内需を含 めた最終需要の本格的かつ持続的回復を示唆する材料がなお乏しく、 この点の不確実性が引き続き非常に高い」と述べていた。

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「日銀政 策委員会メンバーが発信しているメッセージの内容は、本格的な景気 回復は見えてきていないという考え方でしっかり統一されており、野 田委員の今回の講演内容も例外ではなかった。タカ派的な雑音はなく、 非常に安定していると言えるだろう」としている。

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