【コラム】小泉クールビズのせいで「失われた20年」にも-Wペセック

小泉純一郎元首相は私にとって 特別な存在だ。1匹オオカミぶりや改革路線、奇矯な行動のせいでは ない。ネクタイの問題だ。

小泉政権が2005年に打ち出した「クールビズ」キャンペーンの おかげで、企業戦士のわれわれは真夏の東京のビジネススーツから解 放された。形式ばった企業文化の国のサラリーマンが一斉にネクタイ を外すのは、一種の革命だった。

しかし、二酸化炭素(CO2)排出を減らすためのこの政策は、 景気にマイナスではないだろうか。エアコンの温度を28度に設定し たのでは、ただでさえ低い日本の生産性がさらに下がってしまう。日 本の失われた10年が、失われた20年になるかもしれないというヌ リエル・ルービニ米ニューヨーク大学教授の指摘を思い出すと、ます ます心配になる。

エコノミストの門倉貴史氏は、事務所の温度を28度にすること で08年の国内総生産(GDP)が0.13%押し下げられたと試算し た。

日本経済全体から見れば小さな割合かもしれないが、成長を阻害 するものは何であれ懸念材料だ。日本政府の政策がしばしば、意図せ ざる副作用を生むことを思い出さずにはいられない。

日本の政府は国民の社会的行動を誘導するのがうまい。資源のリ サイクルから交通機関での携帯電話の使い方など、ありとあらゆるキ ャンペーンを打ち出してくる。クールビズは強制的なものではなかっ たが、すぐに定着した。

デフレ

日本は成長を加速させ生産性を高め、世界から投資を呼び込む必 要がある。しかし、クールビズは勤労者の生産性を低下させる。経済 協力開発機構(OECD)によれば、08年の日本の1時間当たりの 労働生産性は米国を30%下回る。これでは、台頭する中国やインド と競争して豊かな日本の生活水準を維持することはできない。

ルービニ教授は22日付のリポートで、日本はデフレ状態に戻っ たとし、弱い需要と賃金下落のせいで物価下落が長期化する恐れがあ ると指摘した。

財政状態の悪さとゼロ金利、急速に進む人口高齢化によって、こ の傾向に歯止めをかける手段を奪われ、日本経済の「失われた10年 は失われた20年と呼ばれるべきものになるかもしれない」とルービ ニ教授は論じる。

地球温暖化と闘うよりも重要な課題はあまりないとはいえ、クー ルビズは若干行き過ぎではないか。もちろん、私はネクタイを懐かし んでいるわけではない。ただ、CO2排出を減らすために生産性を低 下させることに疑問を感じているだけだ。

意図せぬ結果

国連は08年8月に「クールUN」キャンペーンを開始したが、 ニューヨークの本部の目標温度は25度にしている。ニューヨーク育 ちの私が言うのだから間違いないが、ニューヨークの夏に比べ、東京 の夏ははるかに厳しい。裸で出勤してよいのでなければ、国連の目標 のほうが妥当なのではないか。

汗をかきながらデスクワークをするよりも、もっと良い省エネ策 があるだろう。大都市のネオンを制限するとか自動販売機を減らすと か、24時間営業のコンビニエンスストアに省エネを求めるとか、ハ イブリッド車や太陽光発電の普及に向けた奨励金を増やすとか。生産 性が上がれば就労時間が減り、結局、省エネにつながるかもしれない。

これは政策が意図せぬ結果を生む好例だ。小泉元首相はエネルギ ー使用に関し責任ある行動を呼び掛けた。これは正しい。財政健全化 に向けて消費税引き上げを目指す政治家も正しい。問題は、いずれの 政策も利益より害が大きいかもしれないことだ。弱い消費にさらに課 税すれば、財政は逆に悪化しかねない。

失業率や自殺率の上昇など、冷や汗の出るニュースはもう十分に ある。成長を抑えるような政策は絶対に避けるべきだ。この問題につ いてもっと訴えたいのだが、暑くてできない。シャワーを浴びてこよ う。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラ ムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE