【日本株週間展望】1万円台は短命、低調な経済指標と政局変動警戒

7月第5週(27-31日)の日 本株は、8連騰の勢いに乗る日経平均株価が1万円台を回復する場面 も見られそうだが、長続きはしないもよう。発表される経済指標は回 復の弱さを示すとみられるうえ、8月の衆議院選挙後の不透明感から 積極的に動けないのが実情。相場は夏枯れとなりそうだ。

いちよし投資顧問の秋野充成運用部長は、「米国株高に連れての 上昇が続いているが、日本の実体経済を見ると買い意欲がわかない。 連騰疲れもあって、相場全体は小動きになるだろう」と予想する。

日経平均は24日時点で8日続伸し、9944円55銭で終えた。連 騰中の上昇率は9.9%、今後1万円の大台を回復すれば取引時間内で は今月1日以来となる。しかし足元の連騰は、国内独自の好材料が要 因ではない。米国で景気先行指標総合指数や住宅販売などの経済指標 が堅調な内容を示し、半導体最大手のインテルや建機大手のキャタピ ラーの第2四半期(4-6月)決算が相次いで予想を上回り、米ナス ダック総合指数が23日まで12連騰したことを反映した。

好決算が相次いでいることを受け、米シティグループはS&P 500種株価指数を構成する主要500社の利益見通しを上方修正した。 2009年の1株利益予想は9.8%引き上げ56ドル、10年は11%上方 修正し62ドルとした。シティのエコノミスト、スティーブン・ウィ ーティング氏は22日付のリポートで、「決算は5月時点で見直した われわれの具体的な予想を大幅に上回っている」と指摘している。

企業業績は期待先行否めず

日本株の連騰が米国企業の好業績などによってもたらされたのな ら、7月5週から本格化する国内企業の第1四半期(4-6月)業績 発表は、たとえ持ち直しが確認できても株価は期待先行で上昇してお り、さらなる押し上げ要因になりにくい。そもそも「良い数字が出て も、現在の株価バリュエーションを正当化するには足りない」と、楽 天投信投資顧問の大島和隆CEO(最高経営責任者)はみている。

いちよし投資顧問の秋野氏も、「TOPIXの900ポイントは 来期業績のV字回復を織り込んだ水準」との見方で、決算発表では 「企業が今後の見通しについてポジティブな見方をできるかがポイン ト」としている。

財務省が23日発表した6月の貿易統計速報では、中国を中心と したアジアの景気回復で輸出が持ち直し、貿易収支は20カ月ぶりに 黒字額が前年同月比で増加に転じた。海外需要の堅調に為替の円高修 正もあり、自動車や電機といった輸出関連企業は今期(10年3月 期)業績計画を立てた期初よりも業績不安が後退している。

経済指標は低調予想

一方、第5週に発表される経済指標は、低調な景気動向を確認す るものとなりそうだ。バークレイズ・キャピタル証券では、31日に 発表される6月の全国消費者物価指数を前年同月比マイナス1.6%と 予想。5月はマイナス1.1%だったため、0.5ポイントの悪化だ。ま た同証は、30日発表の6月の鉱工業生産は前月比1.9%増と、5月 の5.7%増からプラス幅が縮小するとみている。

31日には6月の完全失業率や家計調査、住宅着工統計も発表予 定。森田京平チーフエコノミストは24日付のリポートで、「輸出・ 生産は回復基調に入ったものの、家計を取り巻く所得・雇用環境は今 後さらに厳しくなる。製造業の回復と非製造業・家計の厳しさが同居 する国内デカップリングは今後一層鮮明になろう」と指摘している。

政治リスク、夏枯れ

もたつく景気に加え、国内政治の不透明感が相場の上値を長く抑 えそうだ。衆院選では民主党が勝利し、政権交代が実現するとの見方 が大勢だが、投開票は8月30日と1カ月以上先。強力な政権誕生か、 与野党伯仲か、また政策の実現性や国の方向性が見えるまでに相当の 時間が必要で、相場こう着の要因になりかねない。

政治リスクを嫌うとされる海外勢は買いを見送り、国内機関投資 家は戻り売り姿勢を取るなか、個人投資家の動きだけが活発だ。この ため、東証1部の売買代金(6日移動平均)は6月17日に記録した 今年最高の1兆9728億円から低下傾向にあり、24日時点で1兆 3393億円となっている。

決算機に個別物色強まる

相場全体がダイナミックに動きにくいなか、企業決算などをきっ かけに個別物色が盛んになりそう。決算は日本郵船や日立製作所、コ マツ、キヤノン、三井住友フィナンシャルグループ、ホンダ、野村ホ ールディングス、JTなど各業界の主要企業が予定している。

楽天投信の大島氏は、テクノロジー株は買いのタイミングと見て いる。インテルやIBMなど米ハイテク企業が好決算を発表し、業界 の事業環境は好転しつつある。長期的にも、「クラウドコンピューテ ィングなど技術のトレンドが大きく変わりつつある今、事業チャンス を生かして飛躍する企業を発掘するチャンス。技術革新はスローでも、 後戻りはしない」いう。

証券ジャパンの小林治重調査情報部長は「ひところ盛んに言われ た太陽光や原子力発電といった言葉を最近耳にしなくなった。エネル ギーを作り出すというシナリオは飽きられたようで、今は鉄道やスマ ートグリッド、白色発光ダイオード(LED)など省エネがキーワー ドになっている」と話す。

【市場関係者の当面の日本株相場の見方】
●いちよし証券の高橋正信チーフストラテジスト
  「今週は終値で日経平均1万円台を固められるかが焦点。日米中
ともカネ余りによる流動性が株価を支える状況は変わらないだろう。
次期政権が有力な民主党の景気刺激策は期待されるが、実体経済は悪
くバリュエーションも高い。米国株が下げれば再び続落する危険性も
残る。売買を伴って年初来高値を更新してきた銘柄に注目している」

●水戸証券の吉井豊投資情報部長
「日経平均は当面、9000-1万円のボックス圏で推移すると見てい
る。上限に近づき、今週は売りに押されやすい。注目材料は6月の鉱
工業生産指数。先週の貿易統計で輸出額の減少率が縮小、連動性の高
い鉱工業生産も回復すれば、日経平均は1万円台に乗せる可能性もあ
る。ただ来期企業業績が急回復する楽観的な前提に基づいても、1万
円を大きく上回ることはPERなど投資指標から正当化できない」

--取材協力:長谷川 敏郎、河野 敏

Editor:Shintaro Inkyo、Makiko Asai

参考画面: 記事に関する記者への問い合わせ先: 東京 浅井 真樹子 Makiko Asai

+81-3-3201-8955 masai@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:

大久保 義人 Yoshito Okubo

+81-3-3201-3651 yokubo1@bloomberg.net 香港 Darren Boey

+852-2977-6646 dboey@bloomberg.net

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE