温室効果ガス:日本の「ホットエア」購入に賛否両論、世界も注目

日本の購入が報じられた温室効果 ガスの排出クレジットに賛否両論が巻き起こっている。削減努力を伴 わない排出クレジットを日本が購入することに対して、海外から批判 の声が上がっている。一方、政府当局者は京都議定書で定められた排 出クレジット取引だとして反論する姿勢を示している。

実際の排出量が京都議定書で国ごとに割り当てられた温室効果ガ スの排出量(AAU)を下回った場合、その国は余剰分を「AAUク レジット」と呼ばれる排出クレジットとして取引できる。しかし、こ うした余剰クレジットは、その国が排出削減努力をせずに経済活動の 低迷によって転がり込んできたケースが多い。「空手形」や「でたら め」という本来の意味に温室効果ガスをかけた「ホットエア」という 名称で呼ばれている。

ロシアやウクライナ、ポーランドといった旧共産主義諸国では旧 ソ連の崩壊で温室効果ガスを排出していた国内産業が衰退し、1990年 を基準年とする京都議定書の仕組みで大量のホットエアを生んでい る。一方で、2012年までに排出量を90年比6%削減する目標を課せら れた日本は、海外からのクレジット取得がなければ目標の達成は難し くなっており、ホットエアへの需要も強い。

経済産業省・京都メカニズム推進室の久田桂嗣氏によると、12年 までの5年間で政府や企業など国内全体で3億5000万トン以上の排 出クレジットを購入する予定で、この中にはAAUクレジットも含ま れるという。京都議定書に基づく排出クレジットはAAUのほか、排 出削減事業に投資することによって得られるCERクレジットなどが ある。

1500万トンのホットエア

スロバキアもホットエア大国のひとつ。現地メディア、トレンド は8日、情報源を明らかにしない形で、東京電力などが合計1500万ト ンのAAUクレジットをスロバキアから購入したようだと報じた。買 い手には三井物産や三菱商事も含まれているというが、同誌の取材で は三菱商事は取引への参加を否定している。トレンドは、スロバキア 政府が昨年、スイスの企業にAAUクレジットを販売し、日本企業に 譲渡されたとしている。

経済産業省・京都メカニズム推進室が運営するウェブサイト上に 掲載された文書では、08年末までにスイスから1500万トンのAAU クレジットが日本国内に移転されたことが示されている。

東京電力の広報担当、角田直紀氏はブルームバーグ・ニュースの 電話取材に対し、「この件に関しては情報を開示していない」と話し た。

経済産業省の久田氏は、京都議定書で定められた排出クレジット はすべて削減目標達成のために使用することが可能で、AAUクレジ ットについても例外ではないと指摘。同氏は特定の取引についてのコ メントを避けながらも、AAUクレジットの購入について批判の声が あることは、国内でも知られていると話した。

オランダなど数カ国が購入

世界ではオランダとスペインなど数カ国がホットエアをすでに購 入している。国際排出量取引委員会(IETA・ジュネーブ)は17 日、AAUクレジットは排出削減努力の成果というよりも、むしろ予 期しないマイナス経済成長の結果であり、AAUクレジットの売却は 他の排出権の価値を「薄めるものだ」と批判した。

久田氏によると、国内のAAU購入者は、支払った代金を「グリ ーン投資スキーム(GIS)」に基づいて排出削減や環境関連対策に 使途を限定することが相手国政府に義務付けられている。日本政府は これまでウクライナから3000万トン、チェコから4000万トンのAA Uを購入しているが、この投資スキームの条件を付けて購入してい る。

IETAのヘンリー・ダーウェント最高経営責任者(CEO)は 21日の電話取材で、AAUクレジットの買い手に対しては、排出削減 努力の実施を自主ベースではなく義務付けるべきだとの考えを示し た。同氏は「気候変動対策の名目で、買い手は削減につながる条件を しっかりとつけるべきだ」としている。

取引データの透明性確保

IETAは、AAUクレジットの取引に関し、より公正なデータ を開示するよう訴えている。ダーウェント氏は「我々は民間の業者に 対し、取引に関するデータの透明性を高める努力を求めている」と強 調した。

スロバキアでは5月、日本に渡ったとされる排出クレジットの取 引に十分な透明性が確保されていなかったとして、フィツォ首相がフ ルベット環境相を解任する騒ぎとなった。同国環境省のウェブサイト 上に掲載された文書によると、この排出クレジットは1トン当たり

6.05ユーロ(約816円)で販売されたという。

同省の広報担当官は23日、ブルームバーグ・ニュースの取材に対 し「当時、この取引はスロバキア政府にとって十分有益との評価を得 た。これまでのところ、有益でなかったと証明できる明確な証拠を出 した人はいない」と話している。

年末にコペンハーゲンで開かれる国連気候変動枠組み条約締約国 会議(COP15)では、京都議定書失効後の温暖化対策の枠組みが協 議される。主導権をめぐって、日米欧がしのぎを削る中で、各国の温 室効果ガス削減姿勢が注目されている。ホットエア是非論は今後一層 活発になりそうだ。

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