【米経済コラム】大手銀行の賭けに不安が付きまとう-D・ライリー

米国の大手商業銀行は、国内景気 が今年下期に回復するとの予想に賭ける姿勢を一段と強めている。し かし、この見方が誤りで借り手が不振な状態のままとなれば、結局痛 い目に遭うのは銀行とその投資家だ。

なぜなら、不良債権増加で貸倒引当金が減少し、銀行はそれを再 び積み増す必要に迫られるからだ。その結果、利益は圧迫される。

今年4-6月(第2四半期)の決算からは、主要米銀が景気回復 にかなり期待している兆候が見える。ウェルズ・ファーゴやバンク・ オブ・アメリカ(BOA)を含む資産規模で首位から7位までの米商 銀は、貸倒引当金の積み増しが控えめだった。1-3月(第1四半期) も同様の傾向で、これは利益押し上げ要因だ。

向こう半年で、例えば失業者数が横ばいとなり住宅市場が安定す るなどの理由で貸倒損失が減少すれば、銀行は現在の見通しが大当た りとなって大勝利を収めることになる。年内向けには十分な引当金を 確保しつつ、利益を押し上げたというわけだ。

どんな経済サイクルでも、貸倒損失がピークを付けて引当金に充 てる費用が減少すれば、現在のような見通しは銀行に吉と出る。ただ、 何より重要なのはタイミングで、銀行が景気回復シナリオに賭けるに は早過ぎると懸念する理由が幾つかある。

まず、エコノミストらは失業率が10%を超えると予想している。 住宅価格の底入れは近いとの兆候は増えているものの、相場が近々回 復するとは思えない。これはつまり、差し押さえが続くということだ。

FRB議長の警告

これらに加えて、商業用不動産ローンが大きな脅威となりつつあ る。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスの最近の リポートによると、米商業用不動産価格はピーク時から35%下落。こ の部門でのデフォルト(債務不履行)は米経済に「難しい」問題をも たらすと、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が今週、 議会で警告している。

また、米銀の評価損・貸倒損失は鈍化の兆しを示していない。J Pモルガン・チェースでは4-6月期に60億ドルと、前期の44億ド ルから膨らんだ。ウェルズ・ファーゴは44億ドルと、1-3月期の33 億ドルを上回った。それなのに、引当金は7億ドル増やしただけだ。 1-3月期は12億ドル積み増していた。

FBRキャピタル・マーケッツのアナリスト、ポール・ミラー氏は 今週のリポートで、貸倒損失が近いうちに減少しなければ、ウェルズ・ ファーゴは「引当金費用をかなり大きく増やし始める必要があり、そ れは収益と株価評価に重しとなるだろう」と指摘している。

引当金比率の低下

同行だけではない。わたしが試算したところ、7大米商銀のうち、 シティグループを除く6行で不良債権化した資産の伸び率が引当金の 積み増しペースを上回った。しかも、この6行で同資産に対する引当 金の割合が4-6月期に低下した。

このなかで引当金の比率が一番高かったのがJPモルガンで 170%。最低はサントラスト・バンクスの47%だった。BOAは116% で、1-3月期の122%を下回り、USバンコープは114%。最も落ち 込み方が激しかったのはウェルズ・ファーゴで、181%から128%に低 下した。

銀行は引当金比率を特定水準に維持する必要はないが、主要銀で 100%に近付けば投資家は落ち着かなくなるだろう。このため、景気が 思った通りに回復しなければ、銀行には引当金を積み増す必要性がま すます生じそうだ。

規模の小さい銀行であれば、クレジットカードや自動車ローン絡 みで多大な損失につながりかねない債権はあまり持たない傾向がある ため、引当金比率が100%を下回っても投資家は耐えられる。それでも、 サントラストの比率はあまりに低過ぎると思える。23日に決算発表し たPNCファイナンシャル・サービシズ・グループでは101%だった。

ジレンマ

銀行のジレンマは、引当金比率を高くすれば利益が吹き飛ぶとい うことだ。例えばPNCが同比率を1-3月期と同水準の124%で維持 したいと思えば、引当金を約10億ドル積み増さねばならず、これでは 4-6月期の純利益2億700万ドルが消えてしまう。サントラストで は、同四半期に1億8300万ドルとなった純損失が倍増しそうだ。

現在のところ、市場は景気回復が間近との銀行の見方に沿って、 緩慢なペースの引当金積み増しを受け入れている。結局のところ、利 益と株価を押し上げる要因は貸倒損失の減少なのだ。

景気が今年下期に予想外のカードを銀行に突き付ければ、楽観的 なバンカーも失業の憂き目に遭い、投資家は新たな損失に直面するだ ろう。 (デービッド・ライリー)

(デービッド・ライリー氏はブルームバーグ・ニュースのコラム ニスト。同氏の見解は本人自身のものです)

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