山口日銀副総裁:消費者物価が「安定」に戻るには時間も

日本銀行の山口広秀副総裁は22 日午後、函館市内で会見し、現在マイナスになっている消費者物価指 数が日銀の考える物価安定の範囲であるゼロ-2%に戻るには「それ なりに時間がかかる可能性が結構高い」と述べ、今後数年はマイナス が続くとの見通しを示した。

山口副総裁は「物価の安定と考えられる範囲にいつかは収まると いう方向感を持てるかどうかが非常に重要であり、大きな流れとして はそういう状態に向けて進むと思っている」と言明。「そうした判断に 立つ限り、追加緩和が必要だとは認識していない」と語った。

日銀が現在、中長期的にみて物価が安定していると考える物価上 昇率は、消費者物価指数の前年比で0-2%程度の範囲。5月の消費 者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)は前年同月比1.1%低下と 過去最大のマイナスだった。原油価格が昨夏にピークを付けた反動か ら、今夏には一段とマイナス幅が拡大するとみられている。

山口副総裁は「実質成長率は今年度3%を超えるマイナスになり そうだが、来年度はプラス成長を見込んでいる。潜在成長率に変化が なければ、需給ギャップは一応縮まっていく方向にある」と指摘。消 費者物価の前年比は「差し当たりマイナス幅は拡大するが、GDPそ の他の動きを踏まえと、本年度後半以降は下落幅を縮小していくとい うのがわれわれの中心的なシナリオだ」と述べた。

デフレスパイラルのリスクは小さい

今年1-3月期の国内総生産(GDP)は前期比年率14.2%減少 した。内閣府によると、需要と供給の乖離(かいり)を示す需給ギャ ップは、GDPのマイナス8.2%で、額にして45兆円程度に拡大した。 日本経済は昨年10-12月期に続き、2期連続で大幅な需要不足に陥っ ている。

山口副総裁は「われわれが物価情勢において最も注意しているの は、物価下落と景気後退の相乗作用が起きないかどうかであり、現状 そうした状態に陥るリスクは小さい」と言明。そういう物価について の状況認識を前提に置くと、「今の段階でさらなる金融緩和を行わなけ ればならないという状況ではない」と語った。

日銀は10月30日に経済・物価情勢の展望(展望リポート)を公 表し、2011年度の実質GDP成長率とコアCPIの見通しを明らかに する。山口副総裁は「10年度にかけて成長率が回復していくという見 通しを立てているが、その延長線上で考える限り、11年度以降も、海 外経済が回復を続け、わが国経済も回復基調を持続すると思っている」 と述べた。

ショックの影響はかなり続く

山口副総裁は「そうだとすると、物価上昇率を左右する要因の1 つである経済全体の需給バランスは、11年度以降も改善していくこと になる。その限りでは物価の下落圧力は低下していく」と述べたが、 こうした見通しには「不確実性がかなり伴う」と付け加えた。

さらに、「昨年秋以降、欧米、そしてわが国の景気、物価が受けた ショックは非常に大きかった。これだけ大きなショックが経済に加わ ると、その影響はかなりの期間にわたって続かざるを得ない」と指摘。 「景気の振幅もその分大きくなり、物価についても、われわれが物価 安定と考えるレンジに収まるには、それなりに時間がかかる可能性が 結構高いと思っている」と述べた。

日銀は今月15日に開いた金融政策決定会合で、9月末に期限が来 るコマーシャルペーパー(CP)と社債の買い入れ、企業金融支援特 別オペを12月末まで延長することを全員一致で決定した。21日公表 された6月15、16日の金融政策決定会合では、ある委員が「今後は、 臨時・異例の措置の解除に向けて具体的な検討を行っていくべきだ」 と述べるなど、延長には慎重意見も出ていた。

山口副総裁は12月末に期限を延長した企業金融支援策を再延長 するかどうかについては、「これからの企業金融の状況をしっかり見極 めながら、企業金融支援措置をやめるのか、見直すのか、あるいは再 延長するのか、いずれの対応が望ましいのか、今の段階では予断を持 つことなく考えていきたい」と語った。

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