長期金利の年末予想は強弱感がきっ抗、景気と需給焦点、1%-1.8%

景気楽観論の後退による金利低下 か、国債増発が招く需給悪化に伴う金利上昇か--。新年度入り後の3 カ月において長期金利は注目テーマの変遷に伴って上下に振れた後、足 元では3カ月半ぶりの水準に戻した。市場では年末に向けても明確なト レンドは出ずに1%前半から後半でのレンジを形成するとみられる。

今後の景気や物価動向を慎重にみる景気重視派は、日銀による現在 の金融緩和政策の転換が当面は見込めないこともあって、長期金利が年 末までに1%台前半に低下すると読む。一方、国債需給を慎重にみる向 きは、投資家の駆け込み需要が一巡する夏場からは国債増発に伴う需給 悪化を背景に金利が反転上昇するとみるなど強弱感がきっ抗している。

RBS証券の市川達夫チーフストラテジストは、景気や需給動向が 市場の想定から大きく外れる展開は考えにくく、長期金利は1-2カ月 おきに替わるテーマをにらんで振れるといい、「年末まで1.3%を中心 に上下20ベーシスポイント(bp)程度の推移」を予想する。

ブルームバーグ・ニュースが国債市場特別参加者(プライマリーデ ィーラー)23社に対して、12月末時点における10年国債の水準を聞き 取り調査したところ、市場予想の下限は1.0%、上限は1.8%となった。 今年1-6月の平均値である1.36%より低いとの回答が11社、平均値 より高いとの見通しを示したのは10社だった。

10年債利回りは年初以降には1.3%付近で推移した。4月に入ると

1.4%台に水準を切り上げて、さらに6月には一時1.56%をつける場面 があったが、その後は1.3%割れまで一気に水準を切り下げた。

経験則からは年末金利に低下余地

金利低下予想の根拠として景気や物価などファンダメンタルズ(経 済の基礎的諸条件)を挙げる向きが多い。春先からの金利上昇は日本経 済が1-3月期に底入れしたとの景気楽観論がけん引したが、その後に 景気の不透明感が広がったことが債券買いにつながり、すでに10年債 利回りは1.56%で今年度のピークをつけたとの指摘も出ている。

実際、10年債利回りは2006年度から3年連続で4-6月期に年度 のピークをつけたが、景気回復期待のはく落とともに年末にかけてじり 安となった。三菱UFJ証券の石井純チーフ債券ストラテジストは、現 在の景気は急激な落ち込みからの下げ止まりにすぎず、市場センチメン トの修正局面でのターゲットは昨年末時点と同じ1.2%だと予想。「金 利が年度上期に上昇、下期は低下するとの傾向が今年も再現しそう」だ とみる。

さらに、今後は物価の下落傾向が鮮明となる可能性が高く、クレデ ィ・スイス証券の河野研郎債券調査部長は、デフレ圧力の高まりを背景 に日銀がいずれ追加的な金融緩和に踏み切るとみる。この場合はすでに 限界的とされる2年や5年債利回りの低下余地を拡大させ、長期金利の 水準も一段と下方シフトする公算が大きくなる。

運用資金が長期債にシフト

金融機関には家計からの預金が増加する一方、貸し出しの伸びが頭 打ちして余裕資金として積み上がりつつある。日興シティグループ証券 の佐野一彦チーフストラテジストは、2年債など短い金利の低下が進ん だことから、銀行などの余資がより長い年限の買いに動くとみる。「こ うした資金が10年ゾーンまで、一気に及ぶには至らないとしても、手 前から金利水準を着実に押し下げる」との見方を示す。

三菱東京UFJ銀行円貨資金証券部の中山憲一次長も、企業収益が 厳しいことから株式売り、債券買いが出やすいとして、「これまで短期 債に逃げていた資金が徐々に中期や長期債へとシフトして金利が低下す る」と予想する。2年や5年国債利回りは前週後半にかけて再び低下基 調を強めて、それぞれ05年以来の低水準を記録しており、今後は相対 的な割安感から長期ゾーンが買われやすくなる場面がありそう。

「悪い金利上昇」を警戒

一方、景気の底割れ懸念が後退するなかでは、国債増発による需給 悪化が「悪い金利上昇」を促すと警戒する見方も根強い。6月後半から の駆け込み的な需要が一段落すれば、夏場以降には総じて買い余力が細 る公算が大きく、大和証券SMBCの末沢豪謙チーフストラテジストは 「国債増発に伴う発行量の拡大が段階的に効いてくるので、時間の経過 とともに金利上昇圧力がかかってくる」と指摘する。

09年度補正予算編成に伴う国債増発が約17兆円にも上るほか、企 業収益の悪化を受けて法人税収が大幅に落ち込むため、今後は第2次補 正予算の編成による赤字国債の追加発行も避けられない。衆院選が8月 30日の投開票となる見通しとなったことで、財政支出が一段と拡大す るリスクも意識されている。

【12月末時点における新発10年国債の予想利回り】
◎クレディ・スイス証券     1.0
◎みずほ証券          1.1
◎三井住友銀行         1.125
◎モルガン・スタンレー証券   1.15
◎三菱UFJ証券        1.2
◎ゴールドマン・サックス証券  1.25
◎RBS証券          1.3
◎日興シティグループ証券    1.3
◎UBS証券          1.3
◎野村証券           1.3
◎三菱東京UFJ銀行      1.3
◎JPモルガン証券       1.4
◎バークレイズ・キャピタル証券 1.4
◎カリヨン証券         1.5
◎岡三証券           1.5
◎東海東京証券         1.6
◎みずほインベスターズ証券   1.6
◎BNPパリバ証券       1.6
◎メリルリンチ日本証券     1.6
◎大和証券SMBC       1.7
◎ドイツ証券          1.8
◎みずほ銀行          NA
◎みずほコーポレート銀行    NA

--取材協力:関泰彦、池田祐美、Wes Goodman、Theresa Barraclough Editor:Hidenori Yamanaka,Joji Mochida

参考画面: 記事に関する記者への問い合わせ先: 東京 赤間信行 Nobuyuki Akama +81-3-3201-8842 akam@bloomberg.net 記事に関するエディターへの問い合わせ先: 東京 大久保義人 Yoshito Okubo +81-3-3201-3651 yokubo1@bloomberg.net Nicholas Reynolds +81-3-3201-8676 nreynolds2@bloomberg.net

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