【コラム】ゴールドマン語に続くのは「チャインドネシア」-ペセック

米ゴールドマン・サックス・グ ループのチーフエコノミスト、ジム・オニール氏は、ブラジル、ロシ ア、インド、中国の新興4カ国の頭文字から「BRICs」という呼 称を考案したことで長く名を残すだろう。そして今から10年後には、 CLSAのアジア太平洋市場担当エコノミスト、ニコラス・キャシュ モア氏も、別の経済新語で同じように有名になっているかもしれない。

オニール氏が2001年に考案したBRICsは、市場を変革する 主要な新興市場国を表す言葉として、今や至るところで用いられてい る。

ニコラス・キャシュモア氏は、そのBRICsから中国とインド の2カ国を抜き出し、そこにインドネシアを加えて「チャインドネシ ア」という呼称を作り上げた。

キャシュモア氏は、この言葉がBRICsと同じぐらい流行する と思うかと問われると、「もちろん、そう思いたい。BRICにイン ドネシアの頭文字の『I』を加えたら語呂が悪いからね」とジョーク で返した。

「チャインド」に1カ国を加えた理由には説得力がある。中国と インド、インドネシアの3カ国合わせたGDPは既に米国の44%に相 当する。キャシュモア氏によると、緩やかな成長率にもかかわらず、 5年以内に3カ国のGDP合計は10兆ドルを上回る見込みだ。

ただ、中国の社会不安やインドの高い貧困率、インドネシアの政 治腐敗など、考慮すべきリスクがないというわけではない。貿易や海 外資本への依存度がいかに低くても、世界的なリセッション(景気後 退)の深刻化は誰にとってもプラスではない。

明るい見通し

しかし、チャインドネシアは、価値重視の投資家が望むすべてを 備えている。インドネシアは成長率でもアジアで3番目であり、見通 しは明るい。

インドネシアの存在は、これら3カ国が競争すると同時に、互い に補完し合えることを示す。同国は重要な資源供給国であり、アジア の超大国である中国とインドの成長てこ入れに寄与できる。

インドとインドネシアにおいては、拡大しつつある国内経済が世 界的な経済危機の回避に貢献したことも指摘すべきだろう。依然とし て輸出に過度に依存している中国についてですら、景気刺激策が内需 拡大を後押しすると多くのエコノミストはみている。私自身は疑問視 しているが、十分あり得ることだ。

チャインドネシアを論じることは、われわれが今後向かう金融情 勢を考えることだ。07年以前に見られた高成長に近く戻る公算は小さ い。世界のパワーバランスはニューヨークやロンドン、香港から途上 国へと移り始めつつある。

バランスのシフト

複雑な金融商品の取引で繁栄してきた都市にとって、規制当局が 投機抑制に力を入れることは不利に働く。逆に、大きな潜在性を持ち、 政府が改革を公約している高成長国には注目が集まるだろう。チャイ ンドネシアの世界GDPへの相対的な寄与は、米国の衰退に伴い増加 する見通しだ。

インドでは、シン首相再選後、同首相への変革の期待は強まって いる。シン首相がインフラや教育を改善し、政治腐敗に取り組みなが ら、同国の巨額な公的債務をコントロールすることが期待されている。

中国の見通しは、景気対策の結果が表れてはいるものの、より複 雑だ。新疆ウイグル自治区の暴動により社会不安が強まっているのに 加え、先週は過去最大規模の銀行融資がインフレを進行させるとの観 測から、2回の国債入札で札割れの事態となった。

インドネシアの課題

インドネシアも同じく課題を抱えている。カナダの人口にほぼ匹 敵する数の国民が1人当たり1日70セント(約65円)未満で生活し ているという高い貧困率に加え、汚職の横行も経済成長を阻害してい るほか、テロのリスクも無視できない足かせとなっている。

一方、先週実施された大統領選挙でユドヨノ氏の再選が確実にな ったことはプラス要因だ。世界銀行のカントリーディレクター、ヨア ヒム・フォンアムスバーグ氏は、ユドヨノ大統領が国内の混雑した道 路や放置された港湾、老朽化した発電所を修復すれば、インドネシア は7%を超える「高度」成長が可能との見解を示した。

人口動向も考慮する価値がある。キャシュモア氏によると、ユー ロ圏や日本、ロシアの人口の伸びが停滞するなか、中国とインド、イ ンドネシアでは向こう10年間で、労働人口が1億7000万人強増える 見通しだ。同氏は「これはアジアの新たな成長トライアングルだ」と 述べた。

しかし、人口増加は両刃の剣でもある。高待遇の雇用を創出でき なければ人口増は悪夢となる。アジアの主要国が健全な成長を維持し、 その恩恵を全体に行き渡らせることができれば、人口動態はプラスに 働くだろう。

もちろんこれは大きな「仮定」だ。世界的な危機の深まりや疾病 感染拡大、気候変動への対処の必要性など、多くのことがマイナス方 向に向かいかねない。向こう数年間は、悪い意味での想定外の展開が 予想される。

しかし、先進国の人口動態や消費需要見通し、政府のバランスシ ートをみれば、チャインドネシアの課題はまだ対処しやすいと思える。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラ ムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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