【経済コラム】史上最も高くつく離婚を許してはいけない-Wペセック

中国を訪問した米議員や当局者の うち、弱気な側面を見せたのは先月帰国したマーク・カーク下院議員 (共和、イリノイ州)だ。

米国の最大の債権国がドル資産に対する大きな信頼感を表明した とのガイトナー米財務長官の主張に対し、カーク議員はまったく逆の 印象を持って帰国した。

同議員は6月10日、FOXニュースに対して「中国は米国にクレ ジットカード払いを解消させ始めているようなものだ。米国にはこれ 以上貸し出しをしたくない状況で、米連邦準備制度理事会(FRB) による量的緩和を特に懸念している」と語った。

それから1カ月が過ぎた。どちらの見方がより正確だったのか、 疑いの余地はない。中国の指導者は明らかにドルを懸念している。同 国の今後の対処方法が鍵を握る問題と市場がとらえるなか、議論を次 の段階に進める時期に来ている。

中国が保有するドル資産を減らしたいのは衆知の事実。知られて いないのは、このプロセスがこれからどう展開し、どの程度の作業や 準備が必要となるかだ。実際、とてつもない作業が必要となる。

中国と米国の関係を、史上最も高くつく離婚だと考えてみればい い。両国の国内総生産(GDP)は合わせて17兆ドル(約1580兆円)。 中国では、保有する8000億ドル近い米国債を積み増すことへの支持が ほとんどないことが国内の世論調査で示されている。

ばかげた議論

この議論はアジア全域に広がり得る。それでも、中国ないし6860 億ドルの米国債を保有する日本がドル資産の大量売却を開始できると の考え方はばかげている。市場に壊滅的な打撃を与え、その影響はア ジアに戻ってくるからだ。

もちろん、シンガポール(米国債保有高400億ドル)やインド(同 390億ドル)、韓国(同350億ドル)は秘密裏にドル売却を試みること はできるが、高度に連動し24時間動いている世界の市場では、幸運を 祈るとしか言いようがない。一国が他国を出し抜いて先取りの動きを 模索しているとのニュースで、右へ倣えの売りとなり、投資家やトレ ーダーも大量の売り注文を出すだろう。

資産家ウォーレン・バフェット氏ならば、同氏が率いる米保険・ 投資会社バークシャー・ハサウェイが保有する株式や通貨を慎重に減 らすことができるが、中央銀行が数百億から数千億ドルの資産をうま く売却する方法となると、これは別問題だ。

ドル合意

恐らく必要とされるのはドル支配を終わらせる世界的な枠組みか 協定だ。1997-98年の世界的な危機後に出てきたいわゆるブレトンウ ッズII体制におけるドルへの実質連動主義を解消するにはプラザ合意 のような何かが必要かもしれない。ドル合意なんて、どうだろうか。

このプロセスにはかなりの協力が必要となる。国際通貨基金(I MF)、20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)、アジア太平洋経 済協力会議(APEC)、東南アジア諸国連合(ASEAN)、今後 設立される組織のどこを通じてもそうだ。目標設定と方法討議、時間 枠の交渉が行われなければならない。通貨サミットを開催するなら、 今こそその時期だ。

障害となるのは政治だろう。米国がドルの基軸通貨としての役割 放棄に同意するとは考え難い。ユーロも円もドルに取って代わる状況 にはない。中国による通貨支配も、早くても10年先の話だろう。

ドルに代わる通貨が背負う重荷を考えると、基軸通貨を発行した い国がそもそもあるのかと考えてしまうだろう。それが、このところ 盛り上がっている議論でIMFの特別引き出し権(SDR)が最も取 りざたされる理由だ。

法定通貨ではないSDRは、ドルとユーロ、円、ポンドで構成す るバスケット通貨によって価値が決定される。中国人民銀行(中央銀 行)の周小川総裁はIMFに「スーパーソブリン(超国家)準備通貨」 の創設を促した経緯がある。

ドルの時代は終わるとのうわさはもはや誇張ではない。ただ、ア ジアが現在の苦境から抜け出すのは非常に簡単とするのは誇張だ。例 えば、米政府にクレジットカードを使わせないとの議論は、アジアが 製品を米消費者にもう買ってもらえなくなることを意味する。経済規 模の大きい米国と中国が突然離婚となれば、とてもきれいな結末など は考えられない。

今は次の段階を考える時期で、政策当局者は真剣になる必要があ る。現在のドル体制に文句を言っていても始まらない。ここからどう 進むのかについてのアイデアを出し合う方が、よほど建設的だ。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラ ムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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