日銀の企業金融オペ、条件変更なく継続か-「出口」の基準、不透明

日本銀行の企業金融支援策のひと つである「企業金融支援特別オペ」が、一時有力視されていた「条件 変更」さえ行われないまま9月の期限後も継続されるとの見方が金融 市場で増えている。景気の先行きに不透明感が強まっているなかで、 条件変更による金利の跳ね上がりなど悪影響が懸念され始めているた めだ。また、オペの目的が達成されたかどうかの判断基準が明確化さ れていない現状では、そもそも変更は困難だと市場関係者はみている。

企業金融オペは、企業の資金調達を容易にするため、コマーシャ ルペーパー(CP)の金利を押し下げたのはいいが、国庫短期証券(T B)利回りを下回るなど、市場機能阻害の副作用が指摘され、オペの 仕組みが見直されるとの見方も出ていた。しかし、最近は安全資産で あるTBへの資金流入で同利回りが低下したため、「官民逆転」は解消。 短期金融市場でもオペの見直しを求める声は弱まっている。

東短リサーチの関弘研究員は、「最近の経済指標を見ても、オペの 見直しを迫るほどの理由が見当たらない。政策の出口がスムーズにい くよう用意しておく必要はあるが、それがないのがモンスター・オペ と呼ばれるゆえんでもある」という。

1日発表の日銀の企業短期経済観測調査(短観、6月調査)は、 期待されたほどの景況改善が見られなかった。日銀が企業金融全体の 改善を政策終了の判断基準に置く中で、企業の格下げや株価の調整は 不安要素。景気自体も「二番底」説さえささやかれ始めており、同オ ペが期限の9月で打ち切られる可能性は極めて低い。

大きすぎて変えられない

企業金融オペの利用残高は8日時点で7兆2130億円あり、市場に 与えている影響が大きくなっている。6月末時点で日銀に持ち込まれ ている担保残高は、短期社債(電子CP)・保証付短期外債が3月末比 4668億円増の3兆3925億円、企業向け証書貸付債権も6567億円増の 5兆9150億円まで膨らんでいる。

同じ企業金融支援策でもCP買い入れオペは、0.4%の買い入れ下 限利回りを下回るCPは応札されず、自然な「出口機能」がある。一 方、企業金融オペは、民間企業債務の担保の範囲内で0.1%の3カ月 物の資金が無制限に借り続けられる。金融機関が信用リスクを引き受 けられる限り、利用が膨らみ続ける可能性もある。

このため、オペの担保対象からCPを外すといった大掛かりな条 件変更は、これまで低く押さえ込まれていた金利が跳ね上がるリスク をもたらし、市場への影響が大きく、景気低迷のなかでその可能性は 低下しているという。

また、オペの「微調整」についても消極的な見方が多い。実施頻 度の縮小は1回の利用額を大きくし、銀行の資金繰りを不安定にする リスクがある。供給額の上限設定も、金融機関のオペ入札を過熱させ る。さらに貸付利率の引き上げは、景気回復の道筋が明確でないなか で、「出口政策」と受け取られるのを恐れる日銀にとって、最も可能性 が低い選択肢だと市場関係者は話す。

あいまいな政策効果と出口

国内大手銀行の資金担当者は、企業金融オペにはそもそも、その 効果をどこまで期待し、何を持って役割を果たしたと判断するか、明 確な基準がないと指摘する。企業金融の改善が大企業から中小企業ま で広がる「染み出し効果」が狙いなら、その判断基準はますます不透 明になり、株価動向にも左右されてくる。

国内大手銀行のディーラーは、CPの発行環境は昨年のリーマン ショック前より良くなっていると指摘する。しかし、短観の発行環境 判断DIはマイナス14と、依然厳しいとみている企業の方が多い。こ のディーラーは、短観は発行市場の実態というよりも、政策に対する 企業の要望を反映している面が大きいのではないかと分析する。日銀 が「企業の要望」を重視したとしてもおかしくはない。

日銀は当初、企業金融の円滑化の観点から企業金融オペを導入し たが、その後、ターム(期日)物金利の低下を促す目的で3カ月物の 資金供給を拡大した。銀行貸出の基準金利にもなっているTIBOR (東京銀行間貸出金利)が緩やかな低下にとどまっている間は、オペ も止められないことになる。

日銀の西村清彦副総裁は、6月26日付の日本経済新聞の経済教室 のなかで、非伝統的金融政策の評価軸として、「市場機能の改善に応じ、 中央銀行の介入が低減する形になっているかどうか」を挙げている。 しかし、企業金融オペ継続の可否は、景気や企業金融の大まかな状況 にゆだねられているとの見方が多く、その影響の大きさの割に、政策 効果と出口の判断が不透明だ。

別の国内大手銀行のディーラーは、オペがこのまま半年延長され れば新たな参加者も加わり、「出口」が何倍も難しくなると予想する。 市場参加者の認識があいまいなままオペを継続すれば、日銀が最も警 戒する「バブル」の芽になりかねないリスクをはらんでいる。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE