地上資源大国ニッポン:産業排水を「宝の水」に-希少金属回収を支援

嫌われ者の産業排水を「宝の水」に 変える技術開発支援に国が乗り出す。ニッケルなどの希少金属(レアメ タル)を回収する技術で、毒性金属を取り除き環境への悪影響を抑える と同時に金属資源の確保が可能となる。課題はコスト抑制だ。

水事業の国際的な競争力を高めるため、経済産業省は水の再利用事 業や希少資源回収の技術開発などを支援する「省水型・環境調和型水循 環プロジェクト」として2009年度予算で約60億円を計上。新エネルギ ー・産業技術総合開発機構(NEDO)は委託先として企業など20法 人を6月に決定、月内にも追加で公募するという。

このうち希少金属回収では、委託を受けた産業技術総合研究所と日 本原子力研究開発機構がハードディスクや自動車部品などに使用され る無電解ニッケルめっきの廃液からニッケルを回収する装置の大きさ を2-3分の1に小型化、初期費用は10分の1、維持費用も4分の1 に抑える技術の開発に取り組む。

ほかに、無電解ニッケルめっき加工を手がける日本カニゼン(東京 都足立区)や廃水処理のアクアテック(大阪市)なども受託が決定。産 業排水から効果的にレアメタルを回収する技術が確立すれば海外でビ ジネスチャンスが広がる可能性もある。

「嫌われ者」

レアメタルは液晶テレビや携帯電話などの生産に欠かせず、埋蔵量 が少ないことに加え、自動車向け需要の拡大が見込まれることなどから 安定的な確保が重要課題となっている。

日本では、廃棄された携帯電話や家電などからプラチナやパラジウ ムなどのレアメタルを回収する動きは進んでいるが、産業排水からの回 収は普及していない。佐賀大学理工学部の川喜田英孝助教は「産業排水 は基本的に嫌われ者。コスト高もあり一般には広がっていない」と語る。

環境省の統計によると、法令で定める工場など「特定事業場」から の産業排水は1日当たり3億7800万立方メートル。これは東京都全体 の上水道への1日当たりの配水量の86倍の規模に当たる。産業排水に は、ニッケルだけでなく、ハイブリット車の電子基板などに使用される モリブデンや、薄型テレビの液晶パネルに用いられるインジウムなども 含まれている。

地上資源大国ニッポン

独立行政法人物質・材料研究機構(茨城県つくば市)がレアメタル のうち20種類について規模を推定したところ、産業排水からの回収も 含めたいわゆる日本の都市鉱山の蓄積量は13億3600万トンと、世界の 年間消費量10億8600万トンを上回った。

民間調査会社の富士経済は3月、化学や製薬、電機、鉄鋼、自動車 など工場を持つ約1100社を対象に産業排水の再利用や資源回収につい ての調査を実施。高田圭介研究員によると、回答のあった145社のうち 『既に導入している』企業は2割弱、『検討している・関心はある』と 答えた企業は1割程度にとどまったという。

高田研究員は「定量的な比較は難しいが、携帯電話など固形物資か ら回収する場合に比べ、排水から取り出せる量は限られておりコストが 高くつくことが導入のネックになっている」と指摘する。

物質・材料研究機構の原田幸明元素戦略クラスター長は「まとまっ た規模で廃棄される産業排水からのレアメタル回収のポテンシャルは 大きい」と指摘。その上で「今後全力を挙げてコスト面の課題をクリア すべきだ」と訴える。

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