社債市場:上半期1000億円超級の社債が続出、防衛的な調達

2009年上半期の国内社債市場では発 行額1000億円以上の大型起債が総額で過去最高を記録した。昨年秋以降 に広がった世界的な信用収縮の経験を機に、当面の資金需要を超えても 資金を確保しておこうという事業会社の自己防衛的な資金調達が目立っ た。

09年上半期の大型起債の総額は1兆6200億円と、これまでの最高 記録だった98年上半期の8000億円を大きく上回った。三菱UFJ証券 の諏訪一デット・シンジケーション室長は「これほど大型起債が集中する のは異例のことだ」と指摘する。

昨年秋以降の社債市場では、リーマン・ブラザーズ・ホールディン グスの破たんを端に発した世界的な金融危機の影響で、格付けが低いB BB格の社債発行の道が遮断されたほか、AA格のソニーの起債ですら 目標額を確保できなくするほど企業の資金調達は難しくなっていた。

日本銀行は今年に入って、企業金融支援策としてコマーシャルペー パー(CP)の積極的に買い入れを実施。CPの利回りが短期国債を下 回るなど、民間金利に対する低下圧力が異常なほど強まるなかで、社債 市場では4月から6月にかけて起債ラッシュを迎えた。

世界各国の協調的な景気刺激策を追い風に、投資家のリスク許容度 が昨年秋以降と比べ改善する中で、長期的な安定資金の確保の機会を狙 う企業からの起債が相次いだ。

歴史的な記録

三菱UFJ証の諏訪氏は「株安でリスク回避的な行動を取っていた 投資家が環境改善を受けて、高格付け債を中心に買い意欲が復活させて きた」と指摘。モルガン・スタンレー証券の大橋英敏クレジット・ストラ テジストは「社債など資本市場からの調達が可能な時期に自己防衛的に 前倒しの調達を実施した可能性がある」と言う。

発行額1000億円以上の起債(電力・ガス、銀行債除く)はトヨタ(3300 億円)、デンソー(1000億円)、パナソニック(4000億円)、トヨタファ イナンス(1000億円)、JT(1000億円)、サントリーホールディングス (1000億円)、NTT(1700億円)、ソニー(2200億円)、第一三共(1000 億円)の9銘柄。

トヨタ広報部の竹内利理子氏は6月12日のインタビューで、同社の 資金戦略について「不透明な経営環境の中、少しでも手元資金を厚くして 財務基盤を強化したい」と説明した。

当初の起債額予定の倍以上を発行したソニー広報センターの今田真 実氏は同9日、「社債発行の手取り金で、昨年12月に発行したコマーシ ャルペーパーを社債に置き換えるほか、10年3月満期の社債償還資金に も充てる予定」と述べた。

普通社債の発行総額も高水準

10年半ぶりに300億円を起債した日立建機の財務部担当者は、発行 の主な目的について、今年3月末で約3000億円ある借入金のうち、78% となっている短期負債の比率を下げるためと説明した。

ニッセイ基礎研究所の徳島勝幸主任研究員は、「おう盛な需要を引 っ張ってきたのは、利息収入狙いの地方の投資家や一部の中央の投資家 だった」と語る。

09年上半期の国内普通社債(SB)の発行総額(発行日ベース) は6兆1737億円、過去最高だった98年上半期の6兆9750億円に次ぐ 高水準になった。

ただ、BBB格の社債(法人向け債)は近畿日本鉄道債、南海電気 鉄道債の2銘柄計250億円と前年同期の9銘柄計1670億円から約85% と激減した。機関投資家の社債需要は、依然、AA格以上の高格付け社 債が中心で、低格付け債へ流れる投資家の資金額は高格付け債に比べ大 きな隔たりがある。

M&A資金確保の起債も

手元資金を維持しながらM&A(企業の合併・買収)資金を確保す ることを目的とした起債も目立った。24年ぶりに起債したTDKは独 エプコス買収資金の一部を借り換えに充てたほか、パナソニックは三洋 電機の買収資金の一部に充当する。

国内医薬品市場が成熟化する中、海外に活路を求める製薬会社では 塩野義製薬や第一三共が海外企業買収資金の借り換えを目的に社債を 発行した。

個人向けや銀行債の発行も相次ぐ

機関投資家に比べリスク許容度のある個人投資家向けの社債の発 行も相次いだ。09年上半期の個人向け債の発行総額は1兆1922億円で 08年通年の1兆464億円を上回った。三菱東京UFJ銀行が過去最大 の国内劣後債4500億円を発行したほか、三菱UFJ信託銀行も1000 億円を起債した。

銀行債の発行も総額2兆867億円と盛り上がった。世界的な金融機 関が資本増強に動く中、邦銀による劣後債の発行も相次ぎ、銀行債全体 のうち1兆2905億円を占めた。みずほコーポレート銀行(1200億円)、 中央三井信託銀行(500億円)、住友信託銀行(550億円)が劣後債を発 行した。

スプレッドは大幅に縮小

今年に入ってからの社債市場のもうひとつの特徴は、投資家の社債 に求めるスプレッド(金利の上乗せ幅)が大きく縮小したことだ。

トヨタ債の場合、2月起債(2000億円)のスプレッドが国債+65bp だったのが、6月12日の起債(700億円)は、国債+20bpと45bpも縮 小した。NTTが6月3日に起債した10年債(1000億円)のスプレッ ドは+15bpで、サブプライム問題が市場不安として噴出した07年8月 のBNPパリバ・ショック以前の水準に戻った。

ただ、ここからスプレッドが一段と縮小するという見方は少ない。 ニッセイの徳島氏は「投資家の需要のピークは過ぎた。起債ラッシュの 後半では一部の高格付けで売れ残りが見られた」と言い、スプレッドの 縮小傾向は終了したのではないかと語った。

下半期

7月以降についての社債市場はどうか。モルガン・スタンレー証の 大橋氏は、「設備投資の減額や配当や自社株買いなど資金の社外流出を 抑制することなどから、純現金収支の赤字を回避するような保守的な財 務戦略を採ることが予想される」と話す。また、有利子負債は徐々に減 少傾向にあると考え、発行額は抑制される可能性があるという。

--取材協力 鞠子和枝 Editors:Hidekiyo Sakihama Kazu Hirano

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