LIBOR「3-6カ月格差」が歴史的な高水準-ヘッジコスト割高に

円建てLIBOR(ロンドン銀行間 貸出金利)3カ月物と6カ月物との格差が歴史的な水準まで拡大してい る。中央銀行による積極的な流動性供給を受けて3カ月物までは緩和効 果が広がって金利が低下しているが、6カ月など長めの金利は下げ渋っ ているためだ。格差がさらに拡大することを警戒する見方も出ている。

円LIBOR3カ月物と6カ月物の格差は2日時点で24.625ベー シスポイント(bp、1bp=0.01%)と、1990年9月(25bp)以来約19 年ぶり高水準。1回程度の政策変更幅に相当する。当時の政策金利は 6%と金利水準自体が高く、現在の低金利でこれだけ格差が生じるのは 異例だ。

JPモルガン証券シニア債券ストラテジストの徳勝礼子氏は、「一 度増えた期間プレミアム(上乗せ金利)はなかなか解消しない。LIB OR全体は低下基調で、いずれ格差も収まるはずだが、30bpぐらいま で拡大するとなれば、ヘッジをしなおす必要も出てくる」という。

3カ月物と6カ月物の格差が拡大すると、6カ月物のLIBORで 社債発行による利払いをヘッジしている金融機関は、ヘッジコストが割 高になる。デリバティブ(金融派生商品)市場では、一段の格差拡大を 警戒して、3カ月物と6カ月物を交換する取引需要も高まっている。

緩和効果に限界

円LIBORは、世界的な金融危機を受けて大幅上昇した後、各国 中銀の金融緩和で低下したが、3カ月以内の金利と3カ月超の金利で低 下のスピードに差が生じている。金融危機を乗り越えた欧米のドルやユ ーロのLIBORでも同じ現象が見られる。

三井住友海上火災保険投資部の高野徳義グループ長は、「日銀の金 融調節の効果は3カ月物までが限界。6カ月物は外銀の決算にあたる年 末越えにもなり、当面は格差が縮小しづらい」とみている。

日銀は昨年末以降、3カ月物の資金を潤沢に供給してターム(期 日)物の低下を促しているが、量的緩和下に実施された1年近い長期供 給オペは見送っている。一方、欧州中央銀行(ECB)は初めて1年物 の資金供給オペを実施し、6カ月物のユーロLIBORを押し下げた。

ベーシス・スワップとサムライ債

LIBOR3カ月物と6カ月物の格差拡大基調を受けて、両者を交 換するデリバティブ商品、「3-6カ月LIBORベーシス・スワッ プ」の需要が増えている。3カ月物に上乗せして払う金利(スプレッ ド)が急上昇しており、6カ月物を受け取りたい需要の強さを示す。

みずほ銀行市場営業部の安西文博調査役は、「放置していたサムラ イ債(円建て外債)のヘッジをしなおす動きが増えた」という。

5年物のサムライ債を固定利息で発行する海外金融機関は、金利ス ワップで5年物の固定金利受け・6カ月物のLIBOR払いを行い、利 払いをLIBORに変換。金利変動リスクをヘッジする。さらに調達し た円をドルに転換し、3カ月物の円LIBOR受け・ドルLIBOR払 いの「ドル・円ベーシス・スワップ」を行い、最終利払いをドルLIB ORに転換する。その結果、円LIBORは6カ月物を払いながら、3 カ月物を受け取る形になり、両者の金利差がコストになる。

背景には円とドルで主に使うLIBORの期間が違う問題もあるが 過去10年間の3カ月物と6カ月物の格差は平均4bp程度で、コストと して意識されてこなかった。今後は「不完全なヘッジ」を放置すると、 コストに大きな差が生じてくる可能性もある。

正常化の動き

三井住友海上の高野氏は、「3-6カ月ベーシス・スワップ」のス プレッドの急上昇について、「ヘッジ取引の受け手がいない参加者の問 題で、LIBOR自体の格差はいずれ4-5bpに収れんされるとみて おり、時間をかけて低下するのではないか」と指摘。正常な水準に向け て取引の受け手も出てきているという。

JPモルガン証の徳勝氏も、「LIBORが今の格差を維持すると も思えない。5年物など長めのベーシス・スワップを取引して、縮小を 待つのが有効ではないか」という。

ベーシス・スワップ取引は、将来、変動する可能性のあるLIBO R同士を交換するため、期間が長い取引ほどスプレッドはゼロに近く、 短い取引ほど足元のLIBORの格差の影響を受ける。仮に格差が縮小 しなければ、スプレッドが低下する方向の取引は損失が膨らんでいくリ スクもある。

みずほ銀の安西氏は、「利上げが見込めるような状況になればスプ レッドは縮小する」という。当初、6カ月物の金利を払って3カ月物を 受け取ると金利差の損失が生じるが、3カ月後に受け取る3カ月物は上 昇している可能性があり、縮小を見込んだ取引が出てくるという。

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