日銀短観が示す設備・雇用の過剰、さらに深刻化も-300万人減説も

日本銀行が1日発表した企業短期経 済観測調査(短観)では景況感が持ち直した半面、設備や雇用の過剰 感はさらに強まった。企業は過剰感が緩和に転じると見込むが、設備 投資の抑制や人件費削減はさらに強まる恐れもある。市場では、日銀 の慎重な景気判断や債券利回りの低下基調は妥当だとの見方も出てい る。

クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは、今回の 短観で「景況感の改善をはやすか、水準の低さを嘆くか。後者が妥当 だ」と指摘。輸出・生産の持ち直しや在庫調整の進展、政府の景気刺 激策などを受けて景気が底打ちしても、稼働率がなお低いため、企業 は今後も設備投資の抑制と人件費の削減を実施せざるを得ないと予想。 年間80万-100万人の就業者減が今後3年程度続く可能性もあると話 した。

今回6月調査では、大企業・製造業の業況判断DIがマイナス48 と、過去最悪だった前回3月調査(マイナス58)から改善。大企業・ 非製造業も2ポイント上昇し、マイナス29となった。先行きはさらに 改善するとの回答だ。

ただ、生産・営業用設備判断DI(全規模・全産業)は、過剰感 が3月調査で11ポイント高まり19となった後、今回さらに21に悪化。 雇用人員判断DIも同様に、前回16ポイント上昇の20となった後、 過剰感が23に強まった。企業は先行きについては、設備・雇用とも過 剰感の緩和を予想した。

国内総生産(GDP)に近い概念とされる設備投資額(ソフトウ ェアを含み、土地投資を除く)は2009年度計画がマイナス12.7%。 3月調査から3.3%下方修正された。6月調査では例年、上方修正さ れる。昨年は08年度計画が3.5%で、修正率はプラス3.9%だった。

低い着地点、設備・雇用に重し

BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、猛烈な景 気悪化からは「戻りつつあるが、着地点は金融危機以前と比べ、かな り低くなる」と分析。企業経営者が抱く「期待成長率が低下し、設備 や雇用の過剰感が徐々に強まっていく」と見る。

5月の鉱工業生産指数は前月比5.9%上昇。ただ、けん引役は麻 生太郎首相の景気刺激策などを受けた耐久消費財の伸び。設備投資の 先行指標とされる資本財出荷(輸送機械を除く)は2.5%減。15.7% 減少した4月に続き、低下した。

バークレイズ・キャピタル証券の森田京平チーフエコノミストは、 資本財出荷は「非常に弱い。設備投資には暗雲が漂っている」と指摘。 景気刺激策の効果は「早ければ10-12月期、遅くとも来年1-3月期 には一巡してしまう」と予想。総選挙後に追加的な補正予算が組まれ ない場合、日本経済は「来年初にも正念場を迎えるだろう」と話した。

上積みは期待薄

設備や雇用の過不足感を左右する09年度の売上高計画(全規模・ 全産業)は9.5%減、経常利益はマイナス16.4%に下方修正された。 ただ、企業は売上高が上期の17%減から下期には1.4%減に持ち直す と予想。大企業・輸出企業は下期に増収に転じる計画だ。

大企業・製造業の想定為替レートは上期、下期とも1ドル=94円 台。三井住友銀行市場営業推進部の宇野大介チーフストラテジストは、 米国経済の二番底懸念を背景に円相場は秋以降「80円割れの円高に向 かう」と予想する。宇野氏は、日銀の慎重な景気判断や低い債券利回 り(価格は高い)は妥当だと述べた。

金融政策予想に敏感とされる2年物国債利回りは0.3%台。6月 29日には一時0.3%と、日銀が量的緩和政策を実施していた06年2月 以来の水準に低下した。ブルームバーグの調査によると、市場関係者 は年内は0.4%程度(中央値)で推移すると予測している。

日銀は6月16日の金融政策決定会合で情勢判断を上方修正した。 ただ、白川方明総裁は同日の記者会見で、4月の「経済・物価情勢の 展望」(展望リポート)で示した予測シナリオの上方修正ではないと強 調。景気の「底入れ」という表現を避けた。24日の挨拶でも、「悪化 テンポの鈍化ないしは下げ止まり」という言い回しにとどめた。

一方、政府は17日公表した6月の「月例経済報告」で、景気の基 調判断を上方修正。与謝野馨財務・金融・経済財政担当相は「明らか に1-3月期が底であったのではないか」と述べた。

雇用、300万人減も

5月の就業者数は過去最大の減少を記録。失業率は5.2%と2003 年9月以来の水準に達した。有効求人倍率は0.44倍と1963年の調査 開始以来の最低となった。1人当たり現金給与総額(従業員5人以上 の事業所)は12カ月連続で前年実績を下回った。第一生命経済研究所 は民間企業の1人当たりボーナス支給額が今夏、前年より7.3%減る と予測している。

クレディ・スイス証券の白川氏は「設備稼働率が2、3年以内に 75%程度まで回復する可能性は低い」ため、企業は「さらなる雇用削 減に取り組まざるを得ない」と指摘。団塊世代の退職に伴う採用の抑 制もあり、就業者数が今後3年間に最大で300万人程度減少すると予 想した。

Editor:Joji Mochida,Tetsuzo Ushiroyama

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