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【書評】バフェットやソロス氏らの賢人が住宅ブームに踊らない理由

1人の賢人はオマハからやっ てきた。「永久」に保有できる株式銘柄を求めて。もう1人はハン ガリーを逃れ、トレーディングで富を築いた。そしてもう1人の巨 人は、1970年代に米国を蹂躙(じゅうりん)したインフレの龍を 葬った。

ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロス、ポール・ボルカ ー3氏の見掛けは大きく異なっている。しかし、金融危機をめぐる チャールズ・R・モリス氏とアリサ・カッツ氏の新著「The Sages」(賢人たち)と「Our Lot」(アワ・ロット)によれば、 付和雷同しない性格と判断力は共通している。

2作品のアプローチは全く違う。モリス氏は3人の伝記を通じ て、金融の熱狂に浮かされず、超然とした態度を貫くには何が必要 なのかを示す。一方のカッツ氏は危機そのものを描き、数十年にわ たる米政府の社会政策が、いかに不安と貪欲をあおり、米国民を住 宅バブルへと追いやったかを描く。両書を並べて読むことで、危機 を回避し健全な未来を築く洞察力を養うことができる。

モリス氏は弁護士で元バンカー。前著「ザ・トリリオン・ダラ ー・メルトダウン(同:1兆ドルのメルトダウン)」のあるモリス 氏は今回の「ザ・セージズ」で、バフェット、ソロス、ボルカー3 氏がなぜ、トップクラスのエコノミストらが経済成長を予測してい る段階で危機の訪れを察知することができたのかを説明する。

プラトンの洞窟

バフェット氏とソロス氏は市場がしばしば間違うと想定するこ とによって富を築いた。ボルカー氏は金本位制崩壊など、機能不全 に陥った市場の後始末によってキャリアを築いた。「彼らは金融市 場と、理想的『市場』理論との関係が、プラトンの言う洞窟の中の 影と現実の関係と同じだということを理解していた」とモリス氏は 書いている。

モリス氏が紹介するエピソードにはソロス氏の自著やバフェッ ト氏の株主あて書簡でお馴染みのものも多いが、同氏は忘れられな い数行で彼らの真の姿を切り取ってみせる。

「ソロス氏は世界の肉食獣だ、流動化する経済の不調和な振動 を、猫科の動物の敏感さでかぎ取る」と同氏は書いている。危機が バンカーやエコノミスト、規制当局者の信頼を等しく失墜させた今、 「賢者たちの偉大さは今までよりもさらに際立っている」とし、 「そこには教訓が含まれ、世界がこれを学ぶことが望まれる」と同 氏は締めくくる。

「アワ・ロット」

カッツ氏の「アワ・ロット」は新鮮な議論を提起する。同氏は 数十年にわたる米政府の持ち家奨励政策が住宅熱をバブルへと膨ら ませた過程を描く。

故フーバー大統領からブッシュ前大統領まで、米政府は家族や 共同体の絆(きずな)を強化する手段として持ち家を奨励してきた とカッツ氏は論じる。「米国民の心理に染み込んだこの考えは、人 間の本能に埋め込まれたものではなく、組織的かつ入念な押し売り 的商法と一連の奨励策によって刷り込まれたものだ」と批判する。 ニューヨーク大学でジャーナリズムを教える同氏は、党派を問わず すべての政権に対して批判的だ。

同氏は政府が米国中に住宅ブームを広げた事例を描く。決して 払い切れない高級住宅へと次々に家を買い換えるアリゾナ州のメキ シコ生まれの大工や、フロリダ州でぱったりと家が売れなくなった 2005年10月について、「誰かが水道の蛇口を閉めたようだっ た」と形容する人物らが紹介されている。さらに返済できないと分 かっているローンを貧困層に売りつける業者や不動産取引を通して マネーロンダリングする麻薬密売業者などの闇の部分も描かれる。

同氏は最後の方でニューヨーク市の住宅コストの高さを嘆く。 アッパーイーストサイドの家賃統制アパートで育った同氏は、「2 寝室のアパートが月数百ドルで借りられたものだ」と振り返る。一 部の優遇された人間にとってだけだが、良い時代だったことは確か だ。(ジェームズ・プレスリー)

(ジェームズ・プレスリー氏はブルームバーグ・ニュースの 書評家です。この評論の内容は同氏自身の見解です)

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