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【コラム】「貸し渋り」バンカーは「豚」よりずっと怖い-Wペセック

私はマレーシアの格安航空会社、 エアアジアの創業者であるトニー・フェルナンデス最高経営責任者 (CEO)のファンだ。地域が発展するためには同氏のような起業家 がもっと必要なので、同氏には是非、成功してもらいたいと思ってい る。

なので、同氏の最近の発言を聞いてちょっと悲しくなった。同氏 によると、銀行から金を借りるのは依然としてひどく難しいらしい。 同氏の言葉は恐らく、世界のリセッション(景気後退)が長引きそう な理由を他の何よりも的確に説明している。

ヘッジファンド運用者のジョージ・ソロス氏が言うように、金融 危機の最悪期は過ぎたかもしれない。しかし、リセッションは別だ。 相場が下げ止まっても、富が失われたことの影響はまだ、実体経済に じわじわと広がりつつある。これはまだしばらく続く見込みだ。

今日の不確実性の最前線に立っているフェルナンデス氏に聞けば 分かる。東南アジア最大の格安航空会社を率いる同氏は今月、パリ航 空ショーで「SARS(重症急性呼吸器症候群)、鳥インフルエンザ、 津波とひどいことがいろいろあったが、本当に『豚』のように怖いの はバンカーだけだ」と語った。同氏はこの発言は冗談だと述べたが、 そこには大きな真実が含まれている。

新型のいわゆる「豚インフルエンザ」をめぐる大騒ぎにもかかわ らず、世界の産業界への最大のリスクは貸し渋りだ。エアアジアの場 合、航空機を買うための資金を銀行が貸してくれない。不況期に企業 が事業拡大できなければ、さらに雇用が失われ、成長への回帰は一段 と遠のく。

逆張り

確かに、多くの企業が事業縮小している時期に拡大を目指すエア アジアは逆張りといえる。いつか需要が回復する日に備えて航空機や 路線を増やそうとするフェルナンデス氏の野心に疑問を抱くバンカー らにも一理はある。

リスクは多い。原油相場が急騰すれば打撃だし、世界経済が日本 型の失われた10年を経験する恐れもある。そうなれば、フェルナン デス氏が買うエアバス機で採算を取るのは難しくなるだろう。実際に 新型インフルエンザ流行が悪化するリスクもある。

それにしても、銀行の貸し渋りに不満を抱いているのはフェルナ ンデス氏だけではない。政府に救済された後も融資を増やそうとしな い銀行には、政治家たちも苦言を呈するだろう。世界の信用システム の機能低下という、より大きな懸念にもつながる。

流動性のわな

現在のところ、世界の中央銀行が金融市場の注ぎ込んでいる大量 の金は、意図した効果を表しそうもない。流動性のわなに陥り、貨幣 政策が力を失っている。バンカーにも問題はあるが、市場の機能を低 下させたもともとの問題の解決が急務だ。市場機能が回復すれば、フ ェルナデス氏のような起業家がアジア経済を発展させることができる。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラ ムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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