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【映画評】「南京大虐殺」の日本兵の心のひだ描く「南京!南京!」

旧日本軍による「南京大虐殺」を 描いた中国映画「南京!南京!」のテーマを一言で言えば、同作品に 登場する日本兵、角川が語った「生きることは死ぬより難しい」だろ う。

角川は、ナチス党員ジョン・ラーベが組織した南京安全区に逃れ た中国人25万人が直面した恐怖を目の当たりにする。陸川監督のこの 作品は、1937年から38年にかけての冬の南京が舞台。中国政府は30 万人が虐殺されたと主張するが、日本側の認識は異なっており、両国 間の摩擦の種となっている。

陸監督のこの作品の特徴は、日本兵の心情を理解する描き方をし た点にあるだろう。日本人俳優の中泉英雄演じる角川は、恐怖の高ま りのなかで、人間性をのぞかせるようになる。

旧日本軍による南京爆撃で始まるこの白黒映画は、しばらくは通 常の戦争映画に近い場面構成だが、そのうち日本兵による捕虜の大量 殺りくや建物に火を放つシーンが次々と展開される。「南京!南京!」 制作に携わったイザベル・グラシャン氏によると、中国政府でさえも 描写が過激だとして女性への暴行や殺害シーンをカットするよう検閲 がかかったという。

この暗い歴史映画を2時間18分も座って鑑賞する理由の1つは、 中泉の演技だ。謎めいた雰囲気をうまく漂わせることで、観客は角川 の運命に思いをはせることになる。まず殺人者として描かれる角川は やがて、いわゆる従軍慰安婦の百合子を愛するようになる。その後、 百合子そっくりの中国人慰安婦の死体がごみのように手押し車で運 び去られるシーンを角川は目撃する。

角川の心情を同情的に描いたこの作品は中国で物議を醸した。中 国から見て侵略者だった日本兵を陸監督がこのようにとらえたのは、 戦争の複雑性をテーマとした「愛を読む人」など、最近の西欧映画の 傾向に偶然一致しているのかもしれない。

「南京!南京!」は中国で封切り後の10日間で1日当たり30万 -50万人の観客を動員した。グラシャン氏によれば、興行収入はすで に1億7000万元(約24億円)と、今年これまでの中国映画界で最高。 国外では9月に封切られる。

この映画の評価: ***

星の数の意味:
****          素晴らしい
***           良い
**            平均的
*             いまひとつ
星なし        鑑賞する価値なし

(デューン・ローレンス)

(デューン・ローレンス氏は、ブルームバーグ・ニュースの評論家 です。この映画評の内容は同氏自身の見解です)

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