コンテンツにスキップする

【経済コラム】中国版「1984」、ポルノ規制が行き着く世界-ペセック

【コラムニスト:William Pesek】

6月22日(ブルームバーグ):「グリーン・ダムユース・エスコー ト」-。この不自然なネーミングの中国政府のプログラムは、環境関 連事業でも、水の流れを遮断するダムでもなく、未成年の啓蒙活動で も、あなたと付き合う女性の募集でもない。中国政府の当局者が、あ ってはならない場所に経済のバリケードをつくろうとしているという 話だ。

これは、国内で販売されるすべてのパソコン(PC)にいわゆる 「アンチポルノ・ソフト」搭載を義務付ける中国当局の規制にかかわ る用語だ。「いわゆる」と言ったのは、ポルノよりもむしろ情報の流 れを統制する狙いがあるためだ。つまり、国家が人々に知らせたくな い事柄へのアクセスの制限が意図されている。

インターネットを監視する当局の慣行をモニターしている「オー プンネット・イニシアチブ」が先週公表した報告書によれば、アジア 各国政府の間でネット規制の動きが加速し、多くの国が新世代のウェ ブ規制に移行しつつある。情報統制と同じ効果が得られる手段として、 国家が仮想空間に積極的に関与する新たな傾向が浮き彫りになってい る。

ジョージ・オーウェルの世界

何が起ころうと、この話は中国が抱える大きな問題がネットポル ノなどではなく、作家ジョージ・オーウェルが警告していた問題であ ることを連想させる。

近未来の管理社会の恐怖を描いた小説「1984年」は、オーウェル が亡くなる1年前の1949年に出版された。オーウェルはこのなかで、 「ビッグ・ブラザー(偉大な兄弟)」や「思想犯罪」、「ニュースピ ーク(新語法)」といった言葉を日常語として駆使し、ネットが向か う世界を見抜いていたかのような洞察を無意識のうちに提供している。

中国のアンチポルノ・ソフト計画は激しい抗議を引き起こしてい るが、これは世界有数の高い成長を誇る経済大国、中国への戒めだ。 米商業会議所と他の18のビジネス団体は中国政府に書簡を送り、予想 し得る最悪の時期に中国経済を冷え込ませる悪影響を警告した。

このソフトは、国家のスパイウエアとして働くように改造できる かもしれない。あらゆるネット検索とキーボードのタッチすら記録さ れ、どこかに保存される。中国経済に関して意見を交換する投資家や、 中国の国内総生産(GDP)統計が正確かどうかについて共同調査を 行うエコノミストはどうなるのだろう。社会通念やプロパガンダに疑 いを抱く傾向が弱まるかもしれない。

一方、ハイテク企業は中国で事業展開する際、これを倫理的ジレ ンマではなく、金もうけの手段とみる傾向がある。米グーグルやヤフ ー、マイクロソフトはここ数年、中国のルールに事業戦略を適応させ た。米シスコシステムズなどの企業に至っては、中国の思想警察を助 けるフィルタリング機器を販売しているほどだ。

ネットが中国を変えるか?

中国当局に屈服してきたハイテク業界のこれまでの歴史は今後も 変わりそうにない。このシナリオは、ネットが中国を変えるのか、中 国がネットを変えるのかという質問に答えるのに役に立つ。仮想空間 が中国の対外開放に役立っていないというわけではない。政府当局者 らは、いわゆるネット市民に後れを取っている。米紙ニューヨーク・ タイムズによれば、北京市当局は例えば、仮想空間の監視要員として 1万人のボランティアを夏の終わりまでに採用したい意向だ。

天安門事件から20年目の今年6月4日、ソーシャル・ネットワー キング・サービス(SNS)「トゥイッター」の利用をブロックした 中国当局は愚かに映った。しかし、イランの大統領選後の抗議行動で SNSが果たした役割を考えた場合、イラン政府当局者らは同じ規制 を実施しなかったことを悔やんでいる可能性が高い。

テロリストを支援しているとみられるサイトやポルノへのアクセ スを制限する政府の意図は適切だ。しかし、それは危険な道であり、 行き過ぎや経済に打撃を与える検閲という現実のリスクが存在する。 度が過ぎれば、アジアの行き着く先は紛れもなく、オーウェルの世界 ということになるだろう。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラ ムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE