ドル安招く新興国と「印刷機への懲罰」、約1年後87円へ-野村証券

野村証券の田中泰輔外国為替スト ラテジストは、約1年後に1ドル=87円まで円高・ドル安が進むと見 ている。中国やインドが世界経済の回復を主導するとの観測や米財政赤 字の拡大、連邦準備制度理事会(FRB)による金融緩和が背景だ。

田中氏は、3月以降のドル安をもたらした「世界的な景気底入れ期 待に基づくリスク資産選好」と、金融緩和の度合いが著しい通貨を売る 「紙幣の印刷機に対する懲罰」は今後も続くと述べた。対円では来年3 月末に90円、6月末には87円まで下落すると予想。米景気回復を受 けてFRBが金融緩和の早期縮小に動けば、米株式・債券市場への資金 流入が細り、ドルが危機的に下落する恐れもあると語った。

主要6通貨に対するドルの実効相場(インターコンチネンタル取引 所、ICE)は22日に79.81と、昨年末以来の安値をつけた。ドル は対円では同日、約3カ月ぶりに93円86銭に下落。28日午前9時 30分時点では95円72銭。

世界的な景気後退に対し4兆元規模の景気刺激策を実施している中 国では、1-4月の都市部固定資産投資が前年同期比30.5%増加。4 月の精錬銅輸入は過去最高に達した。米国の対中輸出は1月を底に急回 復。米供給管理協会(ISM)の製造業景気指数や非農業部門の雇用者 数も持ち直しに転じている。

日本では、1-3月期の実質国内総生産(GDP)が前期比年率

15.2%減と戦後最悪を記録したが、政府は5月の月例経済報告で景気 の基調判断を3年3カ月ぶりに上方修正。「悪化のテンポが緩やかにな っている」とした。先行きに関しても、中国景気の持ち直しなどを念頭 に「対外経済環境における改善の動き」に言及した。

資金流出、供給過剰

田中氏は、金融機関や投資家が「決済に必要なドルを過剰に抱え込 む金融危機の最悪期を脱し、世界経済が持ち直しに転じるとの期待が高 まってきた」と指摘。ドルから「成長余力が大きい新興国の株式や商品 市場への資金流出が拡大した」と話した。

「印刷機への懲罰」もドル安要因になりつつあると分析。FRBが 実施した前例のない金融緩和策は、狙い通りに金融システム不安が後退 すれば、ドルの供給過剰という問題を引き起こすと指摘した。

FRBがバランスシート(貸借対照表)に保有する総資産は、昨夏 までの9000億ドル前後から足元で約2兆2000億ドルに拡大。米国の マネーサプライ(M2)は11日、4週移動平均の前週比で16.3%増 加した。4月28日-29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事 録によると、同会合では1兆7500億ドル規模の資産購入計画を拡大す る必要性について議論した。

米国債格下げ-「甚だ疑問」

田中氏は、米国債の格下げ観測に関しては「現実的には甚だ疑問 だ」と述べた。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)取引によ ると、米国債が向こう5年間に債務不履行(デフォルト)に陥るリスク に備える保証料を示すCDSスプレッドは27日、44.255bpと約1カ 月ぶりの水準に達した。米国債1000万ドルに対し、4万4255ドルの 保証料を意味する。2月24日には過去最悪の100bpをつけた。

景気の底入れ・持ち直しは「現時点では、あくまで期待に過ぎな い」と強調。リスク資産価格の上昇が先行し過ぎれば、1-2カ月のう ちに調整局面を迎える可能性もあると指摘した。野村証券は、米国経済 は金融危機を脱した後も緩やかな回復にとどまると予想。2010年の実 質GDP成長率を1.9%と見ている。

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