日本の企業年金に「コモディティ」投資の動き-運用利回りの安定求め

厚生年金などの公的年金に上乗せ する形で企業が社員に準備する企業年金に、商品(コモディティ)に投 資する動きが出始めている。金融危機や景気後退で株価が低迷、運用利 回りの安定のためにリスク分散の必要性が高まっていることが背景だ。 こうした動きが今後広がる可能性を指摘する声もある。

J.フロントリテイリング傘下の大手百貨店、大丸の大丸企業年金 基金は、昨年9月のリーマンショック以降、原油や金、穀物などに投資 を開始。岩崎学常務理事によると、運用資産全体に占める割合を現在の 5%程度から今後10%程度に引き上げる。

2007年度に商品投資を開始した全国卸商業団地厚生年金基金は運 用額の5%を割り当てているが、浅田浩之資産管理課長によると、 「09年度末には増額を検討する」という。西日本電設資材卸業厚生年 金基金(大阪市中央区)の橋爪孝雄常務理事は、昨年は運用資産600 億円のうち「初めて一部をコモディティに振り向けた」ことを明らかに した。

企業年金は従来、国債や株式といった「伝統的資産」の運用がほと んどだった。11兆7000億円(08年3月末時点)の資産残高を持つ企 業年金連合会の会員企業のうち1088社の08年3月末の資産構成は、 債券38.0%、株式39.7%で、コモディティはわずか0.14%。

しかし、民間シンクタンク、大和総研の推定によると、この1088 社の08年度の運用成績はマイナス17%と、集計を開始した1986年以 来最低のパフォーマンスにとどまった。成績悪化は金融危機に伴う国内 外株の大幅下落などが原因だ。

株や債券だけに頼らない

米最大の公的年金基金であるカリフォルニア州職員退職年金基金 (カルパース)を参考に、07年に厚生年金基金として初めて商品を対 象にした資産運用規約を作った大阪府病院厚生年金基金の藤岡博憲常務 理事は、「株や債券だけに頼る伝統的な資産運用では企業の求める利回 りは得られない」と語る。

06年5月から足元までの3年間の株価と商品の値動きを比較する と、日経平均株価は4割以上下落、外国株(MSCI国際インデック ス)も約3割下落と、ともに大幅に値下がりした一方、商品(UBSブ ルームバーグ・コンスタント・マチュリティ商品指数)の下落幅は約 9%にとどまっている。

大和総研の岩田豊一郎シニアアナリストは、「景気悪化を受けて経 営状態が厳しい中、掛け金を増やせず基金の不足は埋められない。逃げ 道のない状況では、リスク資産を増やさざるを得ない」として、財政基 盤が相対的に弱い中小企業の年金基金ほど今後、商品投資を増やす傾向 が強いとみている。岩田氏は、こうした動きが「大手企業の一部にも出 てくる可能性はある」ともいう。

大阪府病院厚生年金基金の藤岡氏は、「年金基金ができたのは債券 利回りが5.5%を下回ることはない時代。現在は、国内債券の利回りが 1%台で、株式の運用利回りが7%程度」と指摘。株式だけに投資する わけにもいかないため、「リスクを取りながら新しい資産をどのように 組み入れていくかが一番のポイントだ」と話している。

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