米クライスラー、破産法適用申請-伊フィアットとの提携で再建へ

米自動車大手のクライスラーは 30日、ニューヨーク市の裁判所に連邦破産法11条に基づく会社更生 手続きの適用を申請した。イタリアのフィアットとの提携を含む再編 を通じ、事業を簡素化し、債務を圧縮することが狙い。

クライスラーは破産申請を回避し、追加の政府支援を受けるため、 米政府が設定した期限である4月30日までにリストラ計画をまとめ ようと各方面と交渉。同社はフィアットとの提携や有担保ローンの69 億ドル圧縮、医療保険基金への支払い義務の106億ドル削減を模索し た。しかし、一部債権者が22億5000万ドルへの債務軽減を拒否し たことから、破産法の適用申請に至った。

クライスラーと米政府は更生手続きを通じて、「ジープ」や「ダ ッジ・ラム」など優良ブランドで新会社を設立し、現在抱える費用と 債務からの負担回避を図っている。新生クライスラーはフィアットの 小型車技術をテコに、オバマ大統領が主張する「復活」を目指す。

シートン・ホール大学法学部のスティーブン・ルーベン教授は 「破産申請で事業を必要な規模に早急に縮小することができ、クライ スラーにとっては利点が多い。フィアットは事業再建を心得ている」 と述べた。

破産法の適用申請に不透明感

破産法の適用申請には不透明感や遅延のリスクもある。関係者に よると、債務軽減に反対した債権団は再建計画を支持しない構えだ。 その場合、オバマ政権が想定している「応急処置」的な破産の目算が 狂う恐れがある。政府は同社を存続可能な状態にして早急に市場に出 すことを目指している。

クライスラーがこの日、ニューヨークの連邦破産裁判所に提出し た文書によると、同社の従業員は約5万4000人。資産と負債はそれ ぞれ10億ドルを超えている。シティグループやJPモルガン・チェ ース、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス・グループな どの銀行団が有する債権は工場や不動産などを担保にした69億ドル。

クライスラーの無担保債務では、オハイオ・モジュールMFGが 7000万ドルと最大の債権者。BBDOデトロイトも5810万ドルの 債権を保有している。

政府融資

カナダ政府がこの日、電子メールで発表したところによると、同 国と米国の政府はクライスラーに合わせて105億ドルを融資する。そ のうち80億8000万ドルを融資する米政府はクライスラー株の8% を受け取り、24億2000万ドルを出資するカナダ連邦政府とオンタ リオ州政府が合わせて2%の株式を受け取る。

再生の過程に政府を巻き込むことはクライスラーに有利に働くと の声がある。法律事務所デベボイズ・アンド・プリンプトンの企業破 産担当グループの共同責任者、リチャード・ハーン氏は「財務長官が 裁判所に特定の結果が長官自身と国家にとって重要であると主張すれ ば、判事が反対するのは難しいだろう」と話す。

ハーン氏はさらに、政府は既存の法律を変更することにより、伝 統的な事業慣行を変える力も持っていると指摘する。

クライスラーの破産申請は同業ゼネラル・モーターズ(GM)の ひな型になる可能性がある。政府が追加融資のために設定したGMの コストおよび債務の削減計画の期日は6月1日。同社は存続可能な自 動車メーカーに変身するため、「シボレー」や「キャデラック」など 利益を上げているブランドに経営資源を集約して営業を継続する計画 だ。

クライスラーは1月に40億ドルの融資を受け、コストと債務の 削減が十分だと認められれば、60億ドルの追加融資が約束されてい た。

創業1925年

同社は1925年にウォルター・クライスラーが創設。30年代に は高技術を誇る自動車メーカーとなり、その後に「クライスラー」や 「ダッジ」、「ジープ」にブランドを絞り込んだ。

79年には米政府が破たん回避に向けて15億ドルのローン保証を 提供。80年代にはリー・アイアコッカ氏が積極的な広告キャンペー ンを展開、ミニバンの先駆的投入などで黒字回復を果たした。

しかし、2006年には米国の販売台数でトヨタ自動車に抜かれた。 当時、アジア勢のシェアは42%まで拡大していた。

08年以降、米国の自動車メーカーは原油高とリセッション(景 気後退)への対応で苦戦している。売り上げの70%超を燃費効率の低 いライトトラックに依存するクライスラーは、ガソリン価格が1ガロ ン=4ドルを超えた昨夏以降は他社よりさらに苦しい立場に置かれ、 金融危機で業績はさらに悪化した。現在はプライベート・エクイティ (PE、未公開株)投資会社、サーベラス・キャピタル・マネジメン トが同社の経営権を握っている。

フィアットとの提携

破産申請前の協議では、クライスラーはフィアットの技術を使用し たクライスラー車と、フィアット車の両方をクライスラーの北米ディー ラー網を通じて販売する計画だった。フィアットは海外で販売する製品 にクライスラーの技術を使用するほか、海外のディーラー網を通じてク ライスラー車を販売することを計画していた。クライスラーの試算によ ると、フィアットの技術力は80-100億ドルに相当する。

クライスラー・フィアット連合の目標は自動車販売で、米フォー ド・モーターに次ぐ、世界第6位の自動車メーカーを創設することだっ た。事情に詳しい複数の関係者によれば、クライスラーは米政府が創設 する新会社に資産を売却することにより、可能な限り、当初目標に近い 提携効果を目指す。

株主

フィアットや全米自動車労組(UAW)の退職者向け医療保険基金、 クライスラーの有担保債権団、米財務省がそれぞれ債権放棄や出資によ り、新生クライスラーの株主となる。少数株主である独ダイムラーは持 ち株をサーベラスに譲渡。クライスラー向け債権15億ドルを放棄する ことで合意していた。

フィアットはクライスラー株の20%を保有する。さらに、3つの 目標を達成すれば、35%まで引き上げられる可能性がある。目標は、 クライスラー車の海外販売、1ガロン当たり40マイル走行する車種の 米国での開発、燃費効率の良い新エンジンの米工場での生産。

オバマ政権の当局者によると、労組の医療保険基金が株式の55% を保有する。債権団は69億ドルのローンを放棄する代わりに、20億 ドルを受け取る提案を受け入れるかどうかで意見が割れた。ローン価値 の30%を握る債権者が提案を拒否。複数の関係者によると、同債権者 は債務とコストが削減された新会社への移行計画に反対する考えだ。

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