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【コラム】英国を「失われた10年」に向かわせる3つの誤り-Mリン

ダーリング英財務相は、英経済に 関して少しでも明るいニュースが欲しいと考えていることだろう。

しかし、楽観できる理由はほとんどない。過去1年に英政府が競 争抑制という1930年代と同じ過ちを繰り返したことによって、英経済 はぼろぼろになった。おかげで財政にはブラックホールが開き、これ を埋めるには10年以上かかるだろう。しかも、社会主義金融システム を創造したことによって、政府は大量の国営企業を抱えてしまった。

英国は次第に、低成長をシステムに内在するフランスのようにな ってきた。雇用創造への動機付けも働かず、起業家が新産業を生み出 すのに必要な豊かな大地もない。

英経済が過去20年のような成長軌道に戻るのは次の世代になっ てからかもしれない。

今目の前にある危機の最悪期が過ぎつつある兆候はある。住宅価 格は緩やかに回復し始めている可能性がある。英不動産ウェブサイト、 ライトムーブによれば、4月の住宅売り出し価格は前月比1.8%上昇 した。また、2月の住宅ローン承認件数は19%増だった。

6月からイングランド銀行(英中央銀行)の金融政策委員会(M PC)に加わるモルガン・スタンレーの英国担当チーフエコノミスト、 デービッド・マイルズ氏は先週、英紙ウエスタン・メールへの寄稿で、 英国が近くリセッション(景気後退)を脱するとの見方を示した。

財務省と同じ経済予測モデルを使用したアーンスト・アンド・ヤ ング・アイテム・クラブの予想も、2010年の成長率がマイナス0.1% と、09年予想のマイナス3.5%から改善すると見込んでいる。実際、 来年の今ごろにはリセッションは終わっているだろう。0.5%の政策金 利と巨額財政赤字、ポンド相場急落という政策の組み合わせは、英経 済を恐慌から救うのには十分だったようだ。

低成長

しかし、リセッションを理論的に脱することと力強い成長軌道に 戻ることは全く別だ。これについては、見通しははるかに暗い。次の 3つの理由で、英経済は次世代まで低成長が続くと思われる。

その1:財政。英国最大の経営者団体である英産業連盟(CBI) によると、英財政赤字は国内総生産(GDP)の11.2%に達する見込 みだ。債券市場と外為市場が持ちこたえられるだろうか。安心しきっ てはいられないだろう。持ちこたえたとしても、借金はいつか返さな ければならない。財政を黒字に戻すため、今後何年もの間、支出抑制・ 増税の時代が続くだろう。これは成長の足かせになる。景気拡大のた びに、政府は税金の形で富を取り込まなければならないだろう。

その2:金融サービス業界の社会主義化。ロイヤル・バンク・オ ブ・スコットランド・グループ(RBS)は政府が過半数株を持ち、 ロイズ・バンキング・グループも政府が筆頭株主だ。銀行システムの 半分を国有化してしまったのは主要国の中で英国だけだ。

出口が見えない

問題は、イラク戦争と同様に出口戦略が見えないことだ。これら の銀行が少なくとも2回の景気サイクルを乗り切るまでは、どの政権 も再民営化の勇気は持たないだろう。民営化した銀行がその後に破た んしたのでは、政権はもたない。従って、2行は少なくとも10年は国 営銀行であり続けるだろう。そのころには、公務員体質に染まって、 民間投資家が見向きもしない銀行になっているかもしれない。

その3:競争抑制。政府は競争というものを、景気後退期には不 要なぜいたく品だと考えている。ロイズによるHBOS買収を容認し たことからもよく分かる。ウォーウィック大学の経済学教授、ニコラ ス・クラフツ氏によれば、英政府は30年代の大恐慌への対応でも競争 抑制策をとった。その結果、50年代と60年代の景気は極めて弱かっ た。政府は今日、明らかに同じ間違いを犯している。

英経済はフランス経済になりつつある。重い税負担と政府が主役 の経済、自由な市場ではなく国家計画が資源を配分するシステム。楽 しい見通しではない。年1%超の経済成長が達成できなければ、失業 は増え続ける。社会福祉のコストが膨れ上がり、財政は悪化の一途を たどるだろう。起業を促すのに十分な需要はなく、英国はすぐに、低 成長のわなに陥ることになろう。

真剣かつ冷静に取り組めば、英国は今回のリセッションから比較 的早期に抜け出すことができただろう。しかし今では、10年あるいは それ以上が「失われる」運命にある。 (マシュー・リン)

(リン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 こ のコラムの内容は同氏自身の見解です)

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