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「日銀展望サーベイ」GDP、コアCPI、経済・物価コメント

日本銀行は30日に経済・物価 情勢の展望(展望リポート)を公表し、2010年度までの経済・物価 情勢の見通しと、実質GDP(国内総生産)成長率と消費者物価指数 (除く生鮮食品、コアCPI)前年比の予測を示す。ブルームバー グ・ニュースはエコノミスト16人に「自らが予測する」数値と経 済・物価情勢、金融政策の展望を聞いた(氏名50音順)。エコノミ スト予想のまとめ記事は「『日銀展望サーベイ』在庫調整と財政で景 気は一時浮揚-再び失速も」をご覧ください。

●三菱UFJ証券の石井純チーフ債券ストラテジスト 2008年度「実質GDP:▲3.1%、コアCPI:+1.2%」 2009年度「実質GDP:▲5.0%、コアCPI:▲1.4%」 2010年度「実質GDP:+0.3%、コアCPI:▲0.4%」

日銀は足元から当面の経済動向については、1月中間評価より厳 しい見方を示す。今月7日会合の結果公表文で既に「国内民間需要は さらに弱まっていくとみられるため、わが国の景気は当面、悪化を続 ける可能性が高い」と言明している。先行きについては「09年度後 半以降、わが国経済も持ち直しに向かう」という見通しを維持する。

当該公表分で「内外の在庫調整の進ちょくを背景に、輸出・生産 の減少テンポは緩やかになっていく」と指摘している。経済危機対策 の効果も考慮する。ただし、金融と実体経済の負の相乗作用のリスク が根強いため、不確実性が引き続き高い。

政策委員の見通し(中央値)は、09年度の実質GDPが中間評 価で示された▲2.0%から▲3%台半ばに下方修正される。▲5~▲ 4%程度もあり得たが、大規模な「経済危機対策」の景気押し上げ効 果(=政府によれば向こう2年間で+2%ポイント)がある。10年 度については中間評価の+1.5%から+1%程度へ下方修正されよう。

GDP見通しの大幅な下方修正に対し、コアCPIは中間評価 から修正しても小幅にとどまる。1月時点と比較した物価環境はプラ ス要因(原油高、円安など)とマイナス要因(デフレギャップの急拡 大ほか)が交錯しているため。

●大和証券SMBCの岩下真理チーフマーケットエコノミスト 2008年度「実質GDP:▲3.0%、コアCPI:+1.2%」 2009年度「実質GDP:▲3.5%、コアCPI:▲1.2%」 2010年度「実質GDP:+1.2%、コアCPI:▲0.8%」

米国では幾つかの指標で明るい兆しが見られ、景気対策の効果 も期待されることから最悪期を脱しつつある。しかし、金融問題の根 深さや企業活動の弱まり、外需の弱さなどを見ると、持ち直し後の力 強い回復は想定できない。先進国、新興国とも需要の本格回復には距 離が遠いとみられ、急降下した経済活動の伸び率がいったん戻しても、 水準は元に戻らず、再び減速する可能性の方が大きいように思われる。

日銀は7日の会合後の声明文で「今後は、内外の在庫調整の進 ちょくを背景に、輸出・生産の減少テンポは緩やかになっていくと予 想されるが、国内民間需要はさらに弱まっていくとみられるため、景 気は当面悪化を続ける可能性は高い」との景気判断を示した。前者の 輸出・生産の減少テンポの緩やかになるよりも、後者の内需の弱まり が上回るとみている点が、日銀からの重要なメッセージだろう。

10日に政府の追加経済対策が正式発表されたが、公共投資によ る直接的な需要創出は成長押し上げ効果を発揮するだろう。一方で、 今後の所得減少や雇用調整の進展が見込まれる中、エコ家電やエコカ ーの購入促進策等では期待通りにいかない可能性もある。従って、生 産・所得・支出の逆回転を完全に止めることはできず、金融と経済の 負の相乗作用への警戒を解くことはできない。

春先に一時的にマインド先行で底をつけ、夏場にかけては国内 外での在庫復元で上昇、秋以降は経済対策の効果で一時的に高い成長 となることが見込まれても、その後の需要が伴わなければ、「W字型 (次の下りへ)」という状態が訪れるだろう。中長期的には、経済の 「Wの悲劇」に備えるべきと考える。このような状況下、日銀は慎重 な景気判断を示すだろう。

標準シナリオである年度下期の回復シナリオは、いったん戻す という形で残ると思われるが、回復軌道には乗らず再び減速する可能 性があることを踏まえ、先行きの下振れリスクが高い点を強調する可 能性もあろう。潜在成長率は1%程度、もしくは1%台前半を示すと ともに、幅を持ってみる必要がある点が記述されるのではないか。

日銀政策委員の実質GDP予測中央値は、経済対策の効果や潜在 成長率の考え方で異なってくることから、今回の予想レンジは広がる とみている。1月の中間評価時よりも下方修正となるが、09年度は ▲3%台後半~▲4%前後、10年度は+1%~+1%台前半に収れ んしよう。コアCPIも中間評価時よりも下方修正され、09年度は ▲1%台前半、10年度は▲0%台後半を予想する。

●みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト 2008年度「実質GDP:▲2.9%、コアCPI:+1.2%」 2009年度「実質GDP:▲5.1%、コアCPI:▲1.0%」 2010年度「実質GDP:+1.0%、コアCPI:▲0.5%」

国内景気は深い後退局面に陥っている。モノとマネーの両面でグ ローバリゼーションが進展した結果、世界経済はリンクが強まってお り、中心にあった米国経済が急激に落ち込んだことから、「ドミノ倒 し」的に日本や欧州、さらには新興国の経済が輸出急減ショックに見 舞われて悪化した。

今後は輸出の落ち込み度合いが徐々に軽くなる一方で、需要の 「床が抜けた」ことへの対応として、すなわち需要のかなりの程度不 可逆的な大幅下方シフトに合わせる形で、「供給のダウンサイジン グ」が進展する局面が進んでいく。生産設備や雇用人員、さらには会 社の数自体が過剰になっており、設備投資や個人消費といった国内需 要の一層の悪化、企業淘汰の流れが加速しやすい。

今回の米国景気悪化は「構造不況」の色彩が濃いだけに、在庫調 整が一巡した後の鉱工業生産の上向きについては過大評価は禁物。テ クニカルな景気のボトム認定と、内外需要の強さに裏付けられた持続 的景気回復とを明確に区別する必要が大と考えている。また、米国の 景気回復力は弱い。従って、世界経済の回復力も弱い。

早ければ2010年後半に景気は回復局面という見方が定着するだ ろうが、その「力強さ」と「持続性」に疑問符が付く低空飛行が続く だろう。日銀は09年度後半からの条件付き景気回復シナリオを今回 取り下げざるを得ないとみている。1月中間評価で下振れし、さらに 3月短観の結果などから足元でもっと下振れているとしてきた以上、 従来の景気回復シナリオにこだわり続けるのは困難だ。

「2010年度入り後に」といった回復時期を予想しつつ、不確実 性の高さを従来通り強調してくるだろう。なお、政策委員見通し(中 央値)は実質GDPが09年度▲5%、10年度+1%、CPIコア が09年度▲1%、10年度▲0.5%前後の数字とみている。

●東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト 2008年度「実質GDP:▲2.9%、コアCPI:+1.2%」 2009年度「実質GDP:▲4.2%、コアCPI:▲1.3%」 2010年度「実質GDP:+0.8%、コアCPI:▲0.5%」

米国経済には回復のGreen Shoots(芽吹き)が見られると、 バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長も指摘しているが、 金融システムの修復が流動的な現時点においては、本格的な景気回復 の早期局面ではなく、バブル崩壊後の短期的な循環の一部と思われる。 昨秋のリーマン・ショック以降の急激な世界的成長急落の勢いは、各 国の金融・財政政策によっていったん和らぎつつある。

FRBのターム物資産担保証券ローン制度(TALF)などの政 策も、米国の消費を一時よりは回復させるだろう。しかし、米国の巨 大な経常赤字という不均衡と、それに伴う同国の過剰消費に日本など が依存しながら成長するという構図には完全には戻れないため、構造 的な調整が進むまで、日本経済の本格的回復実現までにはしばらく時 間がかかるだろう。

●JPモルガン証券の菅野雅明調査部長 2008年度「実質GDP:▲3.1%、コアCPI:+1.2%」 2009年度「実質GDP:▲4.2%、コアCPI:▲1.1%」 2010年度「実質GDP:+2.1%、コアCPI:▲0.3%」

追加経済対策が打ち出されたことにより、GDP(前期比)がプ ラスに転化する時期は09年第3四半期に早まった(従来は第4四半 期)。09年度後半の成長率(年率)は3.5-4.0%程度まで高まる だろう。ただし、景気対策効果が一巡する10年度第3四半期以降は 成長力が低下する懸念が大きい。

コアCPI前年比はエネルギー関係の前年要因から大幅に低下す るが、エネルギーと食料品を除いたコアコアCPIも今後は需給ギャ ップが大幅に拡大した状況が続くと予想されるので、ある程度の下振 れは不可避とみる。もっとも、新興諸国主導の回復傾向が明らかにな る本年後半までには、資源価格の上昇傾向が明確化すると考えられる ので、コアCPIの下落は限定的だろう。

ただし、この「川上の価格が上昇、川下の価格は下落」という組 み合わせは、日本にとっての交易条件の悪化を意味するので、マクロ バランス的にはあまり好ましくなく、企業の収益環境の改善を阻害す る要因となる。日銀の09年度実質GDP予測は大幅に下方修正され る見込み。ただし、10年度予測は据え置かれるだろう。

09年度コアCPIは需給ギャップの拡大を反映して小幅下方修 正される可能性もあるが、修正幅はごく小幅にとどまろう。修正幅が ごく小幅にとどまる(あるいはほとんど修正されない)のであれば、 日銀がコアCPIと需給ギャップの関係が薄れていると考えている証 左となり得る(CPIは需給ギャップの水準の関数という考え方と、 需給ギャップの変化方向の関数という2通りの考え方がある)。

●第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト 2008年度「実質GDP:▲3.2%、コアCPI:+1.1%」 2009年度「実質GDP:▲4.5%、コアCPI:▲1.9%」 2010年度「実質GDP:+1.4%、コアCPI:▲0.6%」

日銀は景気改善と不確実なリスクを両論併記して、リスクが高ま っていると評価するだろう。実質GDPは08年度下期のマイナスに よって、09年度は下向きのゲタが広がる。中間評価に比べてGDP、 CPIともに悪化しているとの評価になろう。

●BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト 2008年度「実質GDP:▲2.9%、コアCPI:+1.1%」 2009年度「実質GDP:▲5.3%、コアCPI:▲1.7%」 2010年度「実質GDP:▲0.1%、コアCPI:▲1.4%」

中間評価の発表時に比べ日本経済の稼働水準は大幅に低下しては いるが、わずかながら明るさも見え始めている。展望リポートでは下 振れリスクを強調しつつも、景気持ち直しのタイミングを09年度後 半とする標準シナリオを維持する可能性が高い。09年度後半に経済 が持ち直すか、そのまま悪化が続くかは、デフレスパイラルのリスク が一気に高まる臨界点を超えるかどうかの重要な分かれ目となる。

中間評価では「中長期的な物価安定」が大きく損なわれるデフレ スパイラルに陥るリスクが言及されていた。展望リポートでは、景気 の下振れリスクの高まりによってデフレスパイラルに陥るリスクが高 まっていることが、定性的な表現やリスク・バランス・チャートの分 布などで示されると思われる(もちろん、デフレスパイラルという直 接的な表現は用いられないと思われるが)。

まず、輸出減少の悪影響の内需への波及リスクが高まっている。 生産に下げ止まりの兆しが見られるのは事実だが、今後タイムラグを 経て輸出悪化を起点とした生産減少の悪影響が、企業・家計の実質所 得の減少を通じて設備投資や個人消費に波及する。08年度の企業業 績は大幅に悪化したが、3月短観で示されたように、企業は09年度 に設備投資を一段と抑制するとみられる。

業績悪化のみならず、販売減少で手元流動性が枯渇していること、 信用市場の緊張継続で資金調達が引き続き困難であることも設備投資 の下押し要因となる。さらに、輸出の落ち込みが一時的ではないと企 業が認識した場合、輸出の激減が止まっても、企業の成長期待の低下 とともに大幅な設備のストック調整が生じるリスクがある。設備投資 の大幅な減少は新たな負の乗数メカニズムを引き起こす。

家計部門への悪影響の波及は今のところ限定的だが、労働分配率 は急上昇しており、企業は重くのしかかる人件費負担を削減するため、 雇用調整を本格化させるリスクがある。企業の成長期待の低下は設備 ストック同様、雇用に対しても大きな調整圧力をもたらす。その際、 将来所得の経路が下方シフトしたと家計部門が認識する結果、個人消 費が強く抑制される可能性がある。

日銀が景気の持ち直しを想定する09年度後半は、設備投資や個 人消費に一段の下押し圧力が加わっているのではないか。在庫調整が 進ちょくしているのは紛れもない事実だが、最終需要が持ち直さなけ れば持続的な回復は困難であり、プラス成長も定着しない。短観の示 す通り、既に非製造業では販売価格の上昇を予想する企業の割合はか なり低下し、下落を予想する企業の割合が増えている。

需給ギャップが悪化を続ければ、デフレ圧力は一段と高まる。 仮に日銀の標準シナリオが崩れ、09年度後半に景気が持ち直さなけ れば、何が起こるか。最大のポイントは、08年度、09年度と2年連 続の最終損益赤字となる企業が増えることだ。それは貸出市場を含め、 資本市場から「退出」を迫られる企業が増えることを意味する。企業 には強烈なリストラのプレッシャーが加わる。

企業経営者は可能な限り賃下げ(=ワークシェアリング)で対応 しようとするだろうが、やむを得ず正社員の雇用に手を付けるケース も出てくるだろう。雇用と賃金の継続的な悪化から人々の間でデフレ 予想が広がる。手元流動性確保のため、財・サービスの投げ売りを行 う企業も増えるとみられ、それもデフレ予想を強める。

企業の業績悪化によって銀行部門の信用コストも大幅に悪化し、 金融機関の自己資本毀損がもたらす実体経済と金融の負の相乗作用も 強まる。09年度後半に景気が持ち直さなければ、デフレスパイラル のリスクは相当に高まる。残念ながら、筆者はプラス成長が定着する のは10年後半以降と予想しており、日銀の標準シナリオは早晩、修 正を迫られると考えている。

●モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕チーフエコノミスト 2008年度「実質GDP:▲3.2%、コアCPI:+1.2%」 2009年度「実質GDP:▲3.3%、コアCPI:▲1.3%」 2010年度「実質GDP:▲0.5%、コアCPI:+0.1%」

世界経済の大局的な方向性は依然下向きだが、下げの勢いは弱ま り、部分的にプラスに転じた可能性さえある。例えば、海外では米国 のISM指数や中国のPMIが3カ月連続の反転上昇を示すほか、日 本の景気ウオッチャー調査も昨年12月を底に反発している。同調査 の現状判断DIは景気の転換点に3カ月先行する性質があるため、足 元、3、4月はそうした転換点に差し掛かった可能性が示唆される。

実際、主要国中、最も激しい減産に見舞われた日本の鉱工業生 産は3月以降、6カ月ぶりに増産に転じる見通しで、世界的にも製造 業のパフォーマンスは下げ止まりつつある。昨年10-12月からの生 産調整のペースは過去に類を見ない急激なものだったが、企業が需要 後退に鋭敏に反応した結果でもある。このため、在庫出荷比率の急上 昇にもかかわらず在庫指数の水準は緩やかに低下している。

10日公表の日本の財政刺激策(事業規模56.8兆円、財政措置 は公表ベース真水で15.4兆円)は予想を上回る規模となり、さすが に経済効果を無視できなくなった。弊社は15.4兆円の財政措置のう ち、実際にGDP押し上げに寄与する「真の真水」を7.3兆円(GD P比1.5%)と推定した。

対策効果は公共事業の前倒し執行により、この7-9月から顕在 化し始める見通しで、「真の真水」の約8割が実際に09年度中に支出 されてGDPを押し上げ、残りの約2割は10年度のGDPに寄与す ると想定した。この場合、09年度の成長率は1.0ポイント上昇する。 物価は昨年の原油価格上昇の反動から、年央にかけ▲2%前後と過去 最低を大きく更新しよう。

こうした経済ファンダメンタルズの改善でも、日銀の経済見通し は中間評価時から下方修正が避けられない見通しだ。09年度GDP は経済対策効果を織り込んでも▲3%前後(前回▲2.0%)。10年度 (同+1.5%)も潜在成長率を小幅下回る1%前後に修正されよう。 09、10年度の物価(同▲1.1%、▲0.4%)は概ね据え置かれよう。 基調判断は先行き見通しの不確実性を一段と強調するものとなろう。

●日興シティグループ証券の佐野一彦チーフストラテジスト 2008年度「実質GDP:▲3.1%、コアCPI:+1.2%」 2009年度「実質GDP:▲4.7%、コアCPI:▲1.3%」 2010年度「実質GDP:+0.2%、コアCPI:▲0.5%」

日本経済は4-6月から生産が前期比プラス、また、経済対策を 受けて、実質GDPも7-9月から前期比プラスに転じるとみている。 7-9月、10-12月の実質GDPは前期比年率換算で1.0%台後半 から2.0%程度のプラスとなる公算は大きい。しかし、追加の対策 なしには内需の回復は持続せず、頼みの外需の立ち上がりも遅いとみ られ、10年度は0.2%成長にとどまると予想している。

米国は今年が3.0%近いマイナス成長になるものの、来年は経 済対策などを受けて1.0%台後半のプラスまで回復すると予想して いる。ユーロ圏は今年が4.0%台のマイナス成長の上、来年はおお むねゼロ成長とみている。

日銀の展望リポートは4月7日の金融政策決定会合後の公表文の 「見通し期間の後半には、物価安定の下での持続的成長経路へ復して いく展望が開けるとみられるものの、このような見通しをめぐる不確 実性は高い」という見方が下敷きとなろう。

その上で「日本経済はやや長い目で見れば、物価安定の下での持 続的な成長経路に復していく姿が想定されるものの、こうした見通し に対する不確実性は高まっており、実体経済の下振れリスクも大きく なっている」という昨年10月の前回展望リポートの表現をおおむね 踏襲すると考えている。われわれの見通しより、09、10年度の実質 GDP、10年度のコアCPIの予想は高くなると考えている。

●三菱UFJ証券景気循環研究所の嶋中雄二所長 2008年度「実質GDP:▲3.0%、コアCPI:+1.2%」 2009年度「実質GDP:▲2.5%、コアCPI:▲1.0%」 2010年度「実質GDP:+2.3%、コアCPI:+0.3%」

景気の局面判断の方法には大別して①変化の方向論②水準論-の 2つがあるが、水準論からみれば09年1-3月の景気の水準は最悪 であり、GDPのデフレギャップは40.3兆円(当社景気循環研究所 推計)に達し、短観の大企業・製造業の業況判断DIマイナス58と、 これ以上はないくらいに悪化している。

既に設備判断DIや雇用人員判断DIは大きく「過剰」超過に転 じていることから、今後、設備投資は引き続き減退し、雇用はだぶつ きが生じ、物価も企業物価、CPI、それに不動産価格がいずれも前 年比下落幅を拡大させていく情勢となれば、日銀への金融緩和圧力が 今後も強まっていく可能性が高いことは言うまでもあるまい。

白川総裁は14日の国会で「景気の現状は、海外に一部明るい材 料が出ているが、私はまだそこは慎重に見ている。輸出、生産の大き な落ち込みはこの後徐々に下げ止まってくる局面を迎える一方で、内 需、すなわち設備投資と個人消費は弱まってくる。つまり経済の弱さ をリードする主因が変わってくる」との慎重論を述べ、「1月に出し た見通しとの比較では下振れていると判断している」と発言した。

輸出と生産が下げ止まってくると判断したところは、実は白川 総裁の判断としては最近非常に大きく変わったところだが、今後は内 需が落ちてくるので、GDPの水準は結局、低下基調が止まらないと の見方を主張しているのだろう。展望リポートの大勢の見通しとして は、09年度実質GDPをマイナス4%程度で出してくるのではない か。

しかし、景気の基準日付的な見方、つまり冒頭で紹介した「変化 の方向論」で見ると、実は景気動向指数・一致系列の11個の個別指 標のうち7個に直接的な影響を及ぼす、生産の大底こそが景気の谷と なるので、既に09年1-3月で景気は底入れし、4-6月から(月 次では3月から)景気回復が始まりつつある、というのが妥当なとこ ろなのではないか。

これは、生産の中で最大のウエートを占める輸送機械工業(自動 車)が、3月から5月にかけての前年比での減産緩和、すなわち季節 調整済み前月比での増産の計画を実施に移そうとしていることや、電 子部品・デバイス工業も前月比での増産体制に入り始めていることな どから、非常に明瞭に分かることだ。

需要面を見ても、既に米国の総額7872億ドルに達する巨額の景 気対策が減税を軸に4月には出始めており、今後は公共投資の前倒し 執行がなされてくる。そもそも米国の内需の状況が1-3月までとは 大違いだ。中国などは、内陸部をターゲットに置いた巨額の公共投資 の実施により、粗鋼生産が08年10月を底に大きく増加中だ。

国家統計局の製造業景況感指数などは、輸出の大幅な落ち込みが 続いているにもかかわらず、12月以降3月まで4カ月連続の上昇を 記録している。最も弱めの欧州経済でさえ、ZEW指数やIFO指数 といった景況感指数の期待系列のこのところの上昇は無視できない。 生産やGDPの前期比が4-6月期からプラス化しないとは言い切れ ない状況だ。

アジアでも韓国・台湾などでの半導体・液晶関係の生産の順調な 戻り方からみて、4-6月以降の景気の持続的回復の道筋は見え始め ているように思われる。日本でも08年度の第2次補正予算の実施 (高速道路料金の引き下げや定額給付金が軸)に加え、09年度本予 算(住宅ローン減税やエコカー減税が軸)も実施段階に入っている。

さらに過去最大の真水15.4兆円の09年度補正予算(公共投資 の拡大に加え、中古自動車からエコカーへの、また省エネ家電への買 い替え減税や贈与税減税、中小企業向け減税等が軸)も追加されるこ とになった。こうした矢継ぎ早の景気対策により、街角の景況感を示 す景気ウオッチャー調査の判断DIが3月には3カ月連続で、しかも かなり急角度の上昇を記録している。

景気は「水準論」で見ればなお極めて悪いものの、「変化の方向 論」で見れば明らかにベクトルが上向きに変わりつつある。私は09 年度の実質GDP成長率は▲2.5%(追加景気対策の効果で2.0ポ イント押し上げ)とみており、日銀のような「水準論」的で、遅行指 標重視的な見方は、だんだん勢力を失ってくると考えている。

●クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト 2008年度「実質GDP:▲2.9%、コアCPI:+1.2%」 2009年度「実質GDP:▲1.7%、コアCPI:▲1.8%」 2010年度「実質GDP:+1.1%、コアCPI:▲0.7%」

景気は足元から9、10月ごろにかけて一時的に浮上する見込み。 在庫調整の進展、外需の底打ち、定額給付金・追加景気対策に伴う家 電の売上増、高速道路料金引き下げによる国内観光支出増加、住宅需 要の回復などに伴う生産活動の回復が主因。生産活動は前月比ベース ではかなり急激に回復する可能性がある。4-6月、7-9月の実質 GDP成長率は平均で前期比年率プラス5%に達する公算だ。

このため、09年度の実質成長率はマイナス2%を切ることにな ろう。ただし10-12月以降は再び景気は息切れ状態に入る見込みだ。

日銀政策委員の見通しについては、08年度の実質成長率見込み が大幅に下方修正されることは不可避だが、09年度については大幅 下方修正の可能性は低いだろう。1月時点の中間評価からみて、2、 3月は下振れリスクを強調せざるを得ない状況にあったが、足元、4 月はその必要性が後退したことを示唆している。

●大和総研の田谷禎三特別理事 2008年度「実質GDP:▲3.0%、コアCPI:+1.2%」 2009年度「実質GDP:▲5.0%、コアCPI:▲1.5%」 2010年度「実質GDP:+0.5%、コアCPI:▲0.5%」

内外とも景気の急落場面からは脱却しつつあるようだが、持続可 能な拡大局面に入るまでには1年以上かかるのではないか。日本経済 にとって最も大事な米国経済は、家計貯蓄率の上昇もあって消費が低 迷し、年央以降の回復も緩慢なものにとどまるだろう。中国の成長率 は比較的高いものになりそうだが、それによって日本からの輸出が顕 著に増えるわけでもないだろう。

物価については、コアCPIが夏場にマイナス2%を超えるまで 悪化するだろう。

日銀政策委員の見通しは、経済成長率は今年度▲3.5%、来年度 +1.0%と1月の中間評価よりは厳しくなるが、民間見通しに比べる と、やや楽観的なものになるのではないか。経済成長率については、 年度初めの時点で政府見通しと大きな差はつけにくいだろう。コアC PIは今年度▲1.2%、来年度▲0.3%と、中間評価に比べても、民 間見通しに比べても、あまり大きな差はないだろう。

●信州大学の真壁昭夫経済学部教授 2008年度「実質GDP:▲3.0%、コアCPI:+0.9%」 2009年度「実質GDP:▲4.0%、コアCPI:▲1.3%」 2010年度「実質GDP:+0.7%、コアCPI:▲0.4%」

米政府関係者からは底打ちを示唆する発言が出ているものの、問 題の元凶である住宅市場の回復の兆しはいまだに不透明だ。それは消 費者の購買意欲を圧迫し、企業収益の悪化に伴う商業用不動産市場の 悪化と重なって経済活動に重しとなって作用する。米国経済の先行き の不透明さは外需依存度の高い日本経済にも大きな影響を与える。

企業の購買・生産意欲、家計の消費意欲ともに弱い。日本の金融 機関は相対的には安定した経営体力を保持していると考えられる一方、 金融市場では企業収益に対する悲観的な見方が今後も重しとなるだろ う。特に信用市場の低迷は企業の経営体力をそぐことになろう。

日銀の経済見通しも悲観的なものとならざるを得ない。短観の厳 しい内容や製造業の操業レベルの低迷を前提とすると、今後の金融政 策運営には一層の経済環境の悪化を念頭に置かざるを得ない。展望リ ポートでは、経済成長および物価ともにさらにマイナスとなるリスク が記されるだろう。

特に外需不足と保護主義の台頭懸念による輸出産業の低迷や企業 の収益性の低下を受けて、09年の実質GDPの中央値は▲2.5%程 度、コアCPI予測の中央値は▲1%近辺になる可能性がある。また、 1月の中間評価と比べて、GDP、物価ともに慎重かつ悲観的な見方 が示され、10年以降の緩やかな回復あるいは上昇に関しては、より 厳しい見方を余儀なくされるだろう。

日銀としては、デフレ環境下のマイナス成長を念頭に、長期的に はGDP成長率がゼロ近辺をたどる極めてゆっくりとした回復過程を 描きつつ、今後の対応を迫られることになるだろう。

●野村証券の松沢中チーフストラテジスト 2008年度「実質GDP:▲3.2%、コアCPI:+1.2%」 2009年度「実質GDP:▲2.8%、コアCPI:▲1.5%」 2010年度「実質GDP:+0.9%、コアCPI:▲1.0%」

向こう2四半期、日本経済は潜在成長率を上回る可能性が高い。 4-6月は過去2四半期の大幅下落の反動、7-9月は財政刺激効果 が主たる理由だ。しかし、10-12月には早くも設備投資の減少が足 を引っ張り、潜在成長率以下へと戻り、1-3月には財政刺激効果も 逓減するため、景気の停滞感が再びあらわになろう。

日銀は景気見通しに、まだ成立していない第1次補正予算の経済 対策効果は織り込まないとみられる。実質GDP見通しは09年度▲ 4%付近、10年度に+1%台前半、コアCPI見通しは09年度▲ 1%台半ば~後半、10年度▲1.0%前後に下方修正しよう。

ただし、成長率の下方修正のほとんどは、既に09年1-3月ま でに実現してしまった低下分を反映するに過ぎず、09年度中の成長 率は横ばい~若干プラスのイメージではないか。また経済対策の景気 見通しへの影響についても何らかの言及があろう。

その上で、定性的な景気判断の部分は経済の下げ止まりの兆候が 国内外の統計に見えることや、金融市場の逼迫(ひっぱく)感が薄れ、 金融面からの収縮圧力が和らいだことなどを強調し、比較的明るめに すると思われる。景気回復のタイミングは09年度後半から、との見 方はそのままだろう。

●バークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジスト 2008年度「実質GDP:▲3.5%、コアCPI:+1.2%」 2009年度「実質GDP:▲5.5%、コアCPI:▲1.8%」 2010年度「実質GDP:+1.3%、コアCPI:▲0.6%」

日銀が「崖から転落した」と評したリーマン・ショック発生以降 の内外景気の急下降は、2、3月の時点でおおむね止まりつつある。 財政マネーが中国⇒米国⇒日本の順で動き出すことを考えると、底打 ち後に景気はいったん上向きのトレンドを出すものと予想される。

しかし、リーマン・ショック後の急下降で発生した世界的な過剰 供給能力は膨大だ。人為的に需要を維持しなければ、生産の回復を維 持することは難しく、今年度後半には「回復持続性」が問われる展開 となる。日銀政策委員のGDP、CPI予測は、09年度で▲4%台、 ▲1%台半ばといったところだろうが、09年度の数値に関しては、 いずれにせよ長い目で見れば異常値といってもよい水準だ。

財政出動効果の持続性をどう見ているのかという意味で、10年 度の数値に注目したい。潜在成長率を1%台前半まで落としてきてい るとの前提で、1%前後に置くのか、1%台前半に置くのかでイメー ジがかなり違ってくる。

●ゴールドマン・サックス証券の山川哲史チーフエコノミスト 2008年度「実質GDP:▲2.7%、コアCPI:+1.2%」 2009年度「実質GDP:▲4.6%、コアCPI:▲2.4%」 2010年度「実質GDP:+0.5%、コアCPI:▲0.8%」

1月段階と比較すると、株価上昇、為替円高修正(これに伴う金 融環境緩和)等、特に市場動向では明るい材料も見られるが、景気自 体の下振れリスクは弱まっていない。特に米国における財政出動の効 果が薄まる年後半には、景気が再び「二番底」を目指す可能性も払し ょくできない。未曽有の景気悪化を背景に需給ギャップは急拡大して おり、物価下落圧力は一段と強まる見通しだ。

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