【コラム】中国の新通貨構想は「エスペラント」の運命-Cボーレン

ドルに代わる新たな世界の準備 通貨の創設を求める中国の呼び掛けは、現在のグローバル化した経済 では、国際語「エスペラント」程度の魅力しかない。

着想は良いが、誰も実際に買える状況にはない。

中国の提案は、不安定な為替相場への対応が目的ではない。20 カ国・地域(G20)首脳会合(金融サミット)を数日後に控えたタ イミングで主張を公表するのが狙いだ。中国はロシアや他の諸国とと もに、これまで先進国の会員制クラブだった主要国会合の席に自分た ちも加わる必要を、米国に理解させたい考えだ。

中国の台頭は金融危機以前から既成事実となっていたが、今や政 治的影響力が経済力に追いつきつつある。しかし、通貨に関してはド ルがなお圧倒的な影響力を持っており、今後も当分この状態が続く公 算が大きい。

実際のところ、金や綿花、石油などの商品がドル以外の通貨建て で近く取引されるようになると誰が真剣に予想するだろうか。ロシア やイラン、ベネズエラが原油をユーロ建てにすることを検討したこと もあったが、この案は立ち消えになった。ドル安で損失を被るのは、 結局は外貨準備でドルを保有する国だからだ。

米国債の最大の保有国である中国が真っ先に打撃を受けるだろう。 外貨準備の3分の1余りに相当する約7400億ドル相当を保有してい るのだから。

「強制できない」

112年前に考案されたが使用人口がなかなか増えないエスペラン ト語を人に強制できないのと同様、外貨準備にどの通貨を採用するか を指図できないのが現実だ。

ユーロは利用人口を増やすのに成功した単一通貨だが、過去には 激しい議論が行われた経緯がある。倹約家のドイツ人はギリシャ人が 浪費した分を自分たちが負担することを心配し、イタリアのような国 は通貨切り下げによる窮地脱出を切望した。

現在16カ国が導入するユーロは今やすっかり普及したが、これ までのところ他の地域が模倣した例はない。カザフスタンは 「acmetal」を推進し、中国は人民元を東南アジア全域に広めようと しているが、いずれもすぐに実現に向かう状況にはない。

中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁が中銀ウェブサイトに掲 載した論文で打ち出した構想は、安定的な通貨価値を備え、個別の国 に属さない国際準備通貨への移行を呼び掛けるもので、はるかに野心 的だ。

ただ、16カ国が加盟するユーロ圏の運営ですら難しいとすれば、 世界通貨は悪夢のような困難さを伴うだろう。

これまでのところ、ドルに代わる準備通貨について名案は出てい ない。中国とロシアは、通貨バスケットによって価値が決定される国 際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の利用拡大を提案 している。ロシアは、通貨価値安定のためバスケットに金を加えるア イデアを出している。

ドル防衛

IMFに複雑な国際金融政策を任せられるかという問題もある。 IMFはSDRの価値の決定にどのように取り組むのか、価値の変更 を求める政治的圧力に抵抗できるのかという問題も指摘されている。

米国としては、できる限りドルの支配的地位の維持を目指すのは 明らかだ。外貨建てで返済する必要がないので、借り入れコストを抑 制できることを意味するためだ。ドルが弱くなれば、景気てこ入れの ために必要な米国債の売却が難しくなる。

ガイトナー米財務長官は先週、「強いドルは米国の国益だ」と語 った。日本とフランスは、4月2日に開催される金融サミットで通貨 改革をめぐる議論は想定していないと表明した。

人民元から注意をそらす

しかし、いずれにせよ中国は注目を集めることに成功した。恐ら くこれが中国の狙いだろう。中国は、米国との対立点になっている過 小評価された人民元から注意をそらせたかったのだ。一方、ロシアは 米国の影響力に強く反発している。

膨大な米国資産を保有する中国の提案は世界の注目を集めた。メ ッセージは単純だ。基軸通貨を供給する国は常に世界を念頭に置く必 要があるということだ。世界の準備通貨を手放さないでいることには 特別な責任が伴う。

米国でドルと金の交換が停止された1971年、当時のコナリー財 務長官は欧州諸国の財務当局者に対し、「ドルはわれわれの通貨だが、 あなた方の問題でもある」と述べた。中国が何と言おうと、このこと は当分の間、真実であり続けるだろう。 (セレスタイン・ボーレン)

(ボーレン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストで す。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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