日本総研・高橋氏:生産回復もピーク比2、3割減-失業率は8%も

日本総合研究所の高橋進副理事長 (元内閣府政策統括官)はブルームバーグ・ニュースのインタビュー で、日本の景気回復の鍵となる企業の生産は、急速な在庫調整の進展 で今年半ば以降回復するものの、ピーク時から2-3割減の水準まで しか戻らないとの見通しを示した。インタビューは27日に行った。

高橋氏は「昨年秋以降輸出が急減し、秋から半年ぐらい在庫調整 をすることで、生産は年央以降回復を見込んでいるが、08年のピーク 対比で2、3割落ち込んだ水準までしか戻らない」と述べた。先行き は、「世界需要がそう簡単には戻らないので、低い水準が定着してしま う危険性がある」と述べ、「悪いシナリオを描けば、米欧景気がダブル ディッブ(2番底)型になれば、さらにそこから落ち込んでしまう」 と警戒感を示した。

昨年10月以来、政府は3度の経済対策を打ち出したが、衆参のね じれ国会と麻生太郎内閣の支持率低迷により、対策の実施が遅れ気味 の印象は否めない。昨年10-12月期の国内総生産(GDP)は前期比 年率12.1%減と戦後2番目の減少率だった。09年度の政府予算は27 日に成立したものの、与党や経済界からは20兆-30兆円規模の財政 支出を求める声が上がっており、与謝野馨財務相は「ヤマ勘としては 良い数字」と指摘している。

高橋氏は日本の輸出水準が元には戻らないとすると、「製造業は過 剰設備、過剰雇用を抱えることになる」と指摘。仮に企業が過剰設備 と雇用を一段と調整すれば、「失業率の上昇を介して消費の減少につな がる」とし、その悪影響が「非製造業にも及んでくる」と語った。

その上で、こうした負の連鎖が起これば「GDPが1割ぐらい減 少してもおかしくはない」と予想。それを機械的に試算すると雇用は 250万人程度が失われ、完全失業率は7-8%ぐらいまで上昇する可 能性があると語った。

雇用対策が最大の課題

政府が4月中にまとめる追加経済対策については、「最大のポイン トは、生産が落ちたことによる雇用の落ち込みを許すかどうか。これ を容認すれば、雇用が落ちて内需が落ち、デフレスパイラルになる。 雇用対策を強化することがまず最大の課題だ」と強調した。このため、 雇用助成金など雇用対策への追加支出額を「2、3兆円注ぎ込んでも 良いと思う」と述べた。

さらに、仮に3年間で30兆円の財政支出を行うことになった場合 でも、「それを全部公共事業でやるとしたら、今の日本ではそれだけの 公共事業を膨らませるだけの体力は、建設業にもないし、それだけの 対象はない」と懐疑的な見方を示した。

お金の使い道ではコンセンサス

その上で「残された道は、従来とは違うお金の使い方しかない。 何に使うべきかについては、コンセンサスがある」と述べ、①農業、 観光、食品加工など地域産業を軸とした地域振興②環境・エネルギー 分野③医療・介護・看護④教育・保育・人材育成-などを挙げた。

この問題では、麻生首相が今月主催した「経済危機克服のための 有識者会合」に出席したモルガン・スタンレー証券のロバート・フェ ルドマン経済調査部長も、「現状では多くの財政を使う必要があるが、 生産性の改善につながるものに使うべきだ」と指摘。「生産性が非常に 低い地方の道路や橋に使われるなら、それはあまり役に立たないだろ う」とし、農業の改革や医療のIT(情報技術)化などを提唱した。

高橋氏は、特に環境関連分野で、ハイブリッド車の普及や住宅へ の太陽光パネル設置などは「政府がインセンティブ(奨励策)をつけ ていけば相当投資が伸びる」と主張。その上で需要不足を「できるだ け、民や地方に埋めてもらう発想に立ち、どういうインセンティブを 付ければ良いかという意味でお金を使う。そうだとすれば30兆円の効 果を生み出すために、30兆円のお金はいらない」と主張した。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE