【コラム】米国がアジアから学ぶべきは自殺文化じゃない-ペセック

チャールズ・グラスリー米上院 議員におめでとうと言おう。あなたは日本で有名人になった。

アイオワ州の米上院議員が日本で有名になるのは大変だが、米保 険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)幹部に「辞 任か自殺を」迫る内容の同議員の発言は、日本人の心の琴線に触れた。

しかし、グラスリー議員の発言を聞く限り、米国は過去12年の アジアの金融問題からの教訓を学んでいないらしい。

教訓その1。バンカーは自殺するのではなく裸になるのをやめる べきだ。「潮が引いてはじめて、誰が裸で泳いでいたかが分かる」と いうのは資産家ウォーレン・バフェット氏が広めた言葉。不安定な市場 がバンカーたちの隠れみのをはいだ今も、裸で泳いでいるバンカーは 多いようだ。価値のなくなった資産への銀行の「露出」の度合いにつ いては、不安が多い。

最良でも、今の米国は日本の1998年と同じ状態にある。日本政 府はそれまでの8年間を、財政支出が景気を回復させ銀行が不良債権 を償却しなくてすむことを期待しながら無為に過ごした。日本は98 年になってやっと、不良資産の本当の規模を把握するために銀行の財 務査定を開始した。

バンカーの正直さと有能さを信じる態度は、98年以前の日本その ものだ。もっと強く、今すぐ財務情報を開示しろと迫るべきなのだ。 そうしなければ、危機の本当の深さや、どの銀行が何を隠しているか が、ホワイトハウスには分からない。

銀行の不良資産処理に向けた米オバマ政権の計画はウォール街か らは好意的に受け止められたようだが、20年をかけて醸成された高度 に複雑な問題を解決するには時間がかかる。アジア危機の後、日本が 金融システムを安定させるのには約5年がかかった。米銀にすべてを 白状させるのが焦眉の急だ。

解雇を始めよ

教訓その2。人員解雇を始めるべきだ。銀行の国有化を遅らせれ ば、この危機を生み出すのに一役買った銀行幹部を一掃するのが遅れ る。有能な社員を高額ボーナスで引き止めなければならないというA IGの議論はナンセンスだ。タイと韓国の例を見てみよう。

97年のアジア危機から回復するために、タイは銀行を閉鎖・統合 し経営陣を解雇した。韓国でも政府が関与した。外部の人間が業界内 に入ることは、治癒への第一歩だった。

AIGやシティグループ、つまり苦境にある金融機関の経営陣を 信用することは、花形トレーダーがなぜ決して休暇を取らないかを理 解しようとしないのと同じだ。このトレーダーが数日会社を離れて初 めて、投資損失が隠れているかどうかが分かる。ニック・リーソンも ジェローム・ケルビエルも、「仕事中毒」だったわけではなかった。 彼らは危ない取引を隠していたのだ。

インドネシアとAIG

インドネシアを見るとよく分かる。インドネシアの銀行はAIG と同様に、投資の内容が複雑過ぎて自分たちしかポジションを解消で きないと主張した。インドネシアの回復がタイや韓国に比べて遅かっ たのは偶然ではない。経営難企業ではときに、会社をだめにした経営 陣を一掃することが必要だ。政府の支援には経営陣を更迭する裁量が 付随するべきだ。

教訓その3。危機をばねに金融以外の分野にも対応すべきだ。日 本が道路や橋をつくるのに費やした金を、失業増に備えた安全弁の整 備に使っていたら、今日の状況はもっと良かっただろう。アジアの上 に暗雲が現在立ち込め始めているのは、1990年代の後、多面的な改 革を怠ってきたからだ。米国はこの過ちを繰り返す必要はない。近年 のアジアを反面教師にすれば、過ちは回避できる。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラ ムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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