イラン:補助金縮小迫られ窮地に立つ大統領-選挙控え景気が鍵

モハマド・アリ・ハデリさんは、 頼りにしていた補助金が縮小され電力料金が高くなれば70年続いた 家族経営の食品雑貨店を閉じるかもしれないとぼやく。矛先はアハマ ディネジャド大統領政権に向けられる。

子供のときから店で働いている80歳のハデリさんは「原油に何が あったというのだ。お金はどこに行ったのか」と問い続ける。テヘラ ンの店にはクッキー、ハーブ飲料のボトルが棚に並ぶ。

ハデリさんの問いへの答えは補助金だ。そして、6月に再選を目 指すアハマディネジャド大統領にとって政治的な弱みになりかねない。 補助金政策の推進者である大統領は、補助金縮小を断行しようとした がうまく行っていない。補助金がイラン経済に与える損害を非難する 声がある一方で、補助金頼りの人々からも批判されている。

原油価格は過去最高値を記録した昨年7月から約70%下落して いる。米ジョージタウン大学・現代アラブ研究センターのジーン・フ ランソワ・セズネック教授は「経済危機が深刻化してくれば、政府首 脳部は生き残りをめぐり本当に頭を悩ませることになるだろう」と指 摘した。

景気懸念はオバマ米大統領との交渉力を弱めることにもなりかね ない。オバマ大統領は先週、イランの核兵器開発疑惑に触れ、同国が その凍結に同意すれば孤立状況を緩和できるように「建設的な」関係 を推進すると表明した。

元英駐イラン大使のリチャード・ダルトン氏は、「経済がイラン のアキレス腱(けん)になっている」とした上で、経済危機によって 「米国との融和が重要だとする現実派の力が強まろう」と予想した。

制裁で外資の呼び込み困難

イランの核開発プログラムに対して、米国と国連が制裁を実施し ているが、これによってイランの外資呼び込みが困難になっている。 原油収入が国家予算の約3分の2を占めており、今年の財政収支は 460億ドル(約4兆5000億円)の赤字が見込まれている。

イラン国会経済委員会のゴラムレザ・メスバヒ・モガダム委員長 が3日に国営通信に語ったところによると、イランの原油収入からの 手元資金は250億ドルに減少した。一方、米外交評議会によれば、世 界最大の原油輸出国サウジアラビアは昨年末時点で5010億ドル(米外 交評議会)を保有している。

アハマディネジャド大統領は、原油から得た富を貧困層に分配す ることを公約に2005年に就任し、昨年、原油価格が60ドルから147 ドルに上昇する中で補助金支出を拡大した。補助金は07年の国内総生 産(GDP)の27%を占めている。補助金によって、エネルギー料金、 小麦(パン1斤20セント)、ミルク、チーズ、コメ、植物油の価格が 安く抑えられている。

難航する補助金削減案

アハマディネジャド大統領の補助金削減案は国会で審議が難航し ている。議員が物価高騰を懸念しているためだ。1月のイランのイン フレ率は24%だった。

セズネック教授は「イラン国民はにっちもさっちも行かなくなっ ている。アハマディネジャド大統領が湯水のようにカネを使っている。 核開発プログラムは多額の資金を必要とし、国際的な支持も得られて いない。何かを犠牲にしなくてはならない」と述べた。

大統領選挙の対抗候補たちは一斉にアハマディネジャド大統領の 経済政策を選挙戦の争点の中核にしている。ムサビ元首相は、政府が オイルマネーを無駄遣いしていると批判し、「原油価格が下落した場 合のことを考えていたのか」と追及している。カルビ元国会議長は、 もっと開かれた経済と西側諸国との関係改善を訴えている。

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