山口日銀副総裁:金融市場安定化策と企業金融円滑化策が中心に(3)

日本銀行の山口広秀副総裁は25 日午前、小樽市内で講演し、「わが国の経済・金融情勢は引き続き厳し い状況が続く」とした上で、金融政策運営は「当面、金融市場の安定 化策と企業金融の円滑化策を中心に据えながら対応していく」と述べ、 予断を持たず必要な施策を果断に実施していくとの考えを示した。

山口副総裁はまた、財政政策について「一般論」とした上で、「短 期的な需要創出という役割に加え、将来の生産性向上をもたらす社会 資本整備などを通じて、潜在成長率の向上に貢献するような支出を考 えていくことが大切だ」と言明。さらに「中長期的な財政の持続可能 性との整合性も、重要な論点だ」と述べた。

日銀は18日の金融政策決定会合で、金融市場の安定化策の一環と して、長期国債の買入額を月1.4兆円から「1.8兆円」に増額するこ とを決定した。17日の政策委員会では、金融危機で財務内容が悪化し た銀行の資本増強を支援するため、大手銀行など国際業務を展開する 銀行を対象に1兆円の劣後ローン供与を検討することを決定した。

三井住友アセットマネジメントの武藤弘明シニアエコノミストは 日銀の金融政策について「マネタイゼーション(財政赤字ファイナン スの支援)の入り口に差し掛かっている。今後は金融政策というより も、『バンキング政策』や擬似『財政政策』としての色合いをますます 強めていくと予想される」としている。

世界恐慌との相違点

山口副総裁は世界経済について「多くの国で輸出の減少などを起 点として、生産・所得・支出の間で悪影響が拡がる負のスパイラルが 進行している」と指摘。同時に、「実体経済の悪化が今度は金融機関の 経営を圧迫し、貸出態度を一段と慎重化させるという金融と実体経済 の負の相乗作用といわれる現象も世界的に広がっている」と述べた。

1930年代の世界恐慌と現在の違いについては、①金融機関の破た んに有効な策を打てなかった当時と異なり、多くの国で預金者保護の 制度的枠組みが整備されている②金融機関への公的資本注入も迅速に 行われている③各国が財政・金融政策面で積極的に取り組んでいる④ 自由貿易体制が基本的に維持されている-ことを挙げた。

山口副総裁は一方で、⑤金融と実体経済の負の相乗作用が進行す る中、金融システム安定化に向けた現在の取り組みだけで十分か⑥有 効需要不足を具体的にどのような形で補っていくのか⑦大幅に悪化し ている実体経済活動との比較でみて金融環境は十分緩和的か⑧自国産 業の過剰な支援など保護主義的な動きが再燃することはないか-とい った点は「引き続き十分に注意していく必要がある」と語った。

設備投資は当面、大幅な減少続ける

国内の経済・物価情勢については「当面の間、生産は減少を続け ると予想している。設備投資についても、設備過剰感が強まる中、能 力増強投資を中心に、当面、大幅な減少を続ける可能性が高いと思わ れる」と指摘。また、「労働需給は緩和する方向にあり、今後、雇用面 での調整が、製造業から非製造業へ、賃金と雇用者数の両面で広がる 可能性を含め、十分注視していく必要がある」と述べた。

さらに、「所得・雇用環境の悪化がボディブローのように効いてき ており、これが、個人消費のさらなる下押し材料となる可能性がある」 と指摘。「最近の株価の不安定な動きや雇用情勢の悪化などが、消費者 マインドを一段と冷え込ませる可能性にも留意が必要だ」と語った。

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