【米経済コラム】銀行国有化論争もAIG批判にも終止符を-Jベリー

一部の政治家や著名エコノミスト、 アナリストらは、政府が弱った銀行を立ち直らせるのをきっぱりとあき らめて、国有化してしまえばいいと考えている。しかし、国有化した後 はどうなるのだろう。

政府は国有化した巨大国際銀行を経営しなければならなくなる。新 しい経営陣を送り込み、融資戦略を考え、そして何よりも、銀行が倒れ るもとになった不良資産を処分しなければならない。効率的な国有化の モデルとしてかつての整理信託公社(RTC)を挙げる人には、シティ グループはあなたの町のS&L(貯蓄・貸付組合)ではないと言いたい。

しかも、このような作業は大手金融機関にかかわる者への国民の不 信と、金融機関従業員側からの政府への不信のなかで進められることに なる。これは、事態をさらに悪化させるだけだ。

オバマ米政権は国有化の代わりに、連邦準備制度理事会(FRB) の力も動員して銀行が自らバランスシートを修復することを支援するべ きだ。23日に発表された1兆ドル規模の不良資産買い取り計画はこれに 成功する十分な可能性がある。加えて、国有化の議論に終止符を打つと いうおまけの効果もある。

疑わしき課税法案

米議会が保険大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(A IG)のボーナスへの攻撃をやめれば、政策が成功する確率はさらに高 まるだろう。買い取りプログラムへの参加を考えている民間の会社は、 政治家が報酬や企業活動に理由のない制限を課すことを心配している。 民間企業の参加は同プログラムの鍵を握っている。

政治家はAIGのことを忘れた方がいい。金融市場が正常な機能を 回復するまでは、今回のリセッション(景気後退)からの脱却はない。 そして、銀行に信用供与の能力と意欲が戻らなければ、市場の正常化は ない。

第一歩は、AIG問題からわき出た懲罰的で法的根拠も怪しいボー ナス課税法案を、上院が否決することだ。下院は既に課税法案を可決し ているが、もし上院でも可決されるようなことがあれば、オバマ大統領 が断固として署名を拒否しなければならない。

以前にも指摘したが、問題のある資産もその多くは、長期投資家に とっては利益の出る投資先となるだろう。裏付けとなっている住宅ロー ンの大きな部分は今も返済が続いているのだから。

真の目的

米議会はことあるごとに、金融安定化対策(TARP)に基づいて 注入された公的資金は銀行員と銀行の株主を救済するために使われたと 批判してきた。だが、公的資金注入の真の目的は傷んだ金融システムと 経済を救うことなのだ。

銀行を国有化するのではなく、銀行のバランスシートの不良資産を 一掃する取り組みも目的は同じだ。国有化支持者の多くはその方が納税 者の負担が低いと言う。逆ではないだろうか。

国有化された銀行から、どれだけの顧客と取引相手が離れていくか 考えてみよう。顧客が政府の経営によるさまざまな圧力を恐れて距離を 置く者が増えれば、利益の出る事業の大きな部分が失われる恐れがある。

さらに、国有銀行の新しい経営陣は意思決定に際し、常に銀行の利 害と同時に政治家の思惑に気を遣わなければならない。

国有銀行がさらに巨額の資金注入を求めた場合、議会はどう反応す るだろうか。その要請がなされることはほぼ確実だ。ある時点で追加資 金の要請が議会に出されるだろう。現状を見ると、議会の答えは「ノー」 であろう。

迎合するな

議会は幾分かの政治的勇気を示さなければいけない。オバマ大統領 は22日放映されたCBS放送の「60ミニッツ」のインタビューで、「怒 りで政治をすることはできない」と語った。景気がこれほどもろい今、 本当に有権者のことを考えるなら、有権者の怒りに迎合してはならない。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニス トです。このコラムの内容は、同氏自身の見解です)

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